634 人がワサワサいる。

期待して待っている時間は楽しい。

普通ならドンドンふくらませて、実際にガックリってするんだろうけど

僕は現実の厳しさを知っているし関わりたがる人はいないので「しがらみ」って

いう分かんないものにとらわれてはいないの。

だからどうしようもなくなってて、逃げたくなっているモノから

何とかなりそうなのを選んで、ちょっとだけっていうのが現実的かなあと。

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 どうかなあって思いながら待つのって楽しいよね。

 カニやコンブとかの収穫の目処めどは立ったといってもずっと先、来年できる?

 まともな漁をするのは人が来てからってことにして、残った人達には木を切って運ばせて乾燥の道具をポンと付けて、積み上げさせたり、指示通りにヒモを組み合わせさせたりっていうのを延々とする。

 この人達には余計な情報を当分与えない方が混乱しなさそうなので、文字を読めたら終了。もし書くことにも興味があるなら、ちょっとは望みがあるんだけど、それはなさそうだしね。


 例の望みがありそうな子を飛行の道具に誘って、別メニュー。

 文字を教えるのにドリルをどうぞした。

 すごく集中をしてページが進んでいくので、時々休憩だよってお茶をまあ飲めさせて、学習の進みに合わせた短い物語や生き物、他の所はどうなっているとかのお話しをする。

 言葉っていうのはとても大事で「あつい」って言葉しか持っていないと暑いのと熱い、厚いという違いが分からない。言葉は概念も含んでいて言葉を獲得すると、どのくらいって程度まで理解できて、他の人に伝えることもできるようになる。

 僕にもちょっと分からない「あつい」のもね。

 言葉は自分にとっても、他の人にとっても標準器をして、文字にしるすと体験しなかった人達にも伝えられる。


 どんなに知能が高くてもバリエーションの少ない発声では言葉は生み出せないから、先祖は伝えたいって強く願って自由に変化できる発声器官を手に入れた。

 かなり近い種と言われているサルであっても他の動物たちと大差が無いの。

 豊かな感情が多くの発声を獲得して、それに意味を持たせて多くの情報を受け継いでいった。

 ハチは花畑の方向と距離を伝えただけで満足したし、多くのケモノは喜びと怒りを伝えるだけだったし、人よりも賢いと言われているイルカやクジラでさえ、会話に何かを求めてこなかった。

 僕は会話したいのに、一方的に感情を出すだけで受け取ろうとはしてくれない。

 コミュには感情が必要だから微妙なことや細かい事は伝わらない。


 お話しでは言語を持っていて理解しているケモノたちやナゾ生物が登場するんだけど、伝達にはやはり言語を介した概念理解が必要だってこと。

 言語を持つためには、表現する発声器官を種族全部で強く熱望して進化をしていかないとムリなので、百万年単位も掛かる。

 なので僕の希望がかなうことはないの。

 特別な個体があって、言葉を表現できそうな進化の芽が出ても、周りがそれにノってくれないと、進化に至る身体の変化は起きない。

 会話には相手が必要なんだもの。ここに来てそれを痛感した。


 感受性豊かな文化を持っていて、アノ国にいたときから憧れた国の人達なのに、う〜(うまい)、あ〜(あつい)、さ〜(さむい)、ね〜(ねむい)とかだもの。

 たぶん言葉が10個前後。

 「僕達はキミタチにサカナを獲ってもらいたい。生活は保障するよ」って、先祖が出奔しゅっぽんしたあたりの古い言語で言ってみたのにポカン。通じないの。


 食べ物で釣って家を用意して、お〜お〜言っているのを人として扱ってみたけど、それは良くなかった。一応漁的な事はできるし、ハシも扱えるし仕掛けも作れるし手先は器用なんだけどってだけ。

 マトモな言語を持ってくれないと感情すらも欠如しているようにみえた。

 働かせて、言葉を覚えてからかなあと、今のままじゃゴーレムの相手をしているみたいなんだよね。

 たぶんだけど豊かな言葉を持てば、ピントが合って人になって、この冗談みたいなのが将来の笑い話になってくれるかなと。


 このハダカ同然の人達に服を提供するのは、ちょっと待ってしてた。

 チラチラしながらニヤニヤしてるウチの人達を喜ばせるためじゃなくて、学びの合間に布を織るって作業をさせて、出来上がりはコチラしてからチョキチョキ。

 ズバババって縫って、出来上がりをバサリ被せた。

 すごく嬉しそうにみえる。

 みんなの服を作っていたこの子の気持ちを無視することはできない。


 それから他の人達にも提供。割いた草で布をザックリ作って、穴を開けただけでヒモで留める貫頭衣かんとういだけどね。

 持って来た服はちょっと早いかなって。

 ケモミミ達だってアノ国に居たときはコレだし、たぶんこの辺では布を作れてもこのぐらいかなあと、糸で縫うって作業は文化してないとムリ。

 サカナの骨で針は作れそうなんだけど、どうかなあ。

 何か退化がいちじるしいから、来た人達で調整しようね。


 たった3日しかなかったけど進化って思うくらい変わる。

 元々が心豊かな東の人達で流れ流れて、必要なくなったから言葉がインストールされていなかっただけ。空き容量はいっぱいある。

 ボケッとしていた漁師としては望みないって感じだったけど、ハシが扱える(ここ重要!)から放り出すことは考えていなくて言葉が入ったら、このアンバランスな状態が整えられて、本当の姿が見られるかなあと。

 エサと目的のハッキリしている仕事で、全部に意欲的。若干やらされた感がぬぐえないけど、超短期でどうなのか決めたいから速成をする。


 ちょびっとしかなかった言葉が10倍に増えて、一語だった単語が長くなる。

 これって、寒いところで起こる語の短縮ってヤツに、元々の関係性の薄さから文の形成がなくなって単語だけになったんだろうか。

 確かに寒いって同調を求めるだけなら、勝手知った者同士「さ」だけで通じるんだろうけど、伝えたいことはそれだけじゃないはずなんだよ。

 未来に希望を持たなくなって、何かを試したりもしなくなって終わるつもりなのに、なんで子どもを作るんだろう。産んだ責任っていうものが親にはあるんだよ。


 時間になったところにロビンを送る。行くわけじゃないから、上から想定しただけのちょこっと原っぱ。村落からは離れている空き地。時間になったら出発しちゃう。遅れると帰れなくなるよ。

 土地勘の無い場所だし、途中険しい山とか深い森とかあって、部族存続とか掛けないと挑戦はしないだろうなってくらいお互い離れている。

 時間が正確に分かるクローネを持っているし、帰って来なかったら探しに行くつもりだけど、時間厳守っていうのは繰り返し言ってきたことだからね、大丈夫。


 ブ〜ンって音が遠くに聞こえる。でも1つだけね。

 だって一度に応対出来る人達がいないんだもの。人魚さん達はあの人達を見てないといけないし、もしかして2〜4人程度じゃなくて、何人入るチャレンジでパンパンに乗ったのがあっちこっちから来られたら困るでしょ。

 そんなことは無いと思っても、ココみたいにボケッとしていて調略がスゴく上手くいったらってことも考えた。

 色んなトコがかち合うっていうのも何かよくないしね。

 ド〜ンと来るだけならいいの。せいぜい30人しか乗れないし、ごはん食わせて酒飲ませてとけば文句いうはずはないだろう。


 結構余裕なのは、学びを素直に受けてくれて成果がアッサリ出たってこと。

 里の時は手探りでカリキュラムってものではなくて、名前書け〜計算しろ〜だけだった。後は知っている事を何となく教え合うってだけ。

 僕は詰め込む覚え方だったし、聞いてた教え方はひっぱたくだったんだもの。

 ムチをさえ使わなければ優しいくらいの認識だった。もう学校をしてるしドリルもいっぱいテストした。人の気持ちを研究する人達がいて、どうすれば楽しく効率的に学べるかってみんなで考えている。

 そうしてやっと僕も学びは楽しいものだったことに気が付いた。

 方法が分からなくて、ひたすら詰め込んでいたのはタノシイだったから。

 色んな事に挑戦して身に付けて、他にもってしたのも全部楽しかったのかな。

 僕の消えている気持ちが知識を得ることをき立てているのかもね。


 学びは人によって違うけどスタートの時は、ほぼ同じ反応で同じ考えだから一気にど〜んできる。流石さすがにアノ子だけは別個べっこにしたけど。

 もうタダのおバカじゃない。

 不釣り合いに器用で、何も考えてない、う〜あ〜言う不思議な人達だった。

 それがハダカはダメとか服をちゃんと着ようとか、これからするお仕事のことをボンヤリだけど理解できた。

 もう少し進めば工作が出来たり農作業や漁業なんかも取り組めそうな気がする。

 これからやらされていることの意味が分かってきて楽しくなる。だんだん暖かくなっていくからね。

 意識し始めた出来事が全部キラキラして、しっかりベースになる。

 だから最初はイージーモードにするし、一応自活出来るようには秋までしっかり教え込む予定。


 冬はタラをど〜んと獲って欲しいし、春からはカニをね。

 来てイキナリ漁をバンバンできるって思っていたんだけど、それはかなり甘々な期待だった。でも出来そうな気がするし、いっぱい連れてこられれば〜なんて。

 グングン近づいて来るロビンをみて思ったんだよね。


 さあ! いらっしゃ〜いって、みんなが待ち構えていたの。村人も食堂とかお風呂に案内出来る程度にはマトモになった。言葉は怪しいけど、例の子は「てにおは」を使えるようになってる・・って共通語だけど。

 あ〜、それじゃ通じないじゃない。ちゃんと文章になっていないと言葉として伝わらない。元の言葉は1文字語だし。


 焦ったりはちょっとだけ。パカリして出てきたのは、ひいふうみい・・6人で全員子ども。あれ〜。

 コンチハして、ご案内が要るほどでもなく。東雲しののめの人がそのまま連れていった。

 次も次も子どもばかりで、これじゃあ外洋漁はできないよ。

 大人がここにいた人だけだと、まず波が平気になって身体を鍛えるところからかなあ。スリムというよりガリガリ。

 東雲の人達は苦手意識があっただけだったから、準備出来たから外洋もヤレってしただけ。望んでいたしね。


 子どもだけっていうのは想定には当然あった。

 村を拡大しないなら、無計画な家族作りだと食い扶持ぶちに合わせて大人になる人数をどっかで調整しないといけないわけで、それが子どもの時って事なんだろう。

 都合の良い従順な子ども、猟や漁が出来そうな強い子だけを残して、後は追い出す。元々こういう環境だし、ずっとだったろうから生きる力を誰もが持っているというのは甘い。

 弱い子は大きくなる前に病気とか、ちょっとしたことで亡くなる。

 街でも成人出来るのは半数だけだったし、だから多く子どもをってことだろうけど、それにしてはココの大人が弱すぎる。


 村内にたぶんある交流は、捨てられそうな子どもにもあるだろう。

 生き残る必死さがないと厳しい自然では生き残れない。村落から外れて、秘密基地のような逃げ場所を作って、ハズレ者たちで生きてきたじゃないのかな。

 生きる力が弱い子達で協力して。

 明らかに怪しいだろうけど切羽詰まっていただろうし、その警戒を逆手にとってオイデしたはず。

 ここに人買いは来ないし、捨てられ子を収集する仕組みはない。ポイだけ。

 村を丸ごと引き入れた方が見込みありそうにみえるけど、しょぼい世界の自信たっぷりはいらないの。変な価値観もあって修正が難しいっていうのは北に期待した漁業がいまだに人数が集まらない。

 農業の方が先に成果を出しそうって、まだ始めてもいないんだけどね。


 大人達は大きいだけで、ベースになる知識が変わらない。実質1人の子どもに乗っかって村を維持して久しい。

 力仕事を大人にして、他は一緒。

 お風呂を男女別にしたのは大丈夫だったので、「同じだよ」って寝床も着替えも分けた。あと下着。今までは丸出しだったけど、肌は隠す方向で。

 性をケモノ的じゃない方法で自ら意識するようにさせる。

 最短1週って予定だったけど、長い方になって、1月。それも交代なだけでずっとお世話を続けることになった。

 メンバーのうち半数以上は帰ることにして、残った人達が特訓のような作業をさせるようになる。

 これから数日で基礎部分を完成させるように残されの人達が働かせる。


 誰も彼も勝手にダメな者にされて、あるいはおとしいれられて、決まった役割を持てなかった。そうなるといずれ不要になる。準備はしてきたけれど選択の少ない村よりも未来はないだろう。それでも生きるって協力をして厳しい冬を生き残った。

 選別はいつだろうかって、助けられたって気持ちを持てないままなのをえて無視する。


 ちょっとズルをして畑に種まきをみんなでする。小さい子が同じ間隔になるように穴を小さく開けてタネを入れ、土を掛ける。種芋たねいもの芽出しをするため日光浴。

 これから毎月ちょうどいい時期にタネを植えたりって作業がある。準備出来た畑は一反だけで、これから木を切ったところを耕して畑に変えるように肥料を入れたり、土盛りしたりの世話がグルグルとある。

 今までは河のサカナを獲って、あるだけ食べていたけど多い分、河のサカナは造った池に入れて海のは生けに入れておく。

 まだ漁はお世話の人達だけだけど・・

 燻製くんせいにしたり、塩を振ったり塩水に浸したりして、保存もするよ。

 冷蔵や冷凍は当然あるんだけど、それはまだしない。

 

 海の漁はこの人達にはキケンなので、調査ブイを良い感じに配置。

 残った人達が体力を付けるためにワザと人力で土を運んだり木を切って乾燥させたり、堆肥作りをする。

 運動してドリルで学びもして、今までの短い語で種類の少ない言葉を話さなくなって、本を読む。

 僕の考える最低限の方から少しずつ積み上げていって普通の人達にする。

 今までのは急ぎすぎたんだと思う。

 急に良くなっていくと「何もしないでもいい」って思っちゃうみたいだし、何でも与えてくれて、用意してくれると当たり前にする。

 唯一付いてきたシオーネの人達は、今までの楽園で貯めた飢餓きが感があったし、島が成長を求めているっていうオカルト話もチラっと聞いた。


 ここはそもそも、子どもと子どものような大人しかいない。何かしようにも指導する人員はこれ以上はムリだから、見込みのありそうなのだけを世話して、それに多くの世話を任せるって方法にした。街がそうだったし。

 集めた子達にはそれぞれまとめる子をがいたし、僕らが与えているってイメージにはしたくない。段々とできることを獲得してるって思わせたいんだよ。

 料理っていうものも止めて、ウドンやパスタにソースオンと汁物、副菜程度。焼き魚か肉が夕食にはついて、昼にはミルクが出る。

 錠剤を時々、コンチハしてチクンもした。怪しいモノの警戒がウスいのが心配だけど都合はいい。痛みに耐性があってお世話の人が何かジンワリしてた。


 指導役が延長になって、いっぱいゴメンネをしたのにニコニコで「任せとけ!」と言ってくれた。

 残る人をクジで決めて当たっちゃった人達にイヤな気持ちはみられない。

 だってこれ僕がカニ(北のサカナとか昆布とか)食べたいからってだけの村づくりだもの。パッと作って、提携って言ったはずなのに育成しなきゃとか、そのために交代で行くことになってる。

 可能性としてはいくつかのシナリオの1つにはあったんだけど、それは説明はしていなくて、ズルイ。良いことだけしか言ってない。

 なのにイイヨしてくれて、それはもう最初から決めていたように不自然さがなかった。

 いっぱいハテナだけど、嬉しい気持ちになったよ。

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綿密な計画を練っているのに、良い方にはならなくて、予想外が多くて

また行き当たりばったりで、お世話もリーダーできそうな子に任せるっていう

計画どこ行った状態。

毎日ほぼ一緒で質素すぎて、センセも一緒のモノを食べま〜すにはできない。

おいしいって食べるから余計にね。

夏くらいには同じになるかなあ。なりそうな気はしているんだけど・・

ずっと見たいけど、これから用事いっぱいあるの。頑張っていてね。じゃあまた。

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