633 港だけじゃないよ。

しょっぱなでコレだもの。もう優しくはしない。

あやつり人形かと思った子ども達が笑えるんならまだ望みはある。

予想したよりも良い場所だったし、ここは何としても確保したいな。

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 しばらくは救済ムーブをするつもりだったんだよ。

 場所が良いのは上空からでも分かっていたし、その働き手が必要なだけだから、ダメでもいい。ずっと調べていた村落の様子から、思い切って険しい山越えをしたんだろうと雑に経緯を想像した。

 根性はあるだろうし、あきらめの悪い人って好ましい。なんでもすぐ受け入れるのもイイコトだけど、がんばってもダメになって逃げた結果とかもいい。

 僕は逃げて新しい場所にいるんだし、要らないにされてもまだいる。


 逃げるにしても僕じゃないし、お仲間がいる。かなり前みたいだから旅立った人達とは世代が変わっていて、新しい環境を作り上げて楽しくやっているはずなんだけど、ソコソコ規模のしかないの。

 ここは厳しい環境だけど、最高の場所なのにマトモな村設備、小屋とかボートとか、塩田とかが見当たらない。

 でも砂浜だよね。もしもはあっても(経験則から)それは良い方ではなくて、悪い方に近い。

 デカい家がいくつもあるって、ナゾ期待してきたんだけど天幕が大きいだけのゴロ寝だった。文化の香りが全くしない野生な生活。


 ノウハウが受け継がれているとかも期待できないってことは、悲惨ベ〜スで想定すると、20歳を超えられない。

 比較的文化の高い大国でも農民は30半ばってとこだろう。

 これは東の人達の年齢と老化から推定したんだけど、いくつか(歴史から)検証もしたし、覚えている出来事と合わせて当たっていると思う。

 これを聖国に当てはめると、グッと高くて40後半あたり。

 ケモミミ達に至っては身体ケアや節食、野菜多めの生活になっていたから、もっと長寿でずっと健康だからうとまれていた。

 ニンゲンとは身体的には変わらないはずで、暴食にしたり、怪しげなものを食べたりするせいとか、不摂生で不潔な生活だからだろう。

 毒白粉どくおしろいとか、過剰な刺激物、油ギトギト、ばっかり食べ。

 そういうの止めないから、晩年は病気をいくつもキャリーして悲惨。

 でも栄養だけは良いから不調を抱えながら、そこそこ長生きはする。

 あそこには病原菌を排除する結界があったから、パンデミックとは無縁だし、気持ちにユトリがあれば「助けよう」って気分にはなる。

 まあそれに置いておくとくさりそうだから一気に処分って、気前だけは良かった。

 やっぱりもらったものが多いけど、買ったものや作ったクスリとかの面倒な差配は、ケモミミ達が得意。腐敗はしていたけどお買い物隊が情報を集めていたのは確かで、だからイイヨとはならないんだけどね。


 何が求められているかを正しく理解して、十分な供給とお節介せっかいをする。

 被災ノウハウがあって、地域性や住民の分布が分かっていて、役人達がいちおう国の中枢にこれこれこういう支援するよ。周辺の国も助けてねってする。

 実行部隊が到着した時には、王都の方や周辺国に連絡が入っているってわけ。

 たいていは王都のエライ人達とか、周辺国から誰も来ないんだけど「被災地の税を下げるとか免除しろよな」「攻めてくるなよ」って牽制けんせいになる。

 やってくれるのは聖国の人達だし、支援が終われば地域立て直しまでしてくれて場合によっては新しい産業の指南までね。


 一連のは偽善って王都とかではそんな感じのウワサを流される。

 いつまでもはしないし、地元の人達が上を向ければ終了してしまう。

 その事は援助を受けた地域だけ知っているんだけど、それでいい。期待されて依存は困るし、本来はその国がすべきことだから目立たなくていいの。

 王都は国中から集まるから、真実を覚えていてくれる人がいるだけね。

 100年単位ごとにパンデミックが起きるし、もっと頻繁ひんぱんにアチコチで飢饉ききんは起きる。

 その度に不衛生な街造りを指摘するはずだけど、あんまり聞いてはくれない。

 ある病気の感染ルートが分かって、楽しみで繁殖行為をしないって、さも昔からあったような考えが登場したり、ホントいい加減だよね。


 病気の感染ルート問題でなくても、気持ちが存在しないことは止めるというか、今はダメって分からないかなあ。品定しなさだめされている時なのにね。

 この地域に他の村落でしいたげられている人達を拉致らちって、自治が出来るくらいの規模に拡大するつもりで、今の人達は先住特典で管理側になるような教育をするつもり、だけど目がないならナシ。

 りつぶされる今までのような底辺待遇が望みならいいの。

 こういう人達って指図さしずをされて文句を言いながら働くっていうのがいいみたいで、イチイチ意見を拾ったのにやらなくて混乱した、もうコリゴリ。


 ここは漁業だけのつもりだったけど、そうすると子ども達のお仕事がない。入江内の子ども漁では僕の欲しいものが獲れないから、養殖や河でになるかなあ。

 あとはすぐ育たない農業をして、とりあえずの食い扶持ぶちは確保するのは、この人達のためだけではない。

 人員としてはこれでは足りないから他所よそから調達する。その時の食料と言うより仕事作りかな。

 全員が漁できないと思うのはガリガリだし、いかにも漁をしてこなかったのがハッキリしたからで、あと意識や危機感も低いとか猶予ゆうよありそうで、もう見限っていたりしてる。必要な人員確保に意識がいってる。


 僕はちょっと一緒するだけで、ある程度の適性は分かる。

 伸び代は読めるけど、意欲の長続きは気持ちの問題だから分からない。秋までの試用期間にやる気を見せなければお払い箱って適当なトコに返品するだろう。

 本人が思い込んでいるとなかなか見破れなくて、やりたい事とやれることの釣り合いが取れるところを見つけるのは大変だった。

 それぞれのピッタリは見つけられるけど家族というわけではなかったし、干渉は迷惑。スッパリでいいかなって。

 もうすっかり会社だもの。働きたくないのを雇用することはないんだよ。

 そういう人達って、西地区っていうと喜んで行く。何がそんなにいいのかな。


 新しい港はちゃんと村として成り立つようにしたい。

 出来たらそれは既にある村に負荷を掛けるものであってはダメな気もするし、ここみたく終わりがみえていれば取り込むっていう方針にした。

 横の関わりをしないんだから、何してもいいになりそうだもの。指針は必要。

 北の地で厳しいはずだけど直ぐの地域は広範囲に尻尾の人達がいたから、もっと奥に進んで行ったんだろう。ニンゲンの行動力はすごいと思うし、ネチっこくて、あきらめが早いし、決めるとそこに固執する。単位が大きければ労働力だけではなく知識も多くあるから文化も起きるよね。

 個々の知識は本がない場合は口伝で、うろ覚えになっている。記録して寄ってたかってすればより良い答えに辿たどり着くはずだけどね。


 この辺の人達は可能性で出発したんじゃなくて、イヤになって飛び出したんだろう。行き当たりばったりが何回かうまく行ったのは人が多かったからで、安易に考えて乗っかっているだけの人達ばかりになっていく。

 最初の頃は人選をして、準備を調えてからだったのに、逃げ癖が付いてイヤになると準備をろくにしないで出て行ったのかなあ。北に行くにつれて村がショボいんだもの。


 突発的である日突然、なんの準備もないんだけど、人が多ければ何でも出来る。そう思い込んだ。

 新しい場所に来たものの、アレコレ指示されてイヤになって出ていこうにしたけど、指図さしずしかされていない人達に生活を整えることはできない。

 住と服を気にしないにしたら、サカナがいくらでもいて困らない。

 だからイイだったんじゃないのかな。

 まあこれは想像なんだけど人は理由を求めて物語を好む。それぞれにあるのはくだらない話であっても、感動する脚色はできる。

 今がケモノ以下だということは見ないようにしておいて、いずれここにも始まりの物語を用意するね。


 僕も報告でいくつか見たことがあったから、こういうのは驚かない。

 人であるためにはまず衣食住というけど、食の他は案外なくても平気らしい。

 北の人には薄手で平気な人がいるのは知ってて、百年くらい前からオオカミに育てられたって子が何人も見つかっていて、ほぼ全裸で春に雪の残る地域でも保護されている。

 原因は山に捨てた子どもってヤツで、ごくたまに食料にならずにオオカミに育てられる。その時からじゃなくて、たぶんずっと昔から繰り返されてきた。

 僕が外に関心を持つようになって、色んな情報に興味を持って何でも集めたからってところだろう。人は寒さに順応するってことだ。


 だからって、言葉をもっているんだからケモノ扱いはしない。

 ボキャブラリーがやたら少なくて、西のオバカサン達みたいに何でもスゴイ、超なんとか、切れる、ヤバイとか極端な言葉遣いを思い出す。

 方言が混在しているけど、正しい言葉使えるのかなあ。退化の徴候ちょうこうって心配しちゃう。

 少しずつ矯正きょうせいして、分かっていないうちに当たり前にすればいい。

 環境の順応力はあるってことだもの。

 それほど複雑でなければアッサリしちゃって、その先もって皮算用してる。


 夕食には大きく差をつけた。

 海で吐きまくったから身体に優しいものって名目で偽善者がするような薄いおかゆ、漬け物付きで残ってけど働かなかった大人は漬け物もなし。

 浜に残った人達は誰も漁をしていないし、外海も今日はどのくらいいるかの調査だったから実は何も収穫はない。

 僕は調査名目で河に行ってヒュンヒュンしたり、網投げたりして捕まえた分で料理する。

 河にはやな(仕掛け)があって服と同じ作り方だから、例の子がしたんだろう。

 特定の個人に食事まで依存いぞんしている気がする。

 子どもの方に可能性を感じるものの、大人の前の形態が子どもなだけだし、一定の収穫を子どもがしてしまうと他は腐るのかなって、そんなことないか。

 そういえば子どもに収入があるようになって、家族の楽しみを増やすでもなく親が勝手に使っていて、子どもに見限られたってことがあった。

 そんな人がまたガンバルってこともなくて、今はいないけど楽しくやっているはず。強制されるのが好きみたいだしね。


 そもそも日々の生活に楽しさを見出せていない。食事に何かを求めてはいないようで何を食べさせても同じ反応をする。

 この生活だからなのか。今までの人達には熱い何かがあったのにって。

 逃げ続けてカスカスになっているとは思いたくないんだけど、それならどう扱ってもイイんだよね。

 分かってくると構築方法を変えなきゃになって、二転三転とシナリオを変更してて大変なんだけど、ここはとても大事。

 デッカイ河があってデッカイ湾もある。先がすぼまっているし、切り立っているから強い風になってもここは防がれる。

 不思議なところだけど、上から見たから分かる。

 元はデッカイ山だったみたいで、大噴火して吹き飛んだ跡にみえなくもない。

 ちょうど海際うみぎわだったから入江になって、河が長い年月を掛けてココに農業に最高の平地をつくったってことかなあ。自然ってスゴイよね。

 この高い山ばっかの、ちょっと先に例の広大な平原があるんだけど、その先には行っていなくて、もしかしたらとか思ってるよ。


 もうノビノビ普通の子ども、マトモな大人にしましょうなんてしない。

 だから食べ物も贅沢ぜいたくはさせない。健康であればそれだけでいい。それで開拓や漁をとどこおりなくさせて、大規模生産をするってとこ。

 シルタの漁港はショボいままだし、すぐ選挙がある。

 混乱はしないはずだけど、大丈夫だよね。

 人数が少ないし、このまま事業化は不可能。第一、ユッタリのどんぶらこ程度で酔う程度じゃ主要戦力には程遠ほどとおいよ。

 酔いやすい食べ物だったということを考慮しても外海じゃ穏やかな方だし。


 で、ゴハンの後に3日分+α の食料とお泊まりセットを持って、東雲しののめ組は四散しさんしてもらった。アタリはちゃんと付けてあるし、近くまでロビンで送った。

 外洋に出るようになっても、ずっと自信なさげだったのは知ってる。

 それ以前は湾でも波にビビっていたって聞いたし、それで安全な湖とか内海の場所を用意したけど、外海に出るようになってからの方がイキイキしていたよね。

 後から来た人魚さんに外洋に連れ出されたことは良かったけど、そういうのは理屈じゃないんだよね。要はキッカケとか盛り上げ方かなあと。

 いかにもな漁港にいたニンゲン達はゆったりな波で酔って、大丈夫かってしただけなんだけど帰って来た人達にはモヤっていた気持ちがなくなっていた。

 それでいけるかなって。


 百島ももしまが終わって、東雲しののめの人達が街に向かうときに、三ツ辺の方を経由するようになった。

 秋の終わりには列車も経由になって、元々尊重し合っていた(関わりを持たないようにしていた)所が協力をするようになった。繁忙期には人員の貸し出しもあったらしいし、例のイベントで強く結びついたになったよ。

 実はって聞いたのは春になってからで、忍者修行をしていたらしい。


 本家な人達は隠れて偽装して溶け込むことをしてきたのに、東雲の元忍者達はフルオープン。尻尾を隠さないでニンゲンとの交流を選んだ。

 それが積み重なったから、街に出てきたお上りの若者達が受け入れられた。

 その多くはだまされたんだけど、基本技術に調略もあったんじゃないの?

 本人達はハズレ者って思っていたらしいけど、本家な人達はうらやましいだったらしい。仕事なくなってきてカツカツだったし、新しい事に次々チャレンジしていってスゴイって評価だった。

 お互いその事には触れていないみたいだけど尊敬があるんだよ。キッカケができれば交流はすぐだよね。子ども同士はとっくにお友達だもの。

 大人って、色んな理由とか建前とかあってホント面倒くさいね。


 それぞれはイキナリコンチハして、探って都合の良い人を勧誘する。

 調略が苦手な人が多いのは経験不足と今の時代とちょっとズレているってところかな。親が脱サラしていると、そういうスキルは受け継がれないよねえ。

 あの人達も交渉は苦手みたいだったし、オッサン相手じゃ尻尾かわいい〜とはならないだろうし、気がつかないのかもしれない。

 まず、主力となっている人は避ける。そういう最初から自信があるのは付け込みどころがなくて扱いにくい。

 村としては戦力外だけれど、貢献しようと頑張っている人とか、縁の下に埋もれている人達。

 見る目はなくても、心理学チェックに引っかかればいい。これは隠れた技能も見つけることができる。役に立たないっていわれている人達が、大きくなりたい村にとっては重要だったりする。

 草に興味があるとか、サカナの味の違いが分かるとか、季節変化な事を知っているとか、食いしん坊とかは、さびれた土地では余計な事だし、言うと怒られる。


 ちょっとズレて外れているようなのが僕にとっては良い人だもの。本人達にとって不遇であればあるほど、来て良かったになるでしょ。

 人は環境の良し悪しだけじゃないところでも満足度が変わるって知ってる。そのために環境を無視するのは良い結果を生まなかったって例がいっぱいある。

 良い職人は村程度では持て余すし、新しい事は害悪。勤勉なだけだと使い潰されて、正直者はだまされる。

 それは村だろうが、街だろうが変わらなかったけど、大きくするためにはそういう人を動きやすくして、楽しくする方がいい。

 どこにもいるエライ人の機嫌をみて立ち回るようなのやエンコラショ、おサボり〜ズは要らないの。そういうのほど過疎かそ村ではチカラを持つから弱体化していくしね。


 東雲の人達とのお約束時間までは、ルミナリエの人達にはケモノなココの人達で林を切り開いたり、養殖の準備をしたりね。

 ガラッと効率よく働かせるだけに変わる。大人は異性にさわるとビリビリってしびれるようにした。これは大きな子ども達も同じ。

 管理されるようになったけど、食事が出てくるし、夜は安全で快適。大人の人達の夜の変な声も聞こえなくなった。何かが出来上がっていく。働くのは楽しい。


 とまあ好評で、明るくなった夜に読み書きを教える・・といっても共通語。

 ちょっと出来ると、お菓子をもらえるとあって意欲的に学習が進む。

 今までは10くらいしかないんじゃないだろうかだった単語数が増えて、文章を作れるようになって、少しここの生活が分かるようになった。

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もうすっかり占領モードで住民は奴隷どれいのようだけど、複雑なことはできないし

やって来なかったことをヤレというのはムリだし、興味のないことは明日に繫がらない。

目的がある仕事、成果があるようなことをするのは楽しいと思う。

きっと親たちにはそういう知識や経験がなくて伝えられなかったんだろうけど

それはとっても不幸なこと。

労働は喜びだし、何かを作ることは楽しい。成果があるは素晴らしい。

野生だったし、文化させるのもイキナリじゃダメだからユックリしてるだけ

決してペット扱いしているわけじゃないんだよ。

何人スカウトしてくるかなあ。30人くらいいたらイイな♡ じゃあまた。

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