632 北に港ができるかな。

日が変わって一転・・ってほどじゃないけど、お仕事モード。

褒美ほうびをチラチラさせて、段々とお仕事することを当たり前にする。

いつの間にか大切になって、お仕事大好きになったらいいな。

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 僕らは漁の朝タイムなので、朝ゴハンも終えてお日様コンニチハの頃には朝の運動をする。ゆったり拳法の型をしてたけど、子ども達とか若者にはユッタリ過ぎて不評だったから、新たにテンポの良い曲にしたら好評で、こういうのををこれから広めていくつもり。

 朝の運動、深い呼吸して身体のバランスを整えて目覚めさせるよ。


 すっかり明るくなってモゾモゾと起きてきた。そのまま浜で寝ているのもいたけど、予想通り夜は冷えたんだよ。まさか冬もこんななのかな。

 横でジャカジャカ鳴らしているのによく寝られたねえ。

 で、何かを期待しているっていうのは分かる。用意はしてある。


「朝のごはんが欲しいなら、僕らの言うとおりにすること」にアッサリうなずいた。

 この人達にとっては暴食だったはずだから、コメを長く炊いた本格かゆにして、パリパリ漬け物乗せ。

 ねじり揚げパン砂糖付きにフレッシュジュースってだけなんだけど、コップってものに興味津々だし、ごはんのウツワとかトレーとか、不思議がいっぱい。


 今までが変化のない毎日で、見るものが全部新鮮って感じだから、これをどう利用しようかって考えているところ。

 文化どころかマトモな生活も出来てなかったけど、思った以上にタフ。

 雪は降るし海風は寒いっていうのに、この場所にいられたんだから、かなりスゴいんじゃないかな。でもそれなら工夫できるポイントだらけだし、何も考えないように育てられたというか、育った?

 近隣の影響かと思ったけど、思いっきり遠い。他は吹きっさらしの浜じゃないから、ここを見られたら奪われるだろうね。


 隠れ浜になっているからって浜に住んじゃダメ。

 もっと内陸の方の砂じゃないところに、ロープでいくつかの四角(縄張り)をして、そこに基礎(地下室付き)を用意した。

「じゃあ、家つくってね」

 柱を立てて、パネルをタンタンと置いて、パシュンパシュンと接合していく。

 くぎを打つ道具はさわらせないけど、パネルを立てたり組み合わせを指図さしずしてやってもらう。自分達で作ったって言えることが大事。

 お昼休憩でごはん。そしてまた家づくり。ロビンが行き来して物資を運ぶ。

 飛行の道具には招待しないし、近寄らせもしない。

 最後はロビンが完成済みの屋根を運んで来て、オーライオーライして接合。

 このままじゃ板敷になるから草マットを敷いて、その間に戸や窓をはめ込んで出来上がり。


 入って薬液の入っている水桶みずおけに足を入れて、手でコシコシ。

 こうすれば手も洗えるって事で、上がりかまちに置いてあるフワフワタオルで手足を拭く。これが家に入る作法。

「これが今日からキミタチの家だよ」

 キャアキャアってしてるけど、決まった事は(思った通り)守るようで、整然と列を作っている。これならって思った。

 夕食は肉。ジュージュー焼いて塩パラリのをどうぞ。改良したトリやブタは舌がえている人達もうならせるほどで、熟成も完璧。おいしいでしょ。

 昨日とは飲み物が違うけど、野菜も食えっていうのは同じ。この人達ってそういう食品を取らないから体調不良の人が多かったし、こういう環境だとそれを気にする余裕はないよねえ。

 それからタレ肉のも登場。タレは研究の成果で違ったオイシサをどうぞ。


 家族って単位はないみたいっていうか、誰が親子か分からないソックリさん。

 狭い世界だろうし、そういう事なんだろう。

 他をいたわる余裕なんかなさそうだもの。異常が出たら淘汰とうたされるよね。

 寿命がすごく少なそうだし、大きい子どもで中年になりそう。チラ見した感じではどの人もいくつかの病気や異常がある。

 この人達を利用するから、長く使えないと困るので良くしているだけ、扱いやすいってところの他に良いところがなさそうだもの。

 外海での漁はしていなかったし内海でもしょぼい甘々ちゃん達だし、大河があって堆積たいせきされた土地って最高なはずなんだけど何もしていないの。

 この茂った林がやたら元気なのは栄養がいいからだよねえ。森も深そうだし、迷って山の裂け目を偶然見つけたって感じかなあ。


 その恩恵も分かっていなかったのは、ナマケモノだった父祖のせいなのかって、断定してるけど、当たっているだろう。やる気がなくたってヒマなんだから、知っていることをやって良くしようとするものでしょ。

 それがこの有り様ってことで、ケモノからも避けるために浜に家?を作った。

 前の僕なら出来ない人達ならって、イ〜ヨイ〜ヨして上げ膳据え膳で偽善しただろうけど、そんな事をしてもいい事は何もなかった。

 やってもらったことを当然にして、あからさまにサボるから、もうそういうのはしない。ちゃんと評価をしてあつかう。



 翌朝、薄暗い時間に起床。全員を叩き起こしてクズグズしているのを竹製のそこそこ痛い棒でパシ〜ンする。それで目が覚めたみたいでノロノロとやって来た。

 くすくすしている同じ家の人達も「連帯責任」でバシバシする。

 トレーを持って、具沢山ぐだくさんスープとパンを乗せられるって時には昨日までの優しい態度をしてて混乱してるけど、フォローはしない。

 ワイワイの食事「時間だから外に並んで」されて、みんなで体操を見よう見まねでする。

 さあお仕事で、大人はボートに乗せられて外海で漁。大きい子どもは入江内で。

 小さい子は後片付けをして、家周辺の伐採ばっさいのお手伝い。

 掘った穴に食べ残しを捨てて切屑きりくずや葉っぱをを入れるっていう作業をしたり、土を掛けたり運んだりを昼まで。


 お昼〜って戻って来たんだけど、死にそうな顔をしているのが何人かいる。

 ふざけていて食事を無しにされた子達だろう。

 今までだったら朝と夕方だけだったし、それを1食くらい抜いたくらいって考えていたんだろうけど、生き物分布調査で岩場を歩いたり、潜ったりして採取すると、オナカが減るんだよ。

 朝早く起こされて、何で叩いたのかが分かんないから不真面目にはできない。


 アレって音がすごく痛そうだけど、実はそんなに痛くない。

 叩かれたって事を意識させるためだけで、チーチーパッパみたいに鈍い音ですごく痛いとか、筆学所の音と痛みが一致しているってものではないの。

 普段怒られるっていうか、大人達は子どもに関心が無いし、集めている食料は子どもの方がずっと多い。ダラダラしているのは大人の方だろう。

 今朝けさ寝坊だった理由が想像つくから、もうちょっと先のつもりだった音だけ叩き棒を出してきたし、朝のメニューもサッと変えた。

 げものを足して、ジュースもしぼりオレンジにした。これがオナカの調子を良くした原因で、実は漁の初心者が船に乗るときは出さないもの。

 さぞやゲーゲーしてサカナにしたと思うし、昼もドッカリでサッパリっていう消化が悪くて、オナカを活発にするの。

 風が弱くてラクラクのはずだけど、そういうオナカの状態だったらって野生そのものなんだから・・そんなことはないか。


 いつの間にかドーンと建っていて、外の流しで手を洗ってから、ジャ〜って個室に行ってアワアワにされて洗われる。

 これを着てねって出されたのを着る・・のが出来なくて着せられる。

 暖簾のれんみたいな服だったよね。で、この服を作ったのが一人の子供ちゃんだったらしくて、それまではほぼ全裸ぜんらだったとか。

 ヒモを作る方法だけはあったから、その辺の大きな葉っぱを繋いで服にしていたんだって。

 何年か前に草をいて入れ違いに草を通せば布が出来るって発明をしたんだけど、ずっと一人だけで全員分、屋根にしていた布とかを作っているらしい。

 あ〜そういう。


 こっちの寮のような建物の一階が食堂や身体を洗うところ、倉庫、保管庫、調理室にゴハンを食べる食堂とかある。あとトイレ。

 野良犬みたく浜のトコでして砂を掛けるってことをしてるっていうのを見ちゃったのと、発掘したからここではゴハン食べられないって予定を前倒ししたよ。

 塩水で洗うから、おしり清潔かもしれないけど、なんかやだ。

 用をここで足すようにっていうトイレトレーニング。

 してるとこって、まんまケモノだった。ハシを普通に使うからギリギリ食べ方は人に見えたとか、言葉があったからとか、狼と人の差はわりと些細ささいなところ。


 言語を話さなければ、毛も無いし弱いし、とりあえず保護してカイコみたく有用でなければ、興味がなくなってポイ、かなあ。

 もしここにいたのがそんなだったら追い出すよね。ケモノみたいなのは要らないだろうし、ここは最高の拠点になりそうだもの。

 そういうわけで過疎地かそちにしては破格待遇はかくたいぐう。サボるようなら放り出すつもりの人達を奴隷どれいな扱いにはしない。ある意味幹部候補だもの。

 条件は街の人と同じ。生活コストが低い分は安いけど街の人達にはそういう手当が出てる。控除の方は細かく見るのに、報酬の項目の質問は来ないから見ていないみたいで、手取りしか気にしない。

 だから控除のことをチクチクいうのかな。手取りは前よりずっとあるのにね。

 言うこと(お仕事や他のこと)をキッチリしたらイイコトがあるをしっかり刷り込んで人にする。それも僕が考えるお仕事の仲間。

 清潔で勤勉で明るい。未来を良くしようと考えられる人にしたい。


 ゴハンの後は、小さい子供ちゃん達はお昼寝。これは必要な事。

 昨日の夕食でグラグラしていた子とか、ゴハン中にコテンして「決まった時間」意識が必要かなあと思ったワケ。

 大きい子達の情報から、ベタ基礎のつもりだったけど、ぐぐっと掘り下げて、ロビンから投下した柱をしっかり打ち込んでいく。

 枠を吊り下げて、それを留めていきながら板をタンタンと置いて、それを留めるのをやってもらう。昨日のように全部調ととのえるつもりでいたけど、表面部分であっても重要部分に関われば愛着も湧くかなって。

 だから家づくりにも加わらせている。案外、仲間意識が低いようで群れにあるべきの団体奉仕という意識が、ひとりを除いて無いみたいだから。


 大人があんなもんだし、工夫も協力もなく厳しい自然の中を生き残っていたのは豊かな恵みがあったからだろうって、仲間づくりに失敗ばかりの僕にあきれられるのは相当ヤバいってことだよ。

 でもあせらない。ここの入江や周辺の海産物は結構良かった。

 東雲しののめやルミナリエの人達にしてもらうのは違うし、他に開発したいこともあって、余裕ってことではないし。

 あくまでも現地調達のつもりで滞在の宿舎は快適にした。これからしばらくは交代で面倒を見てもらうつもりだけど、これがどうなのかってことは知らない。

 この感想を収集出来ないのが困っているところ。

 観察して推測で突き進むしかない。メモはあって誰それって分かるけど、それは記録なだけで、ひととなりは分からない。

 不安を出さないように演技して「やって」してる。


 僕はひとりで出来る(正確には押し付け)けど、それは作ることだけで維持するのはしてはいけないと思っている。

 みんなが僕にいうときみたく「よろしく」では出来ないから、場所を調えて、用具や材料を揃えて、やり方まで準備する必要があるの。

 休憩や交代、気分転換やご褒美ほうびまでしないとそれは維持できない。

 たくさん失敗してきて、ちょっとだけ分かるようになった。

 常に努力すべしは僕の基本だから、放置でなければあおりはする。

 成果を出さなければ追い出すっていう侵略者ムーブも維持・・っていうのが分かっていないみたいなのでエサ(おいしいごはん)でね。


 昼寝が終わって元気な小さい子達が加わって、塗装まで出来た。

 今日完成の見込みではなかったので能力を上方に修正。協力できない者たちって思っていたけど、大人の様子をならっていただけでマトモらしい。

 まだ大丈夫、それなら・・


 人魚さん達と料理を作り始めた時に、大人が帰ってきた。

 桟橋さんばしはペンキが乾いていないので、砂浜乗り上げ。

 ピシッとしたカラフルな桟橋すごいだろうって、待ち構えていたのにグッタリして、ガッカリが伝わってくる。

 漁は良かったみたいで小さいカゴに入れ替えて、子ども達が運んでいく。

 予想通り波は静かだったのに、大人達が酔ってゲーゲーだったらしい。

 東雲しののめの人達にもこの程度な波で、深い海を見てビビったんじゃないかとか聞こえた。それに・・って僕を見るの。

 朝ごはんもお弁当も、漁に行く時には避けてってした食べ物ばかりで、俺たちは美味しくいただいたんだけどなって考えてそう。

 去年のキミタチもそんな感じだったよね。

 条件は違うけど海辺にいて外洋どころか、ちょっと荒れただけで漁を躊躇ちゅうちょしていたから、あなどりはしないだろう。

 バカにする気持ちがチラ見えすると関係がうまくいかなくなるものだから、ビビリを克服中の東雲しののめの人達が指導役として最適でしょ。


 商会では、そういうのをあからさまに感じていて、些細ささいな事でいちいち上下を作ろうとするのを何でって思って、イヤだった。

 子ども達に遊びを教えたり、料理を教えたり、生活のことを教えたりをする。

 僕の興味はその時だけで、繰り返しすると遊びには付いていけなくなって「めんどう」「トロい」「じゃま」って感情が出てくると思う。

 お話しをしているとラブに似た感情が飛んできたり、られたりたたかれたりもあった。それでやることが終わったらサッと退散するようにしてる。

 無邪気むじゃきにみえる子ども達って結構残酷だよね。


 僕が面倒というのは分かる。会話より正直な気持ちは明快でフッと漏れ出たのも感じる。言語というのは補助で、より細かく伝えるために有効だけど、一致しない事もよくある。

 人は気持ちとは違うことを言うっていうのろいのような機能もあるらしいけど、僕には心の方が優先されるみたい。

 ポッチに高尚な意志なんかなかったし、しゃべっていないのに気持ちがとてもうるさいくらいだった。

 いっぱい考えているし、気持ちが分かりやすいし、興味が特化していて楽しい。

 言語化が下手だから誤解されないように練習しようねってしただけなのに、何が奏功したのか急激に改善してた。

 何やらネットワークがあるみたいだから影響し合って、譲れないものや妥協できるものを仕分けして、日常生活に折り合いを付けて楽しくできるようになった。

 心配だった人達が下を向かないで、人に溶け込めてる。


 血が繫がって、ずっと生活してきてもすれ違うなんてことはよくあるよ。

 分かってくれる人なんかいないって逃げていたけど、お互い様だったよね。

 諦めないで、逆に個性って言い張って「どうだ!」って胸を張れば良いの。

 世界観が違うって意見を戦わせるのも面白い。

 イラつくってことは、お互いを意識しているってことだもの。

 大いにヤレって思うよ。


 ケンカがなくて、関心もないのに食べ物には寄ってくる。誰かが頑張がんばったものにたかるのはもう終わり。

 何かって記憶をパラリしたら、湖の人魚って出てきた。

 これなら対処法はある。あの時は排除にしたけど、従うしつけがされているなら、首輪を付けてペンペンするだけだもの。

 もう好かれようとは考えないんだから、やりやすい方法にするよ。

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子ども達には見込みがあるといっても、底が浅い。

何にも与えられなかったからとか、言葉で分かるとかだけど

全体奉仕に気が付いたのは一人だけだった。

本人も「ヒマだから」したくらいだろうけど、これは社会性の進歩。

とはいえ、どれも稚拙だもの。トレーニング必要だよね。じゃあまたね。

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