631 だいじょぶな気がする。

けっこう安易にイケるって思っていたの。

子どもの遊びで作ったヒミツ基地だって、もう少し良いモノだよって。

だからきっと実際の住居は上空からは分からないようにしてる。

そう思いたかった。

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 ちょっと北で海産物を獲ってくれるところが欲しくてやってきたんだけど、何にもなくて、自然そのものって感じだった。

 寝てたとこは、被災して救助を待っている人達って感じ。適当に重ねた危ないものだったんだよね。

 でも僕らの野営はフカフカ寝具で広くて、お風呂まであるし、トイレも忘れてないっていうくらいだから、ビックリしたよね。

 これで良いにできる気持ちが理解出来ない。ま〜僕が分かることの方が少ないんだけど、これはあんまりじゃない。

 上空からの来襲を警戒して偽装、ホントは別の所にあるって思いたかったんだけど、僕が見落とすはずはないの。

 この場所を選定するために、目だけじゃない方法でも観察していたんだから。


 結構、楽観視していたんだなあ。

 活きるって考えたら、これ以下はないって基準はちゃんとある。

 それよりもかなり下。

 たまたま災害にっちゃってじゃなくて、これで生活しているの?

 子ども達はここで生まれたんだろうから、少なくとも10年もこれ?

 それとも追い出されて、まだ半年ってことじゃないのは内側部分が経年劣化でボロボロなことでも分かる。

 絶海の人魚さんレベルなんだけど、あそこにない木材をかき集めた彼らとは雲泥の差。だって周りにいくらでも材料があるんだよ。


 着いてすぐの情報では「追い出そう」だった。

 選別とかおこがましいことで、この明らかにダメ集落から目ぼしいのを除いたら何もないだろう。だから排除するなら全部。子どもだからというのもね。

 良さそうなところにコレよりもっとまともな家を建てて、良さげなのを拉致って物資渡せば喜ぶに違いない。コレは人の住む場所ではないし、毎秋に来ているはずの嵐をやり過ごせているのが奇跡。ううん、また拾い集めたんだろう。

 この程度なら子どもだけでも・・って、おとな大丈夫?


 昼にはまだ早いし、アルムエルソ時間だって、ウチの人達がバクバク食べているんだけど、それキミタチのじゃないよ。

 残った分をアレンジして夕食にって思っていたのに「朝食べてない。メシ楽しみにしてた」って言われたら、ダメって言えない。

 おかわりを何回もして、びっくりレベルで食べ尽くした。

 1杯目は、少なめにって住民たちによそっただけで終了。

 ウ〜ンウ〜ンって転がってる。

 早食べして満腹だと、実際はかなり過剰だよねえ。


 あまりのおバカっぷりで、表情の消えていた子ども達に笑顔がともった。

 ぽっこりオナカを押してみたり、尻尾に触ってみたり、ヒレになっている人魚をゴロゴロ転がしたりしてる。

 こういう時、大人達は動けないっていうのはドコも同じ反応をする。

 気持ちのキャパを超えたら動けなくなるみたい。


「ねえ、ここでは何が採れるの」

 警戒心のなくなった子ども達に話しかける。

「サカナ カイ」「このぐらい・・このぐらいの」

「かわ おおきいの つかまえる」

 身振り手振りにちょっとある外観コメントで、どんなサカナで、貝か分かる。

 それは予想していたこの辺のとはかなり少なかったし、外洋に行かないと得られないサカナはもちろん、潜らないと得られないのも入っていない。


「火は使う?」

「つかう いま ない」「かぜつよいひ ない」

「ずっと まもった まえ」

 えっ、それじゃあ火おこしもできないって事?

 サカナ丸かじりとか人魚さん達じゃあないんだから。

 老人が、そう見える人もいないって事はそういうことなんだろう。

 周りはチンプンカンプンで、う〜あ〜って、そのまま聞こえてる。

 やたら、短くなって少ない単語というのを何とか翻訳してる。少ない言葉を身振りで補完するってことらしい。狭い世界ってこんなモノかもね。


 それからふんふんと色んなことを聞いた。なぜか質問されることが面白いことのようで、次々に周りの子が補足を入れてくれるから分かりやすい。

 わ〜わ〜と同時に言われても聞き分けできるし、該当する種類を参照もしてる。

 うう〜ん、人魚さん達の何人かがヒレ出しちゃってて、全開でくつろいでる。

 東雲しののめでもそうなのかな。

 あっちはもうバレバレで、種族の説明する前にこういうのはあせるけど、インパクト必要だったし、まあいいか。


 じゃあ足りないのは獲りに行こうって、サッと手を挙げた何人かで乗り込み。

 意味深に出してあった潜海艇がすうっと動き出してチャポン。

 僕じゃ全然息が続かないから、こういうのは必要なんだよね。

 人魚さん達は近くの村にいるんだけど、出来るからやってもらうは違うってしたせいで方法がなくなった。

 決まりにしばられて動けなくなる僕。

 シャチがごはん獲って来てくれるんだけど、細かいニュアンスは伝わらないし、会話出来る事はないの。深海は人魚さん達でも水圧ってヤツで大変みたいだったから、余計に頼みにくい。

 あかり持っていると、予想できない何かに狙われるかもしれないし。


 自分の目で見たいというのは当然ある。狙っている海底資源の採取や調査とかしたかったしって事で、実は造ってましたのがこれ。

 海を飛ぶミラージュってイメージで、可変翼に相当するのが採取アーム。

 僕のイメージの動作を補完しつつ、色んなギミックがあるんだよ。

 試運転はして耐久テストをしてみたけど、近くの裂け目の底がいくらでもありそうで、途中できて戻って来た。

 サンゴの群生地も見つけたし、でっかいサメにバクリもされたけどキズも付かなかった。今日がお披露目で、すごいでしょうするつもりだったのに、オナカぽっこりでうなってるよ。


 スッと進むとキャアキャアとし出して、着いた時の無感情な様子はなくなって、僕が知っている子どもの反応だった。たぶんビックリが続いたせい。

 東雲しののめでもそういう事をしたのは聞いた事ないし、お酒が入っていないはずなのに、初めての土地ゴロンとしたのには僕も驚いた。

 あの入江にどこか似ているのかな。

 ここまで気が抜けている事は、なかったもの。

 それが奏功してて子どもらしく笑えるんなら大丈夫。着いてすぐに大人にはあんまり期待していないになったし、ビビっていたからコキ使えるって思っただけ。


 探していたカニをさっそく見つけてカゴに収納、サカナをいくつか獲って、浅いとこでコンブ、砂をザクザクして貝も獲った。

 これの乗るとこは狭くてほとんどが収納スペース、割とデッカイのに狭い。

 すっかり人に依存しない前提で、ある程度の広さがあった方がいいってだけだもの。

 乗るとこはオマケ。誰かを乗せるつもりなかったし。


 これの最大の目的は漁をするためじゃなくて、観察。どんな風に海棲のが暮らしているかとか漁をする方法とか、そういう方。

 お金を稼ぎたい、海産物が食べたいっていうのはあるんだけど、住んでいる人達に満遍まんべんなく仕事をどうぞする方が大事だし、やるからにはやりたい仕事、挑戦っていうのがあって欲しい。

 考えたくないっていうのならそういう仕事もあるし、やっていけば楽しいになって工夫するようになるかもしれない。

 どうしても働きたくないって人達にも、一方通行の働かされる場所はある。


 作ってきたお弁当を子ども達にどうぞしておいたから、今頃食べているかもしたところが寂しい海の底。サカナがチラリくらいしかいなくて〜なんだけど、これがふつうの海なんだよね。

 水族館の大水槽みたいにぎっしりと色んな種類がいるっていうのは、あり得ない環境なので、だからあれはウソっぱち。

 確かにワ〜っと来るのはいる。こういうのを知るとサカナの群れを見つけるのが大事っていうのがハッキリ分かる。


 水槽には入れられなかったカニが群れでいるのを見ると感激しちゃう。

 結局ダメになったけど、出入り自由になっている大水槽は満員御礼だし、個々の小部屋もいっぱい。安全な産卵場所、育児するところって認識らしく今までナゾだった生態を解明されそうなのがいっぱいいる。

 養殖のネタというか、ここですくえば良いんじゃないってくらいかえって、共食いにならないようにごはんをどうぞ(自動給餌きゅうじ)してる。

 水族館は魚種を感知して、それぞれの最適環境に調整するから、あんまり季節に影響されないでポコポコうまれる。まあそれでそれぞれの漁期は分かんない。

 過剰だしザクってすくって東雲しののめに供給してる。前は生簀いけすとかで養殖実験もしていたんだけど、今はやってくれる人がいないんだもの。


 出入り自由だから、ギュウギュウとか産卵育児が終われば出ていくみたい。

 そのせいかもだけど、この辺りは暖流もあってサカナが多いみたいで、シャチが留まっているのは僕が・・ではないの。

 危ないに設定したモノが入ってこないってだけだもの。良い方に考えがちなので注意しなきゃ。

 そんな感じなので、実は大漁場には行ってないみたいで、増えたんだから近場でラクラクしてる。漁業初心者には遠出は大変だし、途切れない漁獲量はこういう事だった。ねえ報告してよ。

 大きい波でも中身をシャッフルしないようにって考えていたのに・・


 いきなり良い船ってするといい気になるから、そこそこ大きいだけのにする。

 ちょっときたえてノルマに沿ってさせる。そのためにも海の地図は必要で、それによって潮の流れも想像できるし、こよみと合わせれば安全な漁ができる。

 海の人達だし天候の予想は出来るよね。

 ずっと仕方ないに逃げていただろうけど、もうそれは終わり。子ども達が見ているし、すぐに追いついて突き上げるんだろう。

 逃げばかりの人達も大人なんだし、かっこいいとこを見せて欲しいよね。


 最初はずっとキャアキャアだったけど、実は退屈な海底調査にきて、ごはんして元気が戻った。

 どんな時にうれしいか、どんな言葉で楽しくなるかって聞いたり、生活のこと、季節のこと、服作りとか食べ物のことを色々聞く。

 お話は誰とでもできるんだけど、こんなふうに質疑応答しつぎおうとうってなるか、講義みたく一方的に話すしかない。

 会話っていうのは双方向だと思うから、これは違う。

 与えるだけ与えられだけって感じで楽しくはない、作業のようなもの。

 夏までは期待してて、僕そうとう間抜けだったよね。

 うとまれるって経験いっぱいしてきたのに、今度こそ大丈夫を繰り返して勝手に傷ついている。それなのにちょっとプラスっぽいからグラリしただけ。


 ここの子ども達だって楽しそうな感情は僕にじゃないの。変わりそうって思っただけだもの。いきなり来て何かをもたらしそうだからワクワクしてる。

 これからを楽しくしたいなら、今日来た人達の言う事を良く聞いてねって。

 街の浮浪者のような生活だったけど、それが普通だって思い込むともう向上を考えないようになるのかな。

 ケバケバしい貴族やお金持ちをみて、その差が分かる。いいとは思わない。

 良い環境を用意して、やってみてしても目標や基準を持たないとなまけていく方にばかり進むのが多いから、今回は差をちらつかせようとしてる。


 浜に戻って来て、いい加減オナカが落ち着いた人達と子ども達で収集したものを降ろして、シートを敷いて並べていく。

 やっと起きた人達に見せて、これからこれを獲るんだよってつもり。

 湾内でこれだもの、外洋、それに河のだってあるし、場所だけは良いんだよ。

 すごい〜って、いっぱいのを喜んでいるけど、これをノルマされるの。

 でも他人事だよね、救済って思っていそうだし、見たことないのばっか。

 この水辺をチョボチョボしているだけなら、大きいサカナには会えないよねえ。


 このまま誤解でもいいの。セッセとゴハン作って、お酒やジュースも出して宴会みたくした。今回はホスト役なんだから食べ過ぎで動けなくなるのはダメって念を押しておいた。

 この人達にも食べることに執着を持ってもらう。欲求が強くて避けられないものに「食欲」っていうのがあって、仕方ないでガマンしちゃいけない。

 まあそれは建前で生活向上を切実にさせるには、もっと色んな事を意識させないといけないかあって。

 手っ取り早いのは生きるために必要なゴハンだし、服とか家とかはその次。


 この何にもないのを当たり前にしているのって、やっぱり大人が悪い。

 環境を整えたり、知識を与えたり、家とか服とかが最低限のはるか下。大きい子でも言葉がつたないし、成長も悪い。子どもがしいたげられてるって思ってたら、全員がホームレス。

 これが家っていうのは認めない。ちょっと強い風で吹き飛んじゃうよね。

 あと服、スカスカで保護する機能はないの。人も環境に適合するけど、ここって結構寒いはずだし、熱病もちゃんとあるんだから冬に体調をくずすと致命的。

 健康そうな人達しかいないってことのウラを読んじゃうよ。


 パンコネコネして、コメも炊く。具沢山ぐだくさんのスープとの組み合わせがこれからのになるかなあ。夕食は煮物、焼き物、揚げ物って色々にした。食材が美味しそうだと作るのが楽しい。

 量は多くなくて、紹介とそれぞれを味わえるように1品ずつ。

 このサカナを使って揚げたのがコレ。これは焼いた。次のは煮たよって。

 食事のマナーとかペースとかを持っているはずもなく、出すのを一気に平らげていくって感じ。一度に出さないで良かった。

 味の良し悪しは分かるみたいで、最初のは食べ尽くされて一口二口だったけど、オベントでは我先に食べた。量は少ないはずで現地調達って思ってたし、朝夕二食だったはず。


 目の前でがっつくようにされて口にしたのはちょっとだけ。それがすごく美味おいしかったから、子どもの警戒がうすれた。オベントはウチの人達ぶんしかないので仲良く分けて食べましょうにはならなくて、モジモジしているだろうから子ども達に全部取られたんじゃないのかな。

 匂いのあるものを選んだから、保温器から出した時に香りが広がっただろう。

 それでちょっと期待をふくらませていたかなって。


 目の前で調理した時には興味いっぱいあったけど、それでも遠巻きにしてる。

 別に待てが出来てるってことじゃあなくて警戒と興味が半々ってとこかな。

 海底探索で同道しただろう子達にちょっとの子が近くに来てる。

 それも食事が始まるまで。

 小さいパン、小さいおにぎりをパクってして、スープをズズズって盛大な音を立てて飲む。二本の枝を器用に使っているのはココも同じ。

 便利だよねえだけど、この辺で見かけた毒性のある枝を使っていそうだったから、割り箸を渡した。パキってするのが楽しいよね。

 ウチのはちゃんと失敗なく割れるように溝は深め、ぶきっちょの人がいるし、それで今日の運が〜とか言われたくない。


 つかみってパンとかコメだけど、フワフワで焼きたて炊きたてだもの。

 もしかして話しに聞くコメがこういうものって思っちゃったかもだけど、改良したコメで玄米だから黒いけどオイシイよね。スープも超おいしいでしょう。

 火がなくなったってことで、今までナマ。

 焼きだって、おいしい塩を振って、適切に調理したものはオイシイし、これで調理の腕が分かるって言われるくらいの差が実はある。

 それに今は油が乗ってて、ジュって落ちたのが香りを付けてくれる。

 パクってすると特別にオイシイ。気持ち通りの演技で表情を作ったらゴクリってアチコチからする。

 注目が集まって、これはこのサカナだよっていうのをようやく聞いてくれる。

 味覚と視覚で覚えるって方法をしてて、これはなかなか忘れないはず。


 サカナや貝が5種を超えたあたりから、見分けが付かなくなって箱に名前を欠かさないってルール。でも獲ったものの区別が付いていなくて、見分けが付く人達が呼ばれるようになってた。

 だけど何人かでう〜んってしてる。

 それは今でもで大きくなると名前が変わるっていうんじゃなくて、全然違う種類なのにいまだに分からないって人が多い。

 そこで他の感覚と一緒に覚えさせようって実験を始めたところ。

 ごちゃ混ぜで納品されるのは売り場で困るんだよ。


 パクパクして、ハイって見せてだから時間がけっこう掛かる。

 膨満感対策ってヤツで、また満腹でゴロゴロされたら放っておくつもり。

 この辺の夜はかなり冷えるからって釘を刺していて、ホスト役なんだものちゃんとフォローをしなきゃダメ。


 最後にゆでカニの登場。さっきまでワイワイしていたのがシーンとなって、黙々と食べてる。

 足だけでチョッキンしてあるけど、ホジホジじゃなくて、バキってしてる。

 カニってオイシイけど一心不乱いっしゅんふらんに食べているのは、ちょっと怖いって思った。

 これ以外の部分を最初のスープに使ったんだから、オイシイのは当然。

 つかみからシメまで鷲づかみだったでしょ。


 お酒をちょっと出して、月明かりだけになった浜で(僕らからしたら)雑魚寝。

 僕らは飛行の道具に入ったけど、夜はキュッと冷えて、この生活ヤバイって改めて感じたんだよ。

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ここの海にこんなにサカナがいるって印象付け。

それも一部だし、季節によっても変わってくる。

まだ川魚が登場していないし、コンブは干してる。

明日ツ〜ンするんだけど、もうトリコだから言うことを聞くしかないんだよ。

じゃあまたね。

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