77章 北にオイシイを作ってみる。

630 ちょびっと北に行ってみる。

グルンワルド鬼さん達は、自分達に大切な記念日にはしてくれないみたい。

あんなに喜んでいたし、記録映像でも感激してくれたんだけど

不幸だった自分に酔っていただけかもしれない。

でもね。あれを再発させないように、悔悟かいごを心に刷り込む必要があるの。

それを何度もしたような型だけのにしたら、もう贖罪しょくざいは終わりにしたと同じ。

心配なんだけどいいのかな。

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 記念日の前日にいくつかの街をチラ見。領主館のある街のクロネコハウスでコンチハして、明日のイベントが僕がパッケージしたものだけだった。

 鬼さん達は特別には何もしないっていうのも予想通りで、パートを多めに手配してブラウン商会協賛でお祭りをするけど、主役の登場はないみたいだ。

 気持ちの決着が付いたのは喜ばしいことだけど、同じようには人の気持ちは変わらないし、好ましいと思われるようになったとしてもほんの一部のこと。

 鬼さん街だけの搬出入みたいで、境界からは中に入らない。夜には街を歩かないようにってしたのを安全地帯でもしてる。

 気が付いていないみたいだけど、潜在的にはまだ恐れている。


 自分達がガマンすれば良いって話ではない。

 異種族は鬼だけではないんだから、まず自分達が違和感を感じなくなるまで溶け込んで、ずっと引きこもっている他のにも大丈夫だよってしたい。助け合うことをしないで知らんぷりしてきたから、今さらできないっていうのも少し分かる。

 自分達が良いことにしたからじゃなくて、コモリー達を迎える素地を作るようにして欲しかったんだよね。

 一向に弱点克服するつもりがない僕がいうことは出来ないんだけど・・


 それには今なら罪悪感が使えるから、傷に塩をかけるようにして忘れさせないってことだけじゃなく、深く心情にきざみ込ませるってつもりだった。

 だいたいの人達は「自分には関係無い」「悪い人達がいた」「終わった事」ってだけの認識だと思う。

 きっと他人事して自分とは結びつけない。襲ったのは暴漢たちだし、ぷら〜んを楽しいものにした。

 そう、街の人達は罪の意識なんか全くない。

 役所の女性が一斉に退職したとか、店員がたくさん辞めたりした原因を知ろうとはしない。身の回りでも差別はあったのに、したのに、みないようにしてる。


 当事者の一角がパッケージを提供しただけでは、きっと来年はしない。

 鬼さん達は良い意味で個人主義で、いつまでも引きずることはなくて、悪い意味で割り切りがよくて冷めてる。

 交際費の必要性は理解してくれたようだけど販促費はムダって思う人達だもの。利益に繫がらないイベントなら余計に不要ってするだろう。

 ブラウン商会は、今回無償提供を受けたセットに上乗せして祭りを大きなものにしてくれていた。自身の地位を上げるって分かるからだし、このままでは来年はマスコットの扱いにされる。

 解放されたのは鬼さんだけではない。辞める判断をするには受け入れ先が必要だし、そこが前職と同じではいけない。

 考え方は似ていたし、それを進める考えにも同調してくれた。


 扱っているものが商会のイメージアップをして急成長。

 そのチカラになったのが辞めた女性役人や大商店の女性たちで、待遇の公平さだけっていう今までだと弱かったことがプラスに働いた。

 それに安心を得たようで、短い時間でもいいし、赤ちゃんも預かる(元々あった)ことを知って働きたい人がいっぱい。

 農作物という弱かった部分にノウハウごと即戦力が加わって、次は足の早いものも扱えるから、ごはんが安く豊かになる。

 日々買うものも、どかっと仕入れて売るんだけど、周辺の村々に大量の生産物があるってわけ。店に並んだ当日から売れるのは当然で、働いていた人が買う人。

 で、この人達のクチコミはものすごく早い。


 頭の良い人達は控除の透明性や保障や福利厚生を正確に理解して、五月雨式さみだれしきに女性ばかりを集めた。

 その女性達から信用されている地味だけど誠実な男の人達も釣れる。

 名目の給金は他より安いけど、どこでも普通にある制服や宴会、ナゾ名目の控除がズラズラなくて、手取りはずっと多い。

 制服は支給で1着だけではなかったし、控除内容は心配しすぎっていうものだけで、説明も丁寧ていねいにされる。蓄財を推奨されるし金利というものまで付く。

 社宅とか割引で賞品を購入できるとか、仕事時間のケンシュウとかまである。あと夏冬に特別報奨金というものあって「この辺のはヒミツね」って。


 ブラウン商会はあのおじいさんが集めた、がんばる才能のある孤児こじばかりだし、女性が多くなって男女比は半々だったのがかなり女性が多い。

 最近の好調ぶりもあって、扱っているものがそういうものが人気商品だし、華やかで明るい。誰もがしいたげられてきたし、弱者を護りたいって気持ちが強い。

 お祭りはにぎやかになっていたけど、趣旨しゅしは忘れていない。

 あの一角だけではなくて、街の中心部でも今年はしてる。シロネコハウスも出店してて、一角に入っている工房とかも出していて、便乗した店も結構ある。

 カーニバルは大騒ぎすることがメインだから、差別化も出来ているかなあ。


 来年はやっぱり僕がって思いながら、夜中にグルンワルドの倉庫で荷物だけもらったけど気配も様子も変わらなかった。

 予定通り、結界の解除やシステムの修正をしてマニュアルをドサッと。

 お風呂の健康検査の道具もなくしておいた。これって健康の様子が分かるけど、体型調査が隠れた目的だもの。オーガが身体をきたえてくれないなら意味ない。

 結界をなくしたから、風呂上がりにフラフラしてると熱病とかにもかかる。でもパッケージされたクスリも揃えたし大丈夫だろう。

 僕からどうでも良いことをやらされたくないんだから、面倒な記念日もイベントリクエストもしないし、来て欲しくないだろうから最小限にする。


 メリットがなくなっていって、いつかこの場所を去るときが来ても百島ももしまは維持する。正確には小さな場所だけ。

 精霊石が必要で、それは僕のためじゃなくて、みんなにね。

 いろんな場所っていうのも、きっと意味がある。

 僕のは成り行き、思いつきだったけど、方々ほうぼうに遺跡があって精霊石が大量に見つかるくせに聖国では出土しない。

 地下に湯源は確かにあったのにミコはしなかった意味を考えて、口実だったのかなって思った。みんなのためだから仕方ないって出かける。そこに誰もいなくて誰も迎えてくれる人がいなくなっても必要だからって理由をつけてね。


 記念日に何かをしようとしたきざしがあったのかは分からない。興味をなくした場所にお仕事以外の関心はないし、そうなると何も映らない。

 みんなが僕を空気にするようなことは僕もしているようで、コンニチハできたのは動物達だけだった。これからも忘れないでね。

 森は豊かに再生しつつある感じがしてる。

 カミ材料を取るために広く間伐して、植林もした。

 もう野生動物は食料にしなくても良いから、森におかえりにしたよ。


 帰って来て、東雲しののめとルミナリエに「捜し物する」からってメンバー募集をお願いして1日ずっとシャチやニャーニャーやサカナたちやウシさんたちとイチャイチャした。もうただのお仕事相手なんだなって実感してさびしかった。

 解放の喜びをみてて、良かったなって、繫がったって思った。

 けどそれは気のせいだった。

 何かを変えて良くして、それは違う人が称賛される。

 がんばればがんばるほど、人は離れていく。

 関わりを少しにすればイイヨだけど、それって僕がツマンナイんだよね。


 暗殺が盛んになって、嬉しいとか思っている。

 もう向かって来てくれるのは、こういう人達だけだし、マイナスの感情はよく分かる。ためらいとか、ふっとみえてくる感情が豊かに感じる。

 そういう人達は仕事に真摯しんしだし、キッチリ遂行する。約束は大事って思っている僕の考えにも合う。好ましい事はないんだけど。

 かといって人をあきらめたってことではないの。お仕事を挟めばお話ししてくれるなら、それだけにして終わりにはしない。

 保護が鬱陶うっとおしいっていう気持ちは分からない。部族でまとまれるってうらやましい。そこによそ者が介入されたくないんだろうって解釈した。

 安全にしすぎて問題もあったし。



 朝はのどカラカラ、いっぱい泣きすぎたみたい。

 水飲み場でコクコクして駅に行って顔を洗った。まだ真っ暗でいただきますをして、コトコト、コネコネ、トントン。

 誰かのために料理するのは久しぶりで張り切っちゃうよ。

 お昼のお弁当にスープ。肉やパン日用品に服、カミや服、金銀銅に鉄、そして漁に使うアレコレ。あとお酒にジュース、加工食品に塩、砂糖、発酵食品って、田舎の人が興味持ちそうなのをいっぱい積み込んだ。


 待ち合わせは朝ごはん後でゆっくり。距離はあるんだけど、飛行の道具の感覚だとちょっとそこまで程度。荷物専用のつもりだったけど、乗せる機会はたまにあったから、席はちょっと良いものにした。

 もう操縦席はなくして前の方はトイレ。後ろのトイレを無くして狭かったお風呂を広く改修した。

 今回の交渉で時間が掛かるかもしれないから泊まれるようにもね。


 ずっと東の山脈を超えて行き来している時には地面を記録してて、マップを作ろうとしている。そこに村落が写っていたりする。ボートの規模を見れば、だいたいどんなものを獲っているのかは想像できるし。屋根の大きさで人口も分かる。

 近ければ行商人も来るだろうけど、ここまで離れているとムリで、街に頼らない生活をしているはず。独自に文化を持っているんなら家の建て方に現れるってことで、モノを与えればだませると踏んでいる。

 畑は一応ある程度で海依存の生活。食料を育てないで獲るばかりなら、その程度の文化レベルなんだろう。


 極北の人達は家をしっかり快適にして、保存食もしっかりあった。丸ごと食べ切ることで健康だったし、力強さも感じた。

 商材になるモノもあった(これ大事)し、難易度の高い言葉を持っていて自活に問題は無かったんだよね。

 それを懐柔するために魅惑の文化を持ち込んだし、ボイラーも設置した。

 生活が完結していたら話に乗ってくれないから調査は事前にしたというか、交流の主役が鬼さんだったから浸透はラクラク。

 個々の人達が実は特訓を欠かさなかった辺境忍者?って候補もあったけど、画像の分析ではニンゲンだってことでかなりあなどっていて、交渉術に難ありなこの人達の良い経験になるかなって思っている。


 それでいきなりバ〜ンって登場する。

 広場がないから海。小舟程度で湾曲していない丸太船で、ろくな畑がないとことか、掘っ立て小屋ってとこで技術力という向上心がないんだろうって決めつけ。

 村に厚みがないのは分かってるからグルリ見渡した感じで分かる。


 すごくおびえているな〜って当たり前だよね。

 驚かせて主導権を握るし、ここは植民地扱い(実際には言わない)のつもり。

 ずっと間をすっ飛ばしたのは意味があるの。建物の様式(ってほどのものは無いけど)とボート様子から、だいたい100年前に出発かなと。

 途中いくつか村があったけど段々簡素になっていて、その生存競争に敗れたって感じかなあ。


「コンニチハ、僕らは敵じゃないよ」

 それで勝手に料理を始めて、匂いに釣られたのを確保。食いねえする。

 サカナと貝だけだし味付けは付いている塩だけ、それもニガリを取り切れてないっていう西の方でいうところの海塩レベル。

 ちょっと前、移民なんだから進化の止まった食文化くらい持ち込んでいると思ったんだけどそんなことはなかった。

 想像すると、この人達は開拓心じゃなく、ただ逃げただけ。

 周りにあった全てのものが当然どこにもあるって思っていたんだろうけど、服を作るのだって、糸のつむぎ方は技術だし文化。塩造りもそうだし、便利に使っていたミソやショーユが高度な文化そのものってことに気付けなかった。


 逃げるなら相応の準備をするべきで、万能ではないんだから分担して技術習得なり、酵母こうぼを手に入れるなり、種籾たねもみやタネを収集する必要があった。

 一緒に逃げ出した人がいっぱいいて、その時はそれぞれの職種がいたんだろうけど、さらに逃げた時には必要とされるそういう人達は連れ出せなかった。

 居る場所が出来たんだし当然。そういう経験を貯めることのなかった、がんばらない人達が「今度こそ」を繰り返してココにそんなに前じゃない頃に流れ着いた・・かなって。


 技術(知識)を持ち出すこともなかったスカスカの人達の子孫は前の生活を知らないからウジウジと過去ばかりを見ていたっていう親の話をグズグズ話す。

 それを聞いて「前の暮らし、違う?」っていう子どもの無邪気な言葉に、言葉を失っちゃう。ああ同じだって。

 チラッと何とかしたいは思うだろうけど、流されてしなかったから動けない。

 そういう人達かなあって。


 たぶんここに着いたのは、何世代も前じゃないと思うんだけど、不衛生丸出しな環境では長生きは出来ない。

 街のお金持ち達が50年だとしたら、その半分にも届かないだろう。

 普通な人達がちょっと長生きだけだもの。だから長寿保障に興味がなくて、健康というのにまで仕方ないってしてる。

 その気持ちをムリに変えようとは思わない。選ばない権利っていうのもあると思うしねっていうのは、もう良いの。

 いい人ぶってイイヨしても、病気になったときに悪意が僕に来るんだもの。

 それに加入者が少ないと保険が維持出来ない。


 それで強制ってことにするって年初に発表した。念頭の所信表明ってヤツ。

 保険ギルドと工業ギルドのギルマス共著のガイド本がまだ出来ていなくて、これを見てっていうのが出来なかった。

 毎度原稿に赤字いっぱいにしたけど、僕が修正するのは違うし。

 文体が口語になったり、ですます調になったり、掛け合い文とか過去形、未来形とか統一取れてないって、何度も注意してる。

 最初の頃は想像とか自分の希望とか思い出とか入ってて、なんじゃこらだった。

 赤字入れて書き直しを何度もしているんだけど、今ひとつ理解していないから、文章がユラユラする。

 いっそのことって思ったけど、ガンバレって。


 ここの人、ほぼ全員が何らかの異常を抱えてる。流刑じゃないんだから、もっと工夫して生活してよ。顔色や肌でア〜アって。スダレのような服は寒そう。

 まあでも流刑されるのは思想犯とかだもの。文化的生活とはなんぞやが分かるから、すぐに快適な場所に出来る。周りはサカナいるし、木々や動物までいる。

 ぼんやり生活してきた人達の親が出奔しゅっぽんしたからって、飛び出しても今までの生活ができるはずもないけど、案外人は順応するものだし、スダレ服も寒そうにみえて大丈夫なんだろう。この辺の冬って、かなり寒いはずだけどね。


 こういう人達なので、遊び気分の人魚さんとは違うけどしたがえっていうのは効く。

 この人達を利用して寒い土地ならでは漁をしてもらうつもり。

 もち欲しいのはカニだけど、この場所ならではの海産物はある。コンブは北の方がオイシイって聞いてるし、貝養殖のいくつかをこっちでとか皮算用してた。

 ・・なんだけど、あまりのカサカサっぷりにあれ〜って。

 奥まっている良い場所でどうやっても、ラクラクに過ごせそうって思ってて、威圧して従わせる方法をして、すぐやらせるつもりだった。


 だんだんと集まって来て無心に食べている。その間のごく狭い村をみたら絶滅しそうな感じがする。家がいっぱいあると思っていたら、それがタダの風除けで一つ一つが狭かった。2〜3人が寝るだけってことで、田舎の子だくさんってヤツ。

 いっぱい住んでいると思ったらキャンプ場みたいなところで文化の匂いもない。

 過疎かそったヤバイ村だった。

 いくつもボートがあるって思っていたのがただの丸太船だし。


 でも見捨てない。面白そうな来訪者が来たのに食べ物にしか関心を持たない子ども達が何か悲しかった。

 色んな終わっている村に行ったけど、どこも子ども達は笑っていた。

 それが愛想あいそ笑いであってもね。

 なのに大人がヘラヘラして、子どもに生気がない。

 まるで街の孤児院の子ども達みたいだった。エライ人達の格好つけでパフォーマンスなだけだから外に出られないし、ずっと内職をやらされているだけ。

 どの街もそうだった。犯罪組織の隠れみのってとこもあったくらいでマトモに救済しているところは見たことがない。

 ストリートチルドレンの方が食べ物を探せるし、援助してくれる人達もいる。

 オラオラ予備軍になってスゴく悪い事をする子達もいるけど、負けないでがんばっている子はいて応援したくなる。


 僕が何でも拾うと思われているかもしれないけど、しっかり選んでいるんだよ。

 同じグループでも引き入れないのはいるし、すっかりあきらめているような子に手を差し伸べたりしない。

 人手が欲しいだけで、そまっていなくて、色んなことを吸収してくれるなら子どもの方がいいの。可哀想かわいそうって大人を拾ったら大混乱して会社自体がヤバかった。もうそんなことは繰り返したくない。

 慈善事業ってことじゃないんだから、ここの人達に意欲がないのなら、この場所から追い出して、希望のある人達に差し替える。

 それでゴハンだけ提供してみて、ちょっと付き合って様子を見ることにした。

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アテが外れてガ〜ンってしてる。

すぐにコンブ獲らせて、カニが食べられるって思ったんだもの。

なのにハリボテの家とか、子ども達が元気じゃないとか、ヤなんだよ。

でももうすぐに、環境を良くしたりはしない。

ちゃんと見定めてからにする。人手は必要だからね。

カニとかちょっと北の海産物欲しいからだけじゃないよ。ホントだよ。

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