76章 冬を楽しく終わって、新年も楽しくね。

620 真冬のお楽しみ。

 その前までの試験は科目を絞っていたし、今回始めてフルの試験をした。

 事実上これがラスト試験で、順位は出すけどモチベーションのためだけね。

 これを踏まえて新年は、ひと月ちょっと苦手を集中してやる。

 全員をハイレベルで揃えるというのが学校のスタンスなんだから、ワザと低得点を取るとか大事な試験をサボる人達が分からないんだけど、そんなに勉強がイヤならって、見つけた時点でお帰りってした。

 喜んで帰って行ったんだけど、もう除籍しているからスクールバスには乗れないし敷地には入れない。

 プラプラしているからって押し込んだ親とかが文句言ってきたら「商会の人材集めのためにやっていること」って、これこれこういう証拠を見せれば良いの。


 学校は監視だらけだし、ヒミツだけど見えるものは全て撮られて聞かれている。

 これは商店街とか工房とかでもで「僕が思う悪いこと」なら何でも記録する。

 勝手にレジしないで行くのもアウト。クローネで万引きにはならないけど、それは僕らの店だけだもの。他の、魂のメン通りでしたら食い逃げになる。

 初めは犯罪が多かった。防犯の子ども達や騎兵や忍者さんがいたんだけど、人攫ひとさらいがいて、可愛くなってる子どもじゃエサになっちゃうし、忍者さんには他にお仕事がある。


 兵隊をケーサツに変えて、大元の犯罪組織を潰したり、クローネの構築を色んな事案の対処しながらしていった。

 騎兵がごっそりいなくなったのは予定外だけど、派遣されていただけの人達がいつまでもいるとは思っていなかった。

 王都と比べるとごちゃごちゃの汚い街だもの。それでも臭くはなかったから、いじれない街よりも魅力はある。だましやすそうな素朴そぼくな人達だったしね。


 商業が発達しているところでは、僕は理論ばかりで経験がないから、だます自信がなくて、それに変えどころもなさそうで面白みがない。

 既得権益ガッチリだし、お鼻高くてパートしない?に応じてくれそうもない。

 僕のやり方にはそういう場所でも付け込みどころはあって、スラムはあったし、子どもが(僕基準では)スレていなかった。

 沿岸地区のすたれっぷりがイジリ甲斐がいがあって面白そうだった、それだけ。


 前政権を盛り立てて、国をおこすようなメンドウなことはしない。適当に総合商会として顧客を幸せにする程度のつもり。旗頭の一つにそれっぽい人がいてもね。

 ここはそういうのが特にスキみたいだし、利用だけしてる。

 うっかり経済協力や主権獲得しよう提案に乗るくらいにはそうで、見たことのない人なのに同調に疑いを持ってないの。まあいい口実だっただけかもだけど。


 去年、親だからとか保護者とかを「功労者ではない」から誘わなかった。それは子どもであってもで、メンドウな大人のお世話をした子達だけを連れて行った。

 大部分だったから全員に変換されているらしく、肌を焼いた子と焼かなかった子もいるし区別はつかなかったんだろう。

 それとただ同じ事をして演習に参加した(大部分の)人にチケットどうぞした。

 行っただけではもちろんダメで、ある程度以上働いていないといけない。

 もちろん手渡ししたわけではなくて・・


「「「「ステータスオープン」」」」

 一斉に半透明なウィンドウを展開して確認。試験の結果は即時出るし、答案も道具に放り込めば良いだけなので、何点かはすぐに。

 気になるのは立ち位置って事だろう。順位が気になるみたい。

 反対に補習って項目が年明けの授業になったりするからまあ一応。

 運動とか調理、意外にも標準語が多かった。

 保健は性差あるなあとか、理科はみんな問題なしとかで、覚える意欲があればすぐ覚えられる共通語の習得が予想以上だった。

 社会では設問以上の回答をする子が多くて、今まで知らなかった社会の仕組みに興味いっぱいって感じ。


 反対に大人のは「分からない」「聞いたことない」とかで、あれって受講記録を見たら出席してた。

 出席はクローネで取るから代返は出来なくて、8割いないとカウントしない。寝ていても出席にはなるって分かったからpingを定期的に飛ばすように変えた。

 今年から入った大人達のしつが悪いのが多くて、厳しい基準にしていなくてもムリにするしかない。学校はボケた人達の託児所ではないよ。


 まあそういうのは分かっているだろうから、ピコ〜ンした時の騒ぎは小さかった。たぶんね。なあなあをするほど親しい人は僕にはいない。

 そういうわけで学校は完全休暇。みんながお休みにならないと落ち着いて休めないっていう人はいる。僕が成果を求めているかららしいけど、基礎研究が早々答えに辿たどり着くとは思っていないし、ちょっと前に出した仮定を実験したい気持ちは分かるし、僕も知りたい。


 今までは気持ち研究と会社に就職できる研究者が勝ち組だった。ほぼ全員が豊かな家の子だったから飛び出してきても、お家との関係が壊れていなければ食うに困ることはなかった。

 そういう人達の役立たない研究の上に実用化出来たものは・・あるようなナイようなって、扱いがすごく悪い。ちゃんとしていないから盗作も結構あった。

 ゴミのようになっていた論文に全部目を通して、日付とかその頃はって合わせると弟子のフリして、今は会社にいる人がそうかなって。

 いまさら、どうしようもないんだけど。


 演習の時は学校を閉めて「来てっ」した。それを単に臨時の休みとした人は割といて、だから学校の人達でまとめてが出来た。

 お休みの予定を聞かれて、モゴモゴしちゃったかもしれない。旅行に行くのは一緒だけど、行き先が同じじゃなかったらって。

 買い物するんなら今日と明日しかないから、長いお休みなら明日は買い物はしないだろう。帰省するなら行く店が違うかなって、様子がおかしくなっている人達を見てふと思った。


 最近は準備でよく行く。去年末にいちおう完成して、それで修正をしてオープンだったんだけど運営する人がいない。

 人魚さん達はようやく焦点があって、マトモに話せるようになったから、プランテーションな単一大量生産を止めたんだけど、人の普通を教えるのに苦労した。

 あんまり分かっていないくせに、マニュアル作ってやって、しているから。

 常連さんが時々社員を送り込んでくれて、働き者になったウチ村の大人達と整えてくれた。もちろん無償奉仕ってワケじゃなくて、龍宮島の生産物の生ものじゃない方を優先して提供した。

 高級品を扱っていた商会だったみたいだけど、庶民ターゲットにシフトしてくれて、売り子が素人だった宝石や貴金属コーナーをお任せしてる。


 イケニエにおびえていた常連さんはお婆さんではなくて、顧問となってからは急に若返ってイキイキとしてる。

 それはあの島の人達も同じで、お話しのバケモノのようにギャーギャーだった人達が今は人にちゃんとみえる。

 僕らの普通の生活なんだけど、普通の島民生活とはかなり違うことになっていて案外変化に満ちて楽しいって思っているんだろうか。


 ダラダラで子ども達からも見限られた人達も、キュッと締まって農民焼けした身体とも違う。

 あれ〜って思っていたら、何年もしてこなかった忍者訓練を始めたんだって。

 子どもや孫に誇れるようになりたいとか言ってて、別人のようだった。

 ともあれ人魚達に勉強をさせて、作法とか身体を鍛えるとかを教えてくれた。

 忍者さん達は潜入調査のために一通りのことは出来るし、人魚の泳ぎは足ばっかだから上半身がつる〜んなの。


 胸筋を鍛えないとビシッとみえないし支える筋肉が弱いからお胸も垂れちゃう。

 足の筋肉だけが太くて、すごくバランスが悪いとは思っていたんだけど、改善してる気がする。

 人魚さん達が裸族らぞくというのは、服が泳ぎに邪魔だからという理由が一応ある。

 まあそれで体型が分かったんだけど、僕は着衣を当たり前にするから、今は分かりにくくなってる。

 それで健康診断って測り直して、ちょっと前までお仕事の服を作っていた。

 隠していた病気を見つけたりしたから、ホントの理由をごまかせたと思う。

 見つけた時、さらに春の体型とも違うから、最初のシマシマ服は着られないし、そのあとのも着られなくなってるだろう。

 捨てないで子ども達へのお下がりにしてだけど、大きくなってからのシマシマはイヤだと思うよ。



 早朝に商店街の広場にオスティンがやって来る。

 アテンドに旅行部門の人達いて、いる人を確認していく。スタートしたなら有無確認が重要だけど、やって来ない人を待つことはないかな。

 飛行の道具にしてはユックリの1H半の予定でいつもより低く飛ぶ。

 旅行時間は大事だと思うし、三ツ滝郷の方も揃えていて、東雲の直行便も同じ時間。足し算が合わないんだけど、こういうことに不思議とは誰も思わない。

 きっと飛行の道具のこともそう。時間が違っているとアレコレと考えるをするんだけど、同じってなると思考が停止するみたいだよ。


 この道具自体が進んだ技術満載でミラクルなんだけど、列車と同じって思うとそこから考えない。そもそも列車自体も不思議でいっぱいなんだけどね。

 馬車の速度は普通の道なら2Uがせいぜいで、整備された道で5Uくらいなのに街中で10U出てて、海の方では2勇車(20U)なのは普通ではないはず。

 蒸気で動く汽車が高台地域で走っていて、内陸向けに稼働していたのは速そうには見えなかった。

 車輪が小さくて鉄輪だから石でカチカチうるさいだろうし、凹凸を吸収はしてくれないし、鉄の塊の上にゴテゴテしてて重すぎだから、馬車の緩衝機構が使えないはずで乗り心地が悪そうだなあと。


 海ルートは何度か改良をして道幅も広いし、ピシッと石畳がカッコイイ。

 水捌みずはけも考えてあるし、街路樹がこれから育っていくだろうし、歩く人達のための歩道もある。

 道をただ敷設すると人は真ん中を歩こうとする。馬車の速度感覚だから車に対応が出来ていなくて、すごく危ない。

 それをポロリ言った時に、心理学の教授が線を引いて誘導してみたらって言ってくれて、道に線を引いただけで人がはじによって歩いてくれるようになった。

 これは車線って考えにも使えて、左側通行って言うだけでぶつからない。


 馬車の速さなら、何となくどちらかに寄れば行き違いができていたってだけで、たまに衝突事故もあった。

 そういう慣習が国毎も違うし、長さとか重さも基準が違うっていうことは今までは話のネタくらいだったけど、これからは問題になったりする。

 それで盛んに標準器ってしてるんだけど、今ひとつなんだよね。

 ボンヤリしている人達なら押し付けできて「これからはコレ」を素直に受け入れてくれるんだけど、ある程度文化を持っている所は受け入れてくれないから規格が乱立してる。

 仕方ないかなと思う。命令出来る事じゃないし。

 僕らが国際取引の商会で有力な存在になって取引先を広げていけば合わせるしかないになる。

 そうなれば規格基準っていう品質にも掛かって、粗悪な部品や合わないアレコレが解消していくかなってかなり気の長い話ではある。


 こういうのをギルドがグイグイして欲しいんだけど、期待通りにはならなかったから統合した。

 反発が起きてないから良いのかなあは、ちょっとだけ。言ってくれない気持ちが分かるはずはないから、ヤレっていうだけかな。

 動きがあるかもって警戒していた高台地域が静か。食料や製造に使う材料が不足すると思ったんだけど、そういうことにはならなかったようで良かったんじゃないかな。

 僕らへの資材注文が増えていたから、途絶えたときに軟化して握手って期待をしていたけど、今までの調達先は道を整備して野盗を討伐すれば良いだけだから、それをしたんだろう。

 懸念がなければ年越しも楽しくできる。


 遠征の効果はジワジワあって農家の取り込みや工房に卸すことを取り付けたり、商品を知ってもらえてファンという形のお客を少しずつだけど増やしている。

 変わらない事を望んでいる人達の気持ちを変える事は難しいだろうから、隣にいるっていうポジションでいつの間にかが良いのかなあ。


 オスティンが見えているってことで、僕はあそこにはいない。

 ノルデンしてかなり先にいて島には着いてる。これから新鮮食料を降ろしてから本島の方に特別なお酒とか食べ物とかでよろしくねする。

 これからはこっちにも観光で人が来るから、お愛想あいそをちゃんとしてねって。

 予定の夏にオープン出来なかったのは、商会の人達がスポーツ大会でいないってこともあったけど、人付き合い的なのが出来ていないというのもあった。


 それを矯正きょうせいして大丈夫になったのが少し前だったから発表が遅れたのであって出し惜しみをしたわけじゃない。

 ご褒美ほうびは公開出来るようなものではないだけで、他のは計算ではないの。

 ムリに人と交流させるというのは案外内向きな人魚には必要な事だと思うし、気軽に来られるようにしたかったんだけど、飛行の道具を使える人が育たなかった。

 行き来が個人頼みではだめだから実際の運行では完全自動化した船を使う。

 もう向こうも着くし船のことはまた今度ね。


 着いて、いらっしゃいませの人魚さん達がカッコイイ。

 百島のウェルカムでしていた花のレイを掛けてチュってする。

 ほお付近で音だけっていう僕のいたところでは親しい挨拶ってヤツ。あの時は子ども達がホッペチュウをしていたから僕もしたけど、ホッペを合わせるまでね。

 おヒゲがチクチクするよ。

 実はだるんだった体型も引き締まって、元々美形な種族はとてもステキ。


 今回同行した常連さんが良い笑顔してる。

 龍宮島とタイアップするって発表で、初めて種族暴露をした時にも受け入れてくれて、ずっと積極的に仕事をしてくれるって嬉しそうに話していた。

 きっとそれが元気になった理由だって感じたからなんだよね。

 その後の事業は絶好調でこれから輸出も始める。

 今までの仕事とは向かう方法が違うから大決心だったはずで、貴族やお金持ちのご機嫌取りをして、多少の無理や急な呼び出しに応じながら折々おりおりに贈り物もする。

 僕らに協力するってことは、そういうお抱えや御用達ごようたしをしないで庶民ががんばったら買えるものを売るのがメインになるんだもの。


 一時期に御用商会をしてみたけど、あんまり楽しくなかったし、突然いなくなって、こっちのことを全く考えない。もしそれだけの商売をしていたら終わるってことがよく分かった。

 高級品を扱うノウハウはなくて困っていたし、東雲しののめの淡水・海水の真珠や鬼さんたちの高級品も任せる。

 百島のすぐ南方と島の周辺、珊瑚礁を作る種類とは違う深い海にいるのが宝石珊瑚なんだけど、すごく深いんだよ。

 シャチにお願いしたら取ってきてくれるかな。


 冬だし暑いってほどではないの。夏もね。街の方がよっぽど暑いし、夏の時期はここの方が涼しかったくらい。

 去年子ども達には海用の服を着てもらってバシャバシャしたはずだけど、あの期間だけ暑くなって初夏みたいだったから、百島な水着で十分だったみたい。

 あれ〜何か暖かくなってきてる? いちおう準備あるけど・・いらないかな。

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