012 言ったらあれ。言わないともっとあれ。

 偉そうなことを言う。やりたいことを宣言する。人任せ、丸投げダメって説教する。バカだ!と思う。非常に。結果、昨日よりもすごく忙しい事になる。分かってたのに。


「まあ良いか。みんな良い顔になったし」


 畑の仕込みを仕上げた。これから水を入れるってところ。作付け入ってるとか報告してたけど、耕し終わってなかったっていうか、広げすぎでしょ、これ。

 今やってる苗代なわしろ。育ってるんだよ、これ全部分。倍、見越してたけど上限かあ。

 はしの方がかすんでるよって、モヤかこれ。ちょっと冷える。

 この後、すごく大変な水田での植え付け作業あるし、大丈夫じゃ無いよねえ。こりゃ、ちょくちょく泣き入るな。収穫の時、取り切れなくて、耕しちゃう事になんなきゃ良いけど。

 お買い物隊が何人か引っ張って来ないとアウトだよなあ。


 分かってもらう説明って、大変だけど大事だからねえ。ほら表情の無く、つまらない顔してた人達が表情死んでるけど口角は上がった・・って。あんまり変わらないとも言えるけど。

 まあ、今年は経験で、来年に生かしてもらおう。僕もよく分かってない。


 昼ごはん食べて、ちょっと元気。そうそう、昼食の習慣って無かったんだよ。偉い人達だけ。労働者の方が昼食必要だろ〜と思うけど、実際は逆。

 ぼく? 空気になってるから、自分で勝手に採取したり、窃取せっしゅして作ってた。

 小さい頃はどうしてたんだろうとは思ったりしたけど、実は栄養を取る必要があまり無かったりするんで、ただ転がって泣いていたのかもしれない。でもね。おなかは減る。普通に。じゃあどうしていたのかは誰も答えてくれないから分かんない。ちゃんと赤ん坊からだったのか。おっきいまんま生まれてきたのか、ちょっと気になるけど。

 食事大好き! 大切って思うのは、パラペコの記憶があるのかもしれない。


 若者よ。いっぱい食べてゾンビのようになって働きたまえって、食べて顔色が良くなった、バカ者たちに心の中でエールを送ってみた。

 ああって、次のところに向かう僕に絶望の表情を浮かべる方々に可愛く手を振っておいた。

「がんばってね〜」 両手をぶんぶんっと。


 次は採石場。んんん。何か適当に掘ってない? キミタチ。いろんなの出て面白いって?

 こ・こいつら殴りたい! ・・って届かない。


「楽しいキミタチにノルマっ! ここ大事なのっ。僕のご飯代の元!」

 持ってたハンカチに書き込んで放り投げた。


「期日までに達成できなかったら、畑作業に変えるからね! 分かった!!」

 怒ってみた。青くなって、ちゃんと採掘始めた、よしよし。


 まあ、ノルマがイヤなんじゃ無くて、配置換えがイヤなだけだろうけど、みんながみんな石が好きになるとは思わなかったなあ。何かヤバいものでも出てるんじゃなかろうか、ここ。ただ掘ってるのが楽しいとかじゃないよね。とはいえ、突き放すわけにはいかないから、作業しやすくしておいてあげるね。

 ボコボコっと。


 それで次は商材チームへ。

 切ると塗るしか言って無かったから何してるのか、分かんないんだよね。危ないことしてないと良いけど。


 で、来てみたら作っていたのは色々な大きさの角材。とりあえず、これをサイコロに仕上げると。

 うん確かに面白いし、ゲームに必要なものも多い。それだけで遊べるし。いいんだけど・・・。


「で、こんなにいっぱいどうするの?」

 大きいのとかは、よく分かんないけどまだ良い。三角のとか。円柱って、サイコロ想像できない。


「あ〜もうっ! 言ったよね。相談って。

 遊びの話はしたけど、こんなピンポイントで狙って、どこの層狙ってるのって。

 もうもうもう! 面白い! 採用っ!!」


 作業する人って毎日入れ替わるし伝えるの下手な人達だから、伝言ゲームの末こうなった。二進にっち三進さっちも行かなくなったのが、朝のあれかあ。

 今日たまたま来た人はすぐ分かるよねぇ。これじゃ不味まずいって。で、怒られると思って、皆々しゅ〜んとしてたけど、最後の言葉で、え??ってなったってことだ。


「い〜の、い〜の。

 何かごちゃごちゃだけど、何とかしようと頑張ったのが分かるからいい。

 ぱっときて、これ作れるとか技術がすごいって思うよ。

 作れるんなら、僕が方向を付ければいいの。

 すっごい売れそうっ! やったね!!」

 右手を高く、親指立てポーズしてみた。


「何かよく分かんないけどダメじゃ無いんだよな。でも前向いて言ってくれ」

 でもさっ。僕がまともな話するとみんな見るでしょ。ガン見。死ぬよ、僕。

 さっき人数は確認した、4人。

 僕の手のひら位の大きさで長い木を持って「これ作った人〜」って目をつぶりながら挙げてみた。


「わ・私・・・」

 薄目で見ると、外観は僕のちょっと上くらいか、学校に来てるだったっけ。


「これと全く同じものを50個作って、で名前付けるよ。君の名前ここに書いて」

 書いてもらったものを道具置き場にあった焼きごてに転写して、ジュウって焼き印してみた。


「うん、いい出来! こんな風に仕上げてね はい」

 はあ ハテナって感じだけど、揃うと分かる。今言っても伝わらないからねぇ。

 ちょっと不信感で視線が逸れてきた。そうそうこんな感じで良いんだよ。僕に対しては・・・


「お兄さんは、どれ作ったの」って朝来てたお兄さんに聞いてみた。

「これ」

 ・・・薄い板だなあ。でも反りとか無いし、ああ木目の方向を変えて層にしてる・・・


「って、すごいよこれ! だから塗装ってことかあ。そうだなあ、このままでいいか。これも50枚ね。白く塗って、反対の面は何か濃い色で 塗り終わったら教えてね」

 はあって言ってるけど、出来たらビックリするよ。


「え〜っと。このサイコロじゃ無いのおじさんでしょ。分かるよ。

 じゃあこんなのをこんな風にこうして、こんな感じで。

 これが入れる箱になるの。」

 説明で分かってもらえると楽だなあ。さ〜すが職人、いよっ親方! 


「とすると、これお姉さん。金属加工得意って事でいいんだよね?」

 ほわほわしたお姉さんだけど、なんかアレな気がする。いやきっと・・・

 多少無理言っても良いかもしれない。

 絵で伝わるかなあ。まあやり直しできるもんだしね。無駄にはならない。


 まわった中で、ここが一番楽しかった。

 やること決まったし、固定してくれるよね。なんか、出来るって思っちゃった。

 口先だけ。こうでなくっちゃっ!!

 なんか長居しちゃったよ。物作りって楽しいね。


 これなら商材部門は大丈夫そうというか確実。もっと増えて玩具じゃ無いもの作って欲しいんだけど何でか人気ないからなあ。石鹸せっけんができたら人気出てくるかな。期待しておこう。


 食べ物関係どうなってたっけ。そういえば朝のあれに来たことないよねえ。って考えたらお腹空いてきた。新メニューをいっぱい覚えてもらおう。ごはん〜 ごはん〜

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る