011 今日は何の日?

 何かうるさいなっ。気持ちよく寝てるのに、夜は静かにしてよっ。・・・朝?

「ん〜 ここどこ〜〜 って、ああ」

 僕の家だ、毎日寝ぼけてる。食堂の木の床よりフワフワで草の香りが良いからかもしれない。

 おなか空いたなぁって、うるさいのは、おなかの音か。 ごはん〜 ごはん〜


 食堂に着くと人がいっぱい。家に調理の部屋作ったけど使ってないんだよね。あんなに作れってうるさかったのに。

 ここは食べたいものを選ぶんじゃないというか、作る人達の食べたいものなんだよね。好き嫌いは無いから色んなのがでるけど、それぞれ自分の好きなものを作った方が良いと思うの。もうじき有料になるから作る人が増えるかなって期待してる。じゃあ、メニューが一巡する前に、いくつか覚えてもらおう。ごはんは楽しみだからね!


 ごはんのあとは、がら〜とした部屋。役所(仮)で昨日あった事と今日の予定を報告し合ってているところなんだけど、何だかなあなの。


「畑を増やして欲しい」

 畑の何が抜けてるよ、たぶんだけど。これだともう終わったって思っちゃうかも。若者が自由すぎてあちこち進まないってみんな知ってる。だとすると狂ったとしか思えない発言になってる。僕は分かってるけどさ。


「採石始めたい、欲しい」

 こいつもか〜何がっ、何がってば〜。想像すると、やっと仕事をする気にはなったって事かなあ。


「え〜と切る」   ・・・・    「塗る」

 もはや、怖いだけ意味不明、引いてる引かれてるって。伝わっていないと思って付け足したけど、余計に判んなくなってるよぉ。これは僕も分からないよ。


 町が始まってから何日か経ったけど・・・ まあ、いつも通り。

 毎回、来る人が変わるのはどうなのかなぁとは思う。リーダー役がほぼ毎回変わるし、その他もそう。固定しないとダメなんだけど。新しいとこ来たし任せようという気持ちが全く伝わってないよ。あの国は親方格の人以外、日雇い労働っていうのが普通だそうだからなあ。どうしたものやら。


「はいは〜いっ! こよみ作りま〜す。うっ怖いっ・・みんな見ないでよ〜」

「毎回りねえよなあ。てか人見知り早く直せっ」

「分かってる。分かってるってばぁ〜」

 両目をぎゅっとつぶって、手で隠す。


「誕生日知っている人〜!」がんばって元気に。目を隠したままだけど・・

「おうっ。もちろん寒いときだっ」「俺はちょっと暖かくなった頃」「私はちょうど良い頃だよ」「・・・・」「・・・」ってみんな分かってるそうだ。

 僕は知らないけど。


「って、ちっが〜う! そうじゃなくて、きっちりはっきり分かる事なのっ!」

 ハテナって雰囲気がする。まあ見えてないし。


「農業はこよみが大事なの知ってるよね」

 当たりを付けて、畑リーダーの方を向いて言ってみた。

「まあ、何となく・・・」

 ああ〜 この人じゃだめかぁ。


「今ね。あったかくなったとか、土の様子・・カンってので、

 やってるけどいいの?!

 今も伝わってなかったでしょ というか みんなっ!」

「そんなことないよなぁ。ばっちりだぞ」

 自信満々の気配だなあ。


「じゃあ、あなたっ。畑の人は、さっきどうして欲しいって言ってた?」

 人が居そうな方に指差してみた。

「当然ばっちりさっ。畑はもう作業終わったから、新しいの倍くらい植えたいっていってんだろっ。もう十分作付けしたんだから、広げるの止めろ。その分、こっちに人をもらうってことでいいよなぁ」

 声からして言ったのは採石場の人。手を開いて隙間から見てみた。すごくいい顔。農業の人だよね。ぷるぷるしてるの。

「な・ななななな」 え〜と42 かしこい僕っ。


「何いってんだ〜! つっかえねぇボケどもばっかりで遅れてんだよ」

 あんたもだよっ。

「ええ〜 畑増やしたいって言ってたでしょ」「言ってた」「言ったな」「うむ」「・・・」

 思い返してる、思い返してる。あああって顔した。 


「まあ、そうゆうこと。分かった? 結構ね。伝わらないの、思ってること。

 この前も常識無いって言われちゃったし」

 あれっ? すごく頷(うなず)かれてる・・・?


「でね。色々ちゃんとしたいの。決めたいの。伝えたいの。

 たとえば読み書きもそう。

 計画をね、準備をするの。いつ何をどうやって、どうする、どれくらいって。

 困ってるよね、みんな。何とかしてくれって言ってる。けど、伝わってない。


 それはね。分かってないから。

 スキルが無いってことじゃないの。結構知ってる。

 いつとか、どのくらいとか抜けてる、だけ。

 でも、これ大事なの。 ここだっ!ってタイミングが分かるのは、すごい。

 で、始めようとしてモノが無いとか、人が足りないって急に言われても困る。

 困ってる。

 分かってるのが指図さしずすれば、うまくいく。ことは多い。でもダメ。

 何してしてるのか分からない、これ何のためとか、これがどうなるだとね。

 つまらないの。つまらないと力が出ないの。そのまんまの力だけじゃなく。

 先のこと、工夫とか。知りたいとか。

 これが詰まってスキルになる。

 まあ、物語のようにスキルで急に出来ちゃうとか無いけど。


 みんなには見えてないだろうけど、妖精はいる。いっぱい。知ってるよね。

 妖精は楽しいが好き。でも最近楽しいが減ってる。

 楽しいを増やしたい、あふれさせたい。ここはそのための町。忘れてない?


 きっちりは面倒。準備も面倒。伝えるのも面倒。 って、聖国の人でしょ。

 丸投げ。無茶振り。すぐヤレ。これヤレ、明日までって。

 やられて嫌だったこと自分でしてる。

 仲間というより家族。みんなの子供たち。なんだから・・・

 ちゃんと伝えようよ、ね」


 しんみりしちゃったぞ・・・あわわ。


「ということで、はっきり、しっかり、楽しくやっていくの。

 言葉の不足、わかんない。禁止! 暦を作って、イベントを計画するの!」

 ばーんと、宣言してみた。


「くくく。最初はいい話だったが目隠ししてるし。目的は祭りかよ。台無しだよっ、可愛いけど」「うむ」「ん、可愛い」「ほんとほんと、可愛いけどな」「うんうん」

  

 分かったかな。分かってると良いな。楽しいが一番なんだよ、ちょ〜大事!

 それにしても祭りが可愛いとか、ひげもじゃや、おばさん(失言注意!)お姉さんのくせに、乙女チックなのばっかりだなあ。


 今日は始まったばかり。楽しいになるといいなあ。

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