第6話 告白
わたしは立ち上がる。
ともかく、わたしもお姉ちゃんも怪我ひとつなかったし、良かった……。
ほっとする。
そして、わたしは、わたしたちを助けてくれた相手を見つめた。
「ありがとう、セレナ」
「いえいえー、どういたしまして。リディア先輩のお役に立てたなら、何よりです♪」
セレナは上機嫌に青い瞳を輝かせる。いたずらっぽいセレナの雰囲気に、わたしは思わずくすっと笑う。
セレナはこういう子なんだ。
暗殺者をしながらでも、能天気な明るさを失わない。強い子だと思う。
わたしはお姉ちゃんという憧れがあったから、お姉ちゃんを守るためだったから、多くの人の命を奪う仕事に耐えることができた。
それなら、セレナの強さを支えているのは、なんだろう?
お姉ちゃんが後ろから言う。
「えっと……私からもお礼を言うわ。リディアを助けてくれて、本当にありがとう」
セレナはぱっと顔を輝かせた。
「あの有名なソフィア様からお礼の言葉を言われるなんて、感激です!」
「わ、私は……もうただの罪人よ」
「いえいえ。ソフィア様は、国一番の美少女で、公爵令嬢にふさわしい高貴さを持っている素晴らしい方ですから。そのソフィア様からお礼を言われたとなれば、公爵家に仕える男爵の娘としては、子孫末代までの名誉です!」
「そ、それは……言いすぎじゃない?」
ソフィアお姉ちゃんはそう言って恥ずかしそうに目をそらす。でも、満更でもなさそうな顔だ。
うん。
セレナはよくわかっている。さすが同じ公爵家の元仲間。お姉ちゃんは、聖女アイリスより、他の誰よりもずっと素敵な人なんだから。
でも……セレナはわたしたちの正体を知っている危険人物でもある。
セレナとは数年間、暗殺者を一緒にやってきた仲だし。できれば敵になりたくないよね。
「セレナは、なんでここにいるの?」
「理由が必要ですか?」
「誰かを暗殺するなら、冒険者をする必要はないよね?」
「今回の任務には、冒険者になることが必要なんです」
セレナはそう言うけれど、そんな任務、これまであったことがないけど……。
わたしが首をかしげていると、セレナは微笑んだ。
「ただ、わたしがこのダンジョンにいる理由は、リディア先輩たちにあるんですよ」
理由がわたしたちにあるってどういうことだろう?
セレナはくすっと笑った。その弾みに銀色の髪が揺れる。
「リディア先輩たちが冒険者になるって聞いて心配でついてきたんです。正解でした」
「え? ほんとに?」
「はい。いざとなったら、リディア先輩たちをお守りするつもりだったんです」
セレナがどうしてそこまでしてくれるんだろう?
たしかに仲の良い仲間ではあったけれど……。
セレナはいたずらっぽく青い瞳を輝かせ、わたしに一歩近づいた。
そして、わたしを見上げる。
「私はリディア先輩のこと、大好きなんです。知りませんでした?」
<あとがき>
更新間隔空いてすみません……! 定期的に更新していければと思います。
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