第4話 必要としてくれる?
わたしは、お姉ちゃんを幸せにすると改めて宣言した。
お姉ちゃんはその言葉を聞いて、うろたえて、顔を真っ赤にした。
「王子殿下に、お姉ちゃんをもらっちゃうって言ったのも、本気だからね?」
わたしは、くすっと笑って、そう言った。
わたしの言葉に、お姉ちゃんは恥ずかしそうに目を伏せた。
「からかわないでよ」
「からかっているつもりはないのに」
「私は……あなたが思っているような良い人間じゃないわ」
わたしはにっこりと笑った。
「わたしは、お姉ちゃんが思っているよりも、お姉ちゃんのことをよく知っているの。だから、わたしはお姉ちゃんに必要とされたいの」
それが、長年のわたしの夢だった。
わたしは、魔法剣士として、暗殺者として、影からずっとお姉ちゃんを守ってきた。
そうして、お姉ちゃんをずっと遠くから眺めているうちに、わたしはお姉ちゃんに憧れるようになっていた。
わたしは、愛人の娘で、「いらない子」だった。そんなわたしに無いものを、ソフィアお姉ちゃんはすべて持っている。
でも、お姉ちゃんに、わたしが近づくことは許されなかった。わたしは、あくまで影の存在だったから。
最悪の状況になって、わたしは、初めてお姉ちゃんを直接守ることができるようになった。
お姉ちゃんに、必要としてもらえるかもしれない。
少なくとも、わたしはお姉ちゃんを必要としている。わたしの存在価値は、ずっとお姉ちゃんを守ることにあった。
そして、これからもそうであることを、わたしは選んだ。
「お姉ちゃんは、わたしのことを必要としてくれる?」
わたしは、少し不安を感じながら、お姉ちゃんに尋ねた。
もし拒絶されたら、どうしよう?
でも、お姉ちゃんは、翡翠色の瞳でわたしを見つめた。
「そういうあなたは、私のことを必要としてくれる? 貴族の身分を失って、追放されて、奴隷になって、すべてを失った私を、あなたは必要だというの?」
「うん。わたしには……お姉ちゃんしかいないもの」
「あなただったら、他にいくらでも大事なものを見つけられると思うけれど」
「あ、それって褒めてくれている?」
お姉ちゃんは照れて否定するかと思ったけれど、少し頬を赤くして、うなずいた。
「ええ。あなたは……きっとリディアは私には無いものを持っているわ」
わたしはどきりとする。その言葉は……ずっと昔、幼かった日のわたしに、お姉ちゃんがわたしに言ってくれた言葉と同じだった。
ソフィアお姉ちゃんは、ちょっとためらい、それから勇気を振り絞るように、わたしの手を握った。
その手はひんやりとしていた。
「お姉ちゃんの手って冷たいね」
「あっ、ごめんなさい」
慌てて、ソフィアお姉ちゃんが手を引っ込めようとする。わたしはひしっとその手を握った。
びくっとお姉ちゃんが震える。
わたしは微笑んだ。
「お姉ちゃんの手は、ひんやりとしていて、とっても気持ちいい。それに、手の冷たい人は心が温かいっていうもの」
「そういうあなたの手は、温かいのね」
お姉ちゃんは、頬を緩めて、くすっと笑った。
「私も、あなたのことが必要みたい」
<あとがき>
姉妹が可愛い!と思っていただけましたら、☆☆☆評価いただければ幸いです!!
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