48話--それぞれの反応--※相田、『開拓者』視点

◆相田side◆


 林から嬢ちゃん入っているダンジョンのゲート付近に報道陣が待機していると連絡があった。

 テレビでも生中継しているようだ。

 

「相田陸将……いえ、協会長。これ、どうするんです?」

「嬢ちゃんが下手なこと言わなければ問題ないだろうよ。『開拓者』の件はどうなった?」

「協会から厳重注意という形で書信を送りました」

「大人しくなればいいが……ならないだろうなぁ」


 ちょっと前に生インタビューで爆弾を投下した『開拓者』の発言でマスコミやネット上が過激に動いている。

 嬢ちゃんに関してはハンター協会の特別指導役員として席を設けていて立場的には儂に意見できる立場にある。ミノタウロスの一件から始まった関係ではあるが、権力に興味が無いのはよく分かった。

 協会の設立もゴールドの使い道も、ほとんどが嬢ちゃんの案だ。日本内で進めていくつもりだったがゴールド市場については世界各国が仕組みに興味を示している。


「それにしても、覚醒とはものすごい効果がありますね」

「あぁ、今まで働くことができなかった者や働いてこなかった者、普通に一流と呼ばれる企業に勤めている者すらハンター協会に覚醒するための応募書類を持って来た」

「小規模なダンジョンでも100ゴールドは手に入りますからね……金の価値が下がったと言えど日本円で200万ですし」


 覚醒する方法が世に知れてダンジョンが攻略されて、金貨のおかげで金の価値が100gで2万ほどまで下がった。現物資産として大量に保有していた者は阿鼻叫喚だったそうだ。

 ダンジョンを攻略すると一攫千金も夢ではないことから覚醒するためにする応募は現在8期を迎えている。1期あたり100万人を想定して全国各地で行ってはいるが、まだ応募が止まらない。

 資金力のある企業とかもダンジョン市場に参加し始めていて、林の見通しじゃあ世界規模の巨大な市場になると言っていた。


「おや、橘さんが出てきましたよ」

「頼むから変なことは言うなよ……」


 祈るようにテレビを見る。売り言葉に買い言葉、日本のトップクラスのパーティーである2つが口喧嘩をする構図はよろしくない。

 嬢ちゃんが詰め寄ったインタビュアーを失禁させ報道陣へ堂々と言った。

 

「――――良くないと思う」

「……はっきり言ったなぁ」

「言いましたね……」


 おそらく嬢ちゃんはそんなつもりでは無いのだろうけど、あの発言じゃあ如何様にも解釈できる。悪いようには解釈されないだろうが、間違いなく対立するように煽られるだろうな。

 こりゃ、本当に嬢ちゃんの妹が言っていたように最強決定戦を開いた方がいいかもなぁ。

 血みどろの戦いと言うより興行として成り立たせてしまった方が楽かもしれない。

 

「林、決定戦やるぞ」

「ですね。この調子ならやった方が火消しは早いかと」


 問題があるとすれば『開拓者』からゴールドを受け取っている高官共だ。

 規模がかなり大きくなるだろうから間違いなく政府も介入してくるだろう。

 『開拓者』が言っていたのが、ただのマイクパフォーマンスならば開催に面倒な圧力がかかる。

 本心で言っていて最強の座を欲するなら簡単に開催できるだろう。

 具体的な案は林に詰めてもらって儂は何か言われた時の交渉要員として控よう。

 


◆『開拓者』side◆


 インタビューが終わって俺たちは楽屋に居た。

 【支援】スキルなのに自分しか強化ができない使えない女が口を開いた。

 

「先ほどの、発言は女性蔑視と言われてもおかしくない発言ですよ? リーダー?」

「うるせぇな。俺に意見したければその使えねぇスキルで全員を強化できるようになってから言え」


 この女をパーティーに残している理由は使い道があるからだ。技能を色々と駆使して前線で戦っていてモンスターのターゲットも引いて負った傷は自分で回復。肉盾として使い道があるから残してやっている。

 後は単純にいい身体で顔も悪くない。俺が使ってやるのも悪くないってことだ。

 

「ねぇ、りーだぁー。本当に『銀の聖女』は大したことないのぉ?」

「どうせ大した事ねぇよ。ミノタウロスを倒した時の名声に縋っているだけの女どもなんかよ」


 『銀の聖女』のリーダーがミノタウロスを倒してからは戦っている姿が残っていない。剣を使っていることから奴のスキルは【剣術】で使っていた技能は高速で移動する【俊足】と【八連斬】だろう。

 俺のパーティー内に居る【剣術】スキル持ちから聞いたから間違いない。

 楽屋にあるテレビの番組が『銀の聖女』の居るダンジョン前に切り替わった。

 

「へぇ、マスコミも仕事するじゃねぇか」


 暫くすると奴らが出てきて俺たちついて生意気にもコメントした。

 ――は?

 

「なんだと……!? 見た目だけのアイドルちゃん達がよォ!!」


 近くにあった椅子を蹴り飛ばす。

 俺たちが眼中になかっただと? それを、全国放送で?

 ふざけるな。大人しく慌てふためく様を見せれば良いものを……。

 スマホと手に取り電話を掛ける。

 

「あぁ、俺だ。明後日だ。俺も行く」


 クソが。女に生まれたことを後悔させてやる。

 『銀の聖女』のリーダーもいい見た目してやがるから楽しみだぜ。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る