47話--組み合わせ--


 家の中でカレンから話を聞いた。

 4つの種族の全てを余すことなく使うことができる。ダンジョンは別世界の一部がこっちに現れたものでカレンの居た世界には普通に人族の国もある。ダンジョンに行って痕跡を残して迎えに来てもらうのをこっちで待つ……とのことだ。

 ダンジョンはゲートから入った情報が登録されて攻略されるとその情報を基に外に出されるそうで、入って攻略するとこっちに戻ってきてしまうそうだ。

 他の魔族が作ったダンジョンでは権限がないため何もできないらしい。

 

「暫くは、お世話になる……対価は何がいい? 溶けるような快楽?」

「それは要らないかな。私たちと一緒にダンジョン攻略してよ、前衛が足りないんだ」

「ん、それだけ? もっといいよ?」

「じゃあ、定期的に私と模擬戦してほしいかな」


 これだけ強い相手と戦える機会は滅多にない。この前の時みたいに遅れを取らないように……カレンと戦えば対人戦の経験にもなるし対魔族の道筋も見えてくるかもしれない。

 何というか、魔族はスキルや技能の扱いが凄い上手いんだ。

 

「わかった。魔力の使い方も手取り足取り教えてあげる……あーちゃん達、全然使えてない」

「ありがとう……ちょうど気になってたところなんだ」

「ん、どういたしまして。私たちは、生まれた時から魔力に触れてる、だから慣れてる。大丈夫、あーちゃん達もすぐ慣れる」


 カレンはそう言って親指を立てた。

 聞きたいことはまだあるけれど、次で最後にしよう。

 

「カレン、第二王女なのに王位継承権が一位って何で?」

「私の国では強さが全て……パパの子供の中で私が一番強いから私が一位」

「遺跡で倒した魔族……ジルドだっけ? そいつは何位だったの?」

「ジルドは15位。30人居る、私は一位」


 あれで15位か……。一位を強調してドヤ顔で主張している。なんか褒めてほしい沙耶と同じような感じがする。

 頭を撫でると「へへっ……」と笑った。どうやら合っていたようだ。

 休日なので特に何もすることが無く、何をしようか悩んでいると呼びベルが鳴った。ドアホンで確認すると相田さんと林さんが見えた。

 

「どーぞー」

「家まで来ちまってすまないな、嬢ちゃん」


 ドアを開けて出迎えると気さくに挨拶をした。

 リビングのドアを開ける前に中で談笑している3人に声をかける。

 

「相田さん来たよー」

「声かけあざっす!」


 慌ただしく自室に戻る3人。寝間着だったり薄着だったり……客人を迎えるには良くない格好だったから声かけてよかった。

 リビングにはカレンが一人取り残されていた。服装はどこかで買ったであろうTシャツに短パンなので大丈夫だろう。

 

「おっ、新顔だな? 儂は相田だ、よろしくな」

「ん。私はカレン。よろしく、おじいちゃん」


 相田さんとカレンが話している間に林さんにカレンをパーティーメンバーにできないか聞いておく。

 戸籍とかこっちにないだろうけど……大丈夫なのかな?


「新しいメンバーの方、ですかね。訳アリそうな感じがしますが見なかったことにします」


 カレンの方を見ると普通に尻尾が見えていた。思わず頭を抱えてしまった。

 林さんの想像通りの訳ありだと伝えて秘密裏にパーティー登録できないか、改めて聞いた。

 

「可能ですよ。内密にこちらで処理をしておきます。何か起きても橘さんが何とかしますよね?」

「あー、うん。何とかするからお願いね」


 私が身元保証人にみたいなものだろう。まともに戦ったことが無いので暴れたときに止められるか心配だけど……カレンの性格上急に暴れだすことは無いと信じている。

 林さんと内緒話をしていると相田さんが思い出したかのように手を叩いた。

 

「そうだ、本題に入ろう。提案してもらった最強パーティー決定戦だが開催されることになった」

「沙耶の案が通ったんだね……」

「儂としてはあまりやりたくは無かったんだが『開拓者』と癒着している国の上層部が白黒つけた方がいい、と乗り気でな……」


 嬢ちゃんが煽らなければもっと穏便だったんだがな、と愚痴を零した。

 私としては煽ったつもりは無いんだけどね……。結果的にそうなったのなら仕方ない。

 随分と急ピッチで事が進んでいるようで開催は2週間後らしい。

 形式はトーナメントのようで組み割りも決まっているそうだ。

 林さんから組み割りの紙を受け取って確認する。『開拓者』とは反対ブロックとなっていてお互いに勝ち進めば決勝で当たるようになっている。

 案外、参加数が多く1ブロックに48パーティーとなっている。

 

「同じのが2枚あるように見えるけど……?」

「戦闘方式が違うんだ、1枚目は自分のパーティーから6人選んで相手と勝ち抜き戦をする。2枚目はそのパーティー自体の団体戦だ」

「へぇ……よく考えたね。6人に満たなくてもいいの?」

「大丈夫だ。最後の1人が負けたら敗北だから、1人でも問題はない」


 なるほど。カレンを含めて私たちは5人だから……。

 椅子に座っている私の後ろに抱き着くような形で組み割りを一緒に見ているカレンを見る。

 

「出たい?」

「ん、遠慮する。あーちゃんぐらい頑丈じゃないと多分殺しちゃう」

「あぁ、もちろんだが殺しはご法度だ。武器もこっちが用意した木製の物を使ってもらう。できるだけ形は合わせるようにするが……嬢ちゃんの獲物は剣でいいんだよな?」

「うん。こんな感じ」


 手に魔力を流して剣を出す。私の剣は少し変わっており、鍔がない。刀のように反りもなく両刃だ。

 最初は鍔のあるものを使っていたんだけれど使っていくにつれて邪魔になった。

 相田さんから剣が返却されたので収納する。

 その後、2人はお茶を飲んで帰った。

 

「トーナメントまで2週間かぁ」

「なんで、悩むの? あーちゃんの実力ならこっちに敵なんていない……」

「強すぎる力を見せちゃうと生き辛くなっちゃうんだよね」

「そうなんだ。私の国は力が全て。だから、隠すのは新鮮。おもしろい」


 カレンの国のほうが生きやすいかもしれないなぁ、と考えつつもトーナメントをどうするか。と思案する。

 勝ち抜き戦は私と沙耶と七海……小森ちゃんは【支援】なので出たいかどうか聞いてからにしよう。

 団体戦はいつも通りに戦えば問題ないはず。

 

「そういえば、カレンがこっちに来た時のダンジョンってどんな感じのだったの?」

「ん。草原の端にスライム1匹だけ。戻るまでには見つからないと思ってた」

「そっ……そうなんだ」


 ダンジョンの内容を聞いて身に覚えがある。協会に登録されていないダンジョンは発見者、もしくは土地の保有者の物なので誰かが来る前に攻略してしまえ。と意気揚々にダンジョンに入ったがモンスターが全く居ないダンジョンがあった。

 【神速】を使って血眼になって探し回った結果、スライムを見つけてそれを倒したら攻略になってしまった。

 変なダンジョンだったなぁ、と思っていた記憶がある。

 

「あーちゃん、今、声上擦った。もしかして、心当たりある?」

「しっ、知らないなぁ」

「……嘘。あーちゃんの魔力がざわついた。動揺してる」

「ごめん、私が攻略した」


 そう言うとカレンが私の頭の上に顎を乗せた。

 肩の上から両腕が通っているためそのまま首を絞められるのではないか、とひやひやする。

 

「うん、素直でよろしい。でも、罰として……また今度、血吸わせて」

「……1回だけだからね」

「やったぁ」


 そのまま私の頭頂部に頬擦りをするカレン。

 変なダンジョンだな、と思った時点で引き返せば良かった……。この現状は少なからず私に非があるということだ。

 要望は1度だけ甘んじて受け入れよう。自己満足の罪滅ぼしだ。

 

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