ベジタリアンの同僚が肉料理を食べている

 玄関の扉を開けると誰もいない……訳ではなく、宅配サービスの20代男性が荷物を抱えて立っていた。


「宅配でーす! ハンコお願いします」


 重い荷物を受け取りハンコを押すと、配達員はすぐに帰っていった。


 荷物を持って部屋に戻ろうとした時、誰かの視線を感じたような気がしたが、多分気のせいだろう。


ガチャリ


 部屋に戻って荷物を開けると、段ボールには蜂蜜酒が入っていた。どうりで重いはずだ。

 

 送り主は県外の友人だった。今度友人が好きな……なんだろう、何か贈ろう。


 蜂蜜酒を棚の中にしまうと、スプーンを取ってカレーを食べた。カレーに野菜の旨みが加わることで、より味に深みが出ていてとても美味しい。


 さらに、カレーに野菜ジュースを入れることでサラダがなくても野菜の栄養が摂れるというおいしさがあった。


 黙々と食べてカレーをたいらげると、空になった皿とコップを持って流し台へ向かった。


◽️◽️◽️◽️

 

 翌日、会社での昼休憩。食堂で和食定食を選ぶと、お茶を持って同僚のいるテーブル席に着いた。


 今日の同僚はなんだか口数が少ない。顔も緑色のような……あ、いや。けっして馬鹿にしているわけではない。ただちょっと、体調が悪そうに見える。そう言いたかったんだ。


「体調悪いのか?」

「ああ? べつにフツウダケド」


 同僚は、一拍置いてそう言うと、ナイフとフォークを持って、肉を切りだした。

 

 あれ? 同僚は確かベジタリアンじゃなかったか。急に肉をたくさん食べたら、消化不良を起こすような気がする。


 戦々恐々と同僚を見ていると、同僚は途中で肉を切るのがめんどくさくなったのか、大口を開けてムシャーと肉にかじりついた。


 なんだか嫌な予感がしたので、早めに食べて切り上げることにした。


「じゃあ先行ってるな」

「…………」


 食器の返却場所で片付けをしていると、ここから少し離れた同僚がいた辺りのテーブルが騒がしくなってきた。……ああ、きっと戻したのだろう。


 無言で合掌すると、食堂を出て仕事場へ向かった。

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