第24話 月光劇場

げっこーげきじょー。



~~~お姫様と煙突掃除~~~



 むかしむかし、あるところに、美しいお姫様と王子様がおりました。

となりあう国に住んでいた二人は、はじめてであった時から、お互いの事が大好きになりました。


やがてふたりは、おいしい食べ物や、きれいな宝石をおくりあうようになりました。

けれど、このふたりはとてもはずかしがり屋だったので、お互いの気持ちをかくすために、その殆どを国の人たちにあげていました。


それぞれの国にすむだれもが、そのことをしっていました。


あるひ、王子様の国でりっぱな舞踏会がひらかれることになりました。


とおくうみをわたってやってきた象や、ライオン、剣を飲み込む男、てじな師、世界の全てを知る冒険家、そして何より、となりの国のお姫様も招かれました。


それはそれは、どちらの民もおまつりさわぎです。


パン屋は一週間も前からやすまずパンを焼きました。

くつ屋は、三日間も寝ずに、町中のくつを仕立て直しました。

ふく屋は、ことしのはやりの服についてのいい争いを止めて協力し合いました。


すべては、心優しい王子様とお姫様のためです。


しかし、舞踏会がひらかれることはありませんでした。舞踏会の前日、王子様の国がせんそうに巻き込まれてしまったのです。


お姫さまの前に、体じゅうに宝石を身に着けた男があらわれていいました。


「ああ、姫よ。わたしは、こんなにすばらしい宝石をたくさん持っている。強い兵隊もたくさんもっている。わたしこそあなたにふさわしいおとこだ」


お姫様はかなしくなって、なんにちも部屋に閉じこもりました。

そのあいだ、国の人々は、まるで、おひさまを失ったみたいに、元気をなくしてしまいました。


ある日の事です。


お姫様は、部屋の窓から町のようすをながめていました。


すると、すすでまっくろになりながら一生懸命にはたらくひとりの若ものを見つけました。


だれもが、怒ったり、泣いたり、あばれたりしているなかで、その若ものはただ一人、一生懸命に煙突を掃除していたのです。


お姫様は、部屋を飛び出してその若もののもとへと、大急ぎでむかいました。


お姫様が元気にはしるすがたを見て、町の人たちはとてもよろこびました。


家にひきこもっていた靴職人も、パン屋も、服屋でさえ、みんな笑顔になりました。


お姫様は、その若ものとけっこんしました。


すすで黒くなって、誰もきがつきませんでしたが、その若ものは、となりの国の王子様だったのです。

ふたりは、それから、沢山の子供にかこまれて、幸せに暮らしましたとさ。



                                 おしまい

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