なんで私が

 6枚目と7枚目のピックを経て、ドラフト終了! 今回の私の手札はこれだ!



【職業】

若い農夫 大鎌使い 厩舎長 腹心の友 居酒屋の店主 液肥散布人 地質学者

【小進歩】

汚水溜め 脱穀板 蒸気鋤 パン焼き天板 製陶所の敷地 キリスト教 シダの胞子



 序盤の動き方は決まっていて、まずは初手で若い農夫を出して、畑畑から汚水溜めを最速起動。ここで大きい進歩がめくれているかどうかが一つの山だね。めくれてなかったら、少し苦しくなる。でもまあ全体の方針は変わらない。2ラウンド目に汚水溜めを出して、4ラウンドまでに調理場が取れれば、1ステの飯行動はしなくて良くなる。

 あとは流れでって感じなんだけど、増築増員は絶対遅れるだろうなぁ。まあ蒸気鋤を出せばオートで畑を耕せるから、増員なんて10ラウンドぐらいでも大丈夫だとは思うんだけど。一番の不安要素は、木が足りなくなりそうなところ。確かドラフトで『幅木』や『森の宿屋』が回ってたから、その辺のカードを誰かが使ってくれれば木は楽になる。もっともこればかりは他人任せだから、基本的には木は優先的に確保していきたいところだね。


 よーし、いよいよ試合開始だ! 1ラウンド目、柵! ……柵かぁ。2ラウンド目に期待するか。1番手は私だ。


「とりあえず授業で。若い農夫を出すよ」


 2番手は土屋さん。お、初手から悩んでるね。初プレイのときは3木から入ってたけど、今回はどうするんだろう。


「……私も授業で。えっと、こっちの授業は1飯払うんだよね?」

「うん。そうだよ」

「じゃあ1飯払って、『菜園の世話人』を出すね。同じ種類の累積スペースを使うたびに、野菜をもらえるから……例えば3木、2木って行ったら野菜をもらえるって効果でいいんだよね?」

「うん。それで合ってるよ」


 菜園の世話人か。私ならあまり初手では出さないカードだけど、序盤から野菜が欲しい構成なのかな。なんかそんなカード回ってたかな?


 3番手の甘菜ちゃんは葦石飯、4番手の石積君は3木。私の2手目は畑。土屋さん2木。甘菜ちゃんスタプレ。


「1飯払って、『葦帽子のヒキガエル』を出します。今から5、7、9、11、13を足したラウンドスペースに葦を置きますね」


 ヒキガエルか。1ラウンド目のスタプ材の定番カードだね。2ラウンド目以降に打たれることはほとんどない。やっぱり最大効果で発動させたいからね。これを打つつもりでいたら、1ラウンド目にスタプレが埋まっちゃったときのガッカリ感たるや。


「僕は1葦で。これで1ラウンド目終了だね」


 へー。石積君1葦か。1手目3木、2手目1葦。『子なし』の最速起動でも狙ってるのかな? でもそれならパン焼き補助の脱穀板は流れてこないような気がする。あるいは1葦がコストの小進歩でもあるのか。確か森の宿屋のコストが1レンガ1葦だったはず。あれを出してくれれば木が楽になるから、私としては出して欲しいところだね。


 2ラウンド目、めくれたのは大きい進歩。よっしゃー! これで汚水溜めを最速起動しつつ若い農夫で小麦が撒ける! これはツキがあるぞ、今日の私!


「授業。『路面舗装工』を出しますね。手元に石があったら毎ラウンド1飯もらえます。最後のラウンドだけ野菜をもらえます」

「へー。強いね、そのカード」

「強いですよー。今回のファーストピックです」


 得意げに土屋さんに説明する甘菜ちゃん。葦石飯、スタプ、授業の流れは路面舗装工を使うなら鉄板の手順。最後まで起動すれば1手で11飯と野菜だから、確かに相当強い。


 「僕も授業で。1飯払って『新入生』。パン焼きアクションをキャンセルすればタダで職業を出せるよ」


 石積君は新入生か。今のところ、どういう動きをするつもりなのか読めないな。1ステから畑行って種撒きして、パン焼きの代わりに職業出すとか? いや待てよ。石積君、ドラフトで私に脱穀板流したよな。新入生と脱穀板ってコンボするよね? 畑に行きつつ職業出せるってかなり強いと思うんだけど。んんん? 何考えてるんだろう。

 まあいいや。石積君のことばかり気にしてても仕方ない。私は畑だ、畑。

 土屋さんは3木。甘菜ちゃんは葦石飯。石積君はスタプレ。


「スタプレで、『焼き菓子講座』。収穫のないラウンドの終わりに、パン焼きアクションができるよ」


 ふーん。収穫のないラウンドの終わりに、パン焼きアクションね……え、ちょっと待って、それって。


「えー!? それって、新入生とコンボして、ラウンドの終わりに手番使わないで職業出せるってこと!? しかもタダで!?」

「うん。そういうことだね」

「へー。面白いね」


 感心してる場合かー、土屋さん! これがどれだけムチャクチャなことなのか、わかってんのか! そら脱穀板ぐらい流すわ! 明らかにこっちの方が強いし!


「出たよー。お兄ちゃんのインチキコンボー」

「インチキだー、インチキだー」


 石積君が強いコンボを使ってきたら、とりあえずインチキだと言っておく。いつもの私たちのアグリコラ。あ、でも今日は土屋さんもいるんだし、ちょっとリミッターかけないとな……ほらっちさんやくびきさんがいないと、つい口が悪くなっちゃう。いや、あの人たちがいてもそんなに変わんないか。あの夫婦もよくゲーム中に罵声飛ばし合ってるしな。


「まあいいや。私は大きい進歩で、汚水溜め出すね。レンガと豚さんを先のラウンドに置いていって、あと若い農夫の効果で小麦を畑に撒くから」

「いやいや、ちょっと待って! 織木さんのそれも大概だよ! 人のことインチキとか言えないよ!」

「あーあー、聞こえない聞こえなーい。いやー、やられたわー、また石積君のインチキにしてやられたわー」

「……甘菜ちゃん、この2人っていつもこんな感じなの?」

「だいたいこんな感じですね」


 土屋さんは笑いながら私と石積君を見て、こう言った。


「やっぱり仲良いんだね、織木さんと石積君」


 ……こら。何赤くなってんだ石積君。何か言い返しなさいよ。……ダメだこいつ。仕方ない、私から言い返すか。うーん。否定するのもなんか違うしな……。


「……アグリコラをやってる間だけね!」


 くそー! なんで私が、こんな照れ隠しみたいなこと言わにゃあならんのだ!

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