ダメな先生でごめんなさい

「まず手番順を決めるから、ジャンケンしようか。ジャンケン、ポーン。じゃあ土屋さんがスタプレだね。はい、2飯。私は2番手だから、ハンデで3飯スタートね」


 そんなわけで私の提案で、実際にゲームを進めながらアグリコラのルールを説明していくことになった。職業カードや小進歩カードは基本的なルールがわかってないと見てもわけわかめだろうから、今回は使わない。ただそれだとスタプレを取るアクションで小進歩を出せなくなってしまうため、スタプレの価値を上げるために集会所を漁と同じように食料が溜まっていく累積スペースに変更する。授業のアクションスペースは使用しない。見通しを立てやすくするために、ラウンドカードのアクションスペースは最初からオープンにしておく。いわゆる入門者用のファミリールールというやつだね。

 それと、2人戦用の追加のアクションスペースも用意する。『林(1木累積)』『ちょっと子供がほしい(5ラウンド以降)』『家畜市場』『資材市場(1石1飯)』が一緒になっていて、どこかが使われているとどこも使えなくなるという選択スペースになっている。2人戦用のは私も初めて使うな。


「じゃあ、始めようか。まずは家族を3人にすることを目指すといいよ。それには部屋を増築しないとね」

「えーと……部屋を増築するには、木が5本と葦が2つ必要なんだよね……?」

「そうそう。初期状態の木の部屋の場合はね。あとで改築してレンガの家にしたり石の家にした場合は、木じゃなくてレンガや石が必要になるけどね」

「じゃあ、最初は3木材を取るのがいいのかな」

「うん、私でもそうするね」


 土屋さんの初手は3木材。私の手番だ。さて、何をしようかな……って、タイマンだと2手目からロクなアクションがないな。職業も出せないし。じゃあ仕方ない。畑にでも行くか。


「私は畑に行くね。畑は1枚置いたら次の畑はその隣にしか置けないから、最初に置く場所はよく考えた方がいいよ」


 こんな感じで、ルールの説明をしながらゲームは進んでいった。


「4ラウンド目が終わったら、最初の収穫ね。そこで家族1人につき2飯払わないとならないから、気をつけてね」

「じゃあ4飯必要になるんだね。うーん、レンガを取って、かまどを取れるようにしておこうかな」

「あ、レンガ取られちゃったか。じゃあ私はスタプレ行って飯問題を解決しておこうっと」


 この後、土屋さんは4ラウンド目に増築。私は畑2枚に小麦2つを植えて、1ステ終了。タイマンだと、序盤はだいたい増築対畑プレイって構図になるのかな。2番手はマジで畑行くぐらいしかすることないわ。


「そろそろ羊を取って食べちゃった方がいいかなぁ……?」

「それもいいけど、先に柵を引いておいてから羊さんを取った方が収穫のときに繁殖するから、飯基盤が出来て楽になるよ」

「でものんびりしてたら、織木さんも羊を取りに行ったりしない……?」

「私はかまども調理場もないし、柵も引いてないから羊さんには行かないよ」

「柵を引くにも木が要るんだね。じゃあ木を取っておこうかな。木って大事だね」

「そうそう、このゲームは木が正義だから」

「ところで織木さんて、動物にさん付けするんだね。実はかわいいもの好きだったり?」

「うん、好きだよ。部屋にぬいぐるみいっぱいあるし」

「へー、なんか意外」

「あはは。よく言われる」


 ゲームは進んでいって、現在9ラウンド。土屋さんは羊さんの繁殖で飯基盤を作って、家族は4人。資材を集めて、次のラウンドには増築して5人にしそうな勢い。私はパン焼きで食べてて、家族は3人。あれ。もしかしてこれ、私、負けそうじゃない……? いや、練習だから別に負けたっていいんだけどさ。次は10ラウンドか。


「私は4レンガね」


 はっ! うっかりレンガをカットしてしまった! ここで私がレンガを取ったら、もう土屋さん改築出来なくなるじゃん! 改築のルールもまだちゃんと説明してないのに! だって仕方ないじゃん! 土屋さん、アドバイスなしでも普通に強い手打ってくるんだもん! 私だって経験者として、負けたくないんだよ!


 こうして、14ラウンドまでやってゲームが終了。土屋さんは10ラウンドで家族を5人にしたものの、最後まで木の部屋だったのが響いて41点。私は「急いで子供がほしい」通称急子まで3人進行だったものの、石の部屋まで改築して、レンガ窯と石窯と井戸まで取って52点。

 ……勝つ必要なんてないのに、ガチで勝ちにいっちゃった……。なんか、ダメな先生でごめんなさい……。


「うーん、単純に手数を増やせば強いってわけでもないんだね」

「いや、基本的には手数は増やした方が強いんだけどね。でも5人目は急がなくても良かったかも。4人で止めておいて、レンガを取って改築出来るようにした方が点数は伸ばせたと思うよ」


 まあレンガをカットしたのは私なんですけどね。ホントどの口が言ってんだこのダメ教師は。


「確かに、5人目ってほとんどやることなくて、弱いアクションしか打ててなかったかも。闇雲に手数を増やすんじゃなくて、効率の良い点数の取り方を考えないとだね」


 言いながら、真剣な顔で考え込む土屋さん。なんていうか、言ってることが立派なゲーマーだね。まあ、自分からアグリコラに興味があるって言ってきたぐらいだしな。これは、なかなか見込みがある子なんじゃない? 練習ではちょっとやり過ぎたと思ったけど、これならアグリコラを続けてくれるかも。


「じゃあ、次は本番と行こうか! カードを使った、本物のアグリコラをやるよ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る