なんで?

 さて、最終ラウンド、初手はどうしようかな。

 私がこのラウンドでやっておきたいことは、増員、改築、木材、畑(畑種)。

 このうち増員は、石積君も甘菜ちゃんも5人家族に増員済みだから、最後の手番で良い。

 改築は、私と甘菜ちゃんは出来るけど、石積君は石が1つしかないから出来ないはず。甘菜ちゃんは間違いなく改築柵に行く。私は出せる進歩がないから改築でも改築柵でもどっちでもいいんだけど、甘菜ちゃんの改築柵を潰す気にはならない。おそらく甘菜ちゃんは改築柵したとしても、そこまで点数は伸びてこないと思う。まだ家畜だって1匹もいないしね。やはり当面のライバルは石積君。

 木材は、私以外は取りに行く理由ほとんどないでしょ。これは3手目でいいかな。

 となると、最優先すべきは畑種。石積君は畑4枚だし、手元に小麦も野菜もあるから、畑種は今一番やりたいアクションのはず。よし。畑種に行こう。


「畑種行くよ。夢遊病者で羊さん2匹を野菜2に変換して、その野菜をそのまま撒くね」


 私は一応小麦の種も持ってるけど、1つ撒いたところで小麦が3つに増えるだけ。小麦の点数は1/4/6/8個で1/2/3/4点だから、小麦を1つ撒くことに点数的な意味はない。野菜は上限4点で持ってる数がそのまま点数になるから、野菜を2つ撒いて4つに増やすのが一番点数効率が良いアクションのはず。ただ、変換した分羊さんの点数は1点減っちゃったけど、これは仕方ないよね。


「私は改築柵行きます。意味はないけど石切りで石1つ軽減して、石2葦1払いますね。で、13木材使って柵引きます」


 うん、甘菜ちゃんはやっぱり改築柵だよね。さあ、石積君はどうする?


「僕も改築で」


 私は、自分の目と耳を疑った。


「え? なんで? 石積君、改築できるの?」

「うん。『陶磁器』の効果で、レンガを石に変えられるから。6レンガを4石にすれば、ちょうど5石になる」


 ……いつ、そんなの出してたっけ……? 確か……。


「あーっ! そういえばそんなの出してた! 5人目の増員のときかーっ!」

「うん。……改築、して良いよね? 出す進歩何もないけど」

「……はい。どうぞ、改築なさってください……」


 やらかした……また、やらかした……。






 いやいや、落ち着け私。まだゲームは終わってない。最後までやれることはやらないと! 確かに改築できなくなったのは痛いけど、畑種だって点数行動としては相当強いアクションのはず。それを石積君にさせなかったことに意味がある! ……そう思いたい。そう思わないとやってられない……。


「とりあえず、畑で……」


 これで私の畑は3枚目。農場ボードが埋まって、空き地のマイナス点はなくなった。家は木のままだけどね! うう……隙間風が吹き込んでくる……。


「私は種パンで。……小麦、1つしか植えられないなぁ……もう1つは焼かないと飯足りないし……生食い用に、野菜4つ植えとこうかな……あんまり意味ないけど……」

「僕は3牛取るよ。収容し切れないから、羊を3匹食べて、残った1匹を家に移動させるね」

「3木材だけど木こりで4木材ね」

「やっと家畜が飼えるー! 3羊!」

「2木材」

「石積君まだ木いるの?」

「最後に柵引くからね。僕以外誰も柵行ける人いないし」

「あ、そうか。私は増員で。これで私の手番は終わりだね」


 もう詰めの段階なのでみんなやることが決まってるのか、サクサク進む。


「猪取りまーす。家畜しゅーりょー」

「小麦取るよ。八百屋の効果で野菜ももらうね」


 うーん、八百屋、最後まで仕事するなぁ。これで石積君、小麦4つで2点、野菜3つで3点になったのか。小麦のアクションで2点行動。やっぱり八百屋出しといて正解だったのか。くっそー、そつがないな。


「日雇いで。2飯と、季節労働者で小麦もらっときます。これで小麦やっと2点かぁ……」

「じゃ、僕が柵引いて終わりだね。2木材しかないけど、生け垣管理人で柵は5本引けるよ」

「じゃあ、最後の収穫だね」


 ご飯は、相変わらずの攪乳器と機織り機のおかげで、家畜を食べたのは牛さん1頭で9飯賄えた。5人家族なのに10飯じゃなくて9飯なのは、収穫のあるラウンドに増えたワーカーは新生児扱いと言うことで、1飯で済むというルールのため。

 別に10飯でも足りるんだけどね……無駄に豚さん9匹もいるし……。豚さんは7匹4点が上限だから、こんなにいても仕方ないんだよ……。夢遊病者、もっとうまく使いたかったなぁ……。





「はーい、じゃあ点数計算しまーす」


 3人で畑やら柵やらの点数を申告していって、それを甘菜ちゃんがスコアシートに記入していく。

 そしていよいよ、全員分の記入が終わった。あとは甘菜ちゃんが点数を合算して、読み上げるだけだ。


「じゃあ、まずは織木さんから。50点! すごい! アグリコラ2回目で50点はすごいですよ、織木さん!」

「う、うん……ありがと」


 50点は……正直なところ、出来過ぎな点数だと思う。あれだけミスをした割りには。今にして思うと、ドラフトや展開にはかなり恵まれていたんじゃなかろうか。でも問題は、1位なのかどうかなんだよ……。


「私は……42点……ドラフトの時点で、こうなりそうな気はしてたけど……でも、お兄ちゃんに井戸を取らせちゃったのが致命傷だったなぁ……」


 うん。甘菜ちゃんには悪いけど、たぶんそのぐらいの点数だろうなと思ってた。でも本人も言ってる通り、ドラフトの時点で苦しい展開になるのを予想してたんだから、やっぱり実力はすごくある子なんだと思う。私の手札を甘菜ちゃんが使ってたら、圧勝していたのかもしれない。


「最後に、お兄ちゃんの点数は……」


 お願い、甘菜ちゃん。49点以下。49点以下って言って! そりゃ私だってミスはたくさんしたけど、そんな中での50点は本当に出来過ぎな結果なんだから! 今日はこの後もアグリコラをやるんだろうけど、私の今の実力じゃ、もうこんな点数は取れないかもしれない。だから、マグレでも、ビギナーズラックでも、なんでもいい! お願いだから、勝たせてよ! 49点以下って言って!


 甘菜ちゃんは計算を終えると、心の底からつまらないと言いたげな顔で、石積君の点数を告げた。


「51点」

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