ガトー・ショコラ



お気に入りのフォークは根まで飲みこまれ腐葉土のようなガトー・ショコラに





なにもかもパクりだなんてよくいうぜ居酒屋でくだまいている俺たち





休日にさざめく街の臭気です こちらがキャラメル・マキアートです





はぐれても孤独と知らずいきついて巨人の街に足を早める





すれちがうひとびとかわす肩ひえてぎこちなくなる十八の冬





河川敷の誰かが育てた鈴蘭が既視感デジャ・ヴュをおこす角度でゆれる





落葉にうずもれているイノシシの死骸がずっと胃の底にあり





雑踏の音すいこまれていく空にこの心音ものみこまれゆく





芋焼酎をロックで注文するようにさみしさをマスターベーションで割る





最新のプラズマテレビは暗闇に遺書書くほどの光量もなし





はつなつの海辺に君の影をふむ うしおはいつのまにか引き去り





あふれだした羊水に投げしいしつぶてそっと芽吹けよヒバリ鳴く、前に





とりのこされたわれの叫びは海原をゆらしたか? 風呂にたたせる波濤





孤独だといわんばかりの顔してる浴室鏡にうつる肖像





ロフトにて雑貨を選ぶ痩せぎすがぺったんこの財布をのぞいてます





冷え性だからきっと冷え性だからつららのようである君の指





発泡酒の一滴までもあおりつつ「おやすみなさい」のメールを送る





やさしさは傷つけないことではなくたとえば休日の寝過ごした十四時





市バスからスーツ姿で見た 夏の! 東京行きのバスに乗りたし

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