思春期



未来など考えないよとあらたまる君の瞳にうつる終電





君よりもはるかかなたにつっぱしれメール画面の紙飛行機よ





教室で君が「すなおになることってむずかしいなんていわなくていいよ」





アホの犬みたいに小首かしげおるこの童顔は俺の女ぞ





はじめてを僕もささげてしまったのでなじられることもできぬ立ち位置





煙草の火が燃えるのを見ている時だけはきっと誰もがさみしくはない





「酒くさい息でもいいから聞かせてよ素面の私に愛の言葉を」





がらすよりもとうめいなものきみがむいみに手をにぎってくれたときのゆびさき





別れ話のあとに立ち寄る吉野家の蛍光灯はうららかなるかな





「愛することにうまいとかへたってあるの?」「資格とかって必要なもの?」





自販機の〈あったか~い〉を渡されて「愛だ」と笑むきみ熱くないのか





雪の夜に君のことだけ考えてる 嘘みたいなメールを読みながら





僕を傷つけるすべてのものから守ってください遮光カーテン





自転車の荷台にのった君のことふりおとしたら思春期の終わり

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