第一短歌作品集 餞

今村章生

餞 全編

Ⅰ 二〇〇二 - 二〇〇四

青写真



ゆるぎない精神もてと穴の開いたボートのような授業は続く





われこそはわれこそはというカラオケの部屋で膝でも抱えればひとり





浮気ならしてもいいよと僕を見る彼女に「しないよ」と微笑んでみる





「さみしい」だなんて言えずに立ち止まる 階段に影も折りたたまれて





ウォークマン遂にこわれて暮れなずむ稲沢駅で途方に暮れる





家族愛だなんて正論ふりかざせ(『MをとったらOTHER他人です』)





行くあても帰るあてもない雰囲気 うすびかる携帯電話をかちっと閉じて





未来などノートに書いてしまうようにひとを愛した日々 とくになし





「四畳半に金はないけど愛がある」フォークソングを知らない僕ら





マクドナルドのネオンが消えてふりむいた今のお前はバリュープライス





誰のせいにも僕のせいにもできなくて芽の出たじゃがいもみたいな頭





好きな歌ならべていたねあの夜はミスチル、スピッツ、ジュディマリ、ボンジョヴィ

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