第6話 ダンジョン攻略は夢いっぱい
ダンジョンとは世界の各地に存在する遺跡などを指すらしい。魔物が好む空気というのは地下にこそ存在するらしく、ダンジョン内の魔物は総じて強力だという。
そして未踏破のダンジョンにはお宝が眠っているとか。
「……ダンジョンは行かなくていいだろ。僕ら根無し草だぜ? 準備も出来てないし……」
「いいやいける、マスターの力があれば!」
「僕の力で? 無理無理」
ここに来て意外なやる気を見せるタケノコ星人。ダンジョンとか好きだったのか。
「ていうかお前さ、星人とか言ってるけど、宇宙人なのか?」
「いいや、俺はただの被り物に全身タイツを着ただけの男だ。宇宙人では無い」
「……」
コイツの出てたイベントは未履修なんだよな。だから僕も全容が掴めない。
タケノコ星人が見つけたダンジョンは、地下へと続く階段で入る辺り、遺跡だろう。まさか洞窟ではあるまい。
しかしこの入口、見覚えがある。ルインズサーガで似たような遺跡があった。僕の想定通りならばこの遺跡は大した事ない遺跡だ。とはいえゲームとは違うだろうし、仮に同じでも戦力に不安がある。
ルインズサーガで出てきた未実装の女神に送り込まれた世界。ルインズサーガで出現するユニットが召喚されたり、そしてルインズサーガで見たような遺跡。
この世界はルインズサーガの世界ということなのだろうか。
というか、ここまで何の疑問も無くやって来ているが、僕がいるこの世界は本物なのだろうか。もしかしたらVRなのかもしれないし、ただの夢かもしれない。
何にせよ旅をしなければ何も変わらない。だったらあえて何も考えずにこの世界を楽しむのがいい。命を大事にすることは忘れずに。
この旅が終わったら僕は告白をするのだから。
「分かるなタケノコ星人。僕らの戦力じゃあここは無理だ」
「そんなご無体な……!」
「そうよ。ダンジョンを見つけたら入らなきゃ冒険者じゃないわよ」
セリアも乗り気だった。盗賊としてお宝の匂いに立ち止まっていられないのだろう。
「いや……でもよ、冷静に考えようぜ。先に街まで行ってから戻ってくるのがいいだろ?」
そもそも街がどこにあるのかも分からないのに、危険を冒したくはなかった。どうしたら無事にこのトラップを回避できるか思案していると、さっきからやけに静かなセリアが言った。
「冷静に考えるも何も、この程度のダンジョンならアタシ一人でも問題無いわよ」
「え? そうなの?」
「まあね。盗賊のアタシが言うのだから確かよ」
そうか。盗賊のセリアが言うのならばそうなのかもしれない。さっきまでの奇行から一転して気色悪いくらいに盗賊らしい彼女を信じてみるのもいいかもしれないと僕は思った。
そしてこの選択が間違いだったと僕はすぐに後悔する事になる。
このダンジョンは【ルインズゲート遺跡】という名前のダンジョンで、ルインズサーガにも出てくるダンジョンだ。ルインズゲート遺跡はゲーム内では1面に相当するダンジョンで、つまりはチュートリアルダンジョンだ。何も考えずにポチポチするだけで攻略が出来るダンジョンだが、現実は違っていた。
地下の空間には陽の光は入って来ず、たいまつなどの気の利いた照明も無い。ボクが持っている召喚器ことスマホのライトで前を照らしてどうにか歩いている感じだ。
たまに何かがいる気配がしてそちらに光を当てると、白骨化した死体とか錆びて朽ちた鎧が転がっていた。
「普通に怖いな」
「ふふん。アタシは大丈夫よ!」
「そうか。なら前を歩いてくれ」
「その照明、アタシは持てないんでしょ? 嫌よ」
「盗賊の勘ってやつでどうにかならないのか?」
「あのね。勘だけでダンジョン攻略するバカがどこに居るのよ」
自分で言っててどうかと思うが、正しく彼女の言う通りだった。
「他に照明は?」
「無いわ」
自信満々に言い張る盗賊だった。
「セリアが本当に盗賊なのか疑わしくなってきたぞ」
「そこまで言うならいいわよ。アタシが真に盗賊だという事を教えてあげる」
セリアはそう言うとずかずかと僕の前に出てくる。周囲が真っ暗なので急に現れた感じがして驚いた。セリアはたちまちスマホの照明が届く範囲から出て行った。
問題なく暗闇の中を歩けている感じ、何か特殊な技能かスキルでもあるのかもしれない。周辺を感知するスキルか。または暗視ゴーグル的なスキルか。
タケノコ星人は後ろから付いて来ている。召喚したユニットの場所は何となく分かるのだ。これもスキルのおかげだろう。
スキル様々だ。女神様には足を向けて寝られない。
「うー、暗い……怖い……何でダンジョンってこんなに寒いのよー」
先行するセリアの声が暗闇に響く。
侵入前に一人で十分と言っていた、あのセリアは何処へ行ってしまったのやら。
「そりゃあ、そんなお腹出してる格好してるからだろ」
「……!! この変態!」
セリアが怒鳴り声をあげ、前から何かが飛んできた。慌てて体を逸らして回避すると、僕の後ろにいたタケノコ星人に当たる。
「痛い! なんか瓦礫が飛んできたぞ?!」
まさか瓦礫を投げてくるなんて。しかもかなり正確だ。さっきのナイフ投げといい彼女は投擲に自信があるらしい。
なにせ大事なナイフを初手で投げてくるくらいだ。
「あのね、この格好は好きでやってるんじゃないわよ」
「どういう事だ?」
「盗賊の嗜みよ」
「ああ」
特に意味は無いんだなと僕は思った。
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