ツツジ月五日 月齢14.3

第1章 ソラマメ登場♪

1-1


 

 君は、ねこという動物を知っているかい?


 ふんふん?

 全身がふわふわの毛でつつまれていて?

 まんまるのお顔に耳が二つ、ピンと立っている。

 はだかんぼで、四つんいに歩いて、ニャ〜と鳴く??


 ……おかしいにゃあ?


 それは僕の知っている猫ではないね。

 見た目や大きさは君が思っている猫と同じだけど、僕の知っている猫は二足歩行にそくほこうをして、洋服を着ているんだ。


 そしてもちろん、おしゃべりもする。


 それが僕が知っている猫。

 そして僕でもある。

 君の知っている猫とは、ちょっと違う種族しゅぞくらしいね。


 そんな僕たちが住むのは大きな大きな海の、どこかに浮かぶクエスチョンマークの形をした小さな島。


 その名も、はてな島。


 愉快ゆかいな猫達が暮らす、とっても楽しい島。


 新鮮しんせんなお魚が捕れるはてな海岸に、海岸沿いにはオレンジやレモンなどなど種類いっぱいの果樹園かじゅえん


 町へと続く街道かいどうには小麦畑や牧場ぼくじょうが並んでいて、僕たちの住む町は若草色わかくさいろの草原の上に、赤やオレンジ色の屋根と白いかべのお家が点々トントンと建ち並ぶ、とってものどかな場所。


 そして町の中央広場には、島のシンボルである古代遺跡こだいいせきのキャットタワー。


 いま君が何にもすること無くて、ヒマにゃ~っ!つまらないにゃ~!! って、ゆかでゴロゴロしているならば、今すぐにはてな島に遊びにおいでよ。


 愉快ゆかい陽気ようきでちょっと不思議ふしぎな猫達が、君がやって来るのを、待っているから!!



 (ΦωΦ)♪



 ずは自己紹介じこしょうかい


 僕の名前はソラマメ。男の子。最近お誕生日が来て大人になった。

 お誕生日が来た日から、お砂糖抜きのコーヒーが飲める様になれると思ったけれど、相変わらずお砂糖とミルクをたっぷり入れないと飲めないし、虫取りも魚釣りも大好き!

 いつになったら苦いコーヒーが飲めるのかにゃあ?


 金茶色きんちゃいろの体毛に、お腹だけは白い。前髪まえがみだけくるっとしたくせっ毛。黒い目をした小柄な猫にゃ。

 いつも、ベージュのポロシャツにカーキ色のサスペンダー付きのズボンを履いていて、焦げ茶の肩掛けバックを持って、島中を駆け回っているんだ。


 駆け回る理由?


 それはね、僕がこの島で唯一ゆいいつの新聞を作っている『はてな新聞堂』の新聞記者だからなんだよ!


 ――にゃ? どんな新聞かって?


 事件がまったく起きない平和なはてな島はね、新聞の内容も、とーっても平和なんだよ。

 編集長へんしゅうちょうのミケランジェロさんは、一面(その日一番のニュース)を書くお仕事。


 ……例えば、明日は町の収穫祭しゅうかくさいだよ! とか、マイケルさん家にめずらしい五つ子が生まれたよ! とか。


 先輩猫せんぱいねこのタマジローさんは、毎日のお天気と占い係。気象予報士きしょうよほうしさんや専属せんぞくの占い師さんに話を聞いて、まとめるんだ。


 そして新米新聞記者しんまいしんぶんきしゃの僕は、島のお仕事などの求人や、無くし物、探し物などを呼びかける、お知らせ係。


 このたった3匹で、毎日100部の新聞を作っているんだよ。 

 すごいでしょ?



 (ΦωΦ)



「おはよーございまーす!」


 その日も元気よくはてな新聞堂へ出社すると、編集長のミケランジェロさんは外出中。


 ふくふく猫のタマジロー先輩と、はてな新聞堂の専属占せんぞくうらない師のキュウ☆ニクニクさんが、デスクはじっこにある応接間おうせつまに対面して座っていた。


 紫色のヴェールをまとい、神秘的しんぴてき雰囲気ふんいきのシャム猫・キュウ☆ニクニクさんは、透明度が高い水晶を肉球で包み「うげら! ばふーん! はにゅーん!」と奇声きせいを上げてあらぶっている。

 それをすごーく真剣な顔して見守り続けるタマジロー先輩。


 すると突然、キュウ☆ニクニクさんが黒目をカッと見開き、なんでか部外者の僕を指差した。


「マメ!」

「にゃっ?」

「お、お前に、【の相】が出ている!!」

「ほえ?」

かみなりに気をつけなさい!」

「はえ?」


 あらぶった息を整えて言いたい事だけ言うと、キュウ☆ニクニクさんはスッと立ち上がり、


「……お疲れ様でした……」


 と、いつもの神秘的しんぴてきなニクニクさんに戻り、スタスタとはてな新聞堂から出て行ってしまう。


「え? あ、あの、タマジロー先輩? ニクニクさん、帰っちゃいますよ?!」


 ニクニクさんは、まだ新聞の占いの結果を言っていない。にも関わらず、帰ろうとしている。それなのにタマジロー先輩は身動きせずにメモ帳をもって、真剣な顔をしていると思ったら、


「……ぐううぅう……!!」


 豪快ごうかいに寝ていた。

 なんて器用にゃ。

 ……ニクニクさんの占いは、とっても長いからなぁ。

 毎日、占いコーナーをするためにニクニクさんに来て貰って、運勢占うんせいういをするのだが、軽く30分以上はかかるのだ。

 しょうがないので、代わりに占いの結果を聞くため、ニクニクさんを追いかける。

 

 ……僕だって、アズキばあちゃん家の逃げたにわとりの話を聞きに行くっていう仕事があるのに~!!

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