書きたかった6

 20:30

「さて、全員落ち着いたし、こいつをどうするか決めようか」


 今、この館にいる者は全員食堂に集まっている。理由は、先程言った通りだ。


 ちなみに、ネモフィラは私が抱えたまま。縄如きはすぐ抜け出しそうだからな。


 また、落ち着いたと言ったが、ネモフィラの正体を知り、騒いでたからだ。普通驚きまくるよな。


わたくしとしては殺しても全然良い……むしろ、殺したいぐらいですが」


「ロロロ、ローズさん!?私を殺しても何もないわよ!?」




「すみません、本心です」




「そこは冗談って言ってよ!!」


 思ったよりローズ、エグいな……。ローズの本心やべー。これはこれでギャップ萌えってやつか?


「お嬢様、流石に殺すのはどうかと思います」


「ですが、何らかの苦痛を与えるのは良いと思います」


 門番の二人が提案する。片方は私も見たことある人……可愛いやカッコいいよりも美しいが似合う、細身スレンダーな門番。顔も凛々しい。名前は椿つばきだったっけ。


 もうひとりの方は、同じく凛々しい顔をしている。が、可愛さが抜けきってない。愛嬌たっぷりな小柄な門番。たしか、山茶花さざんかだったはず。


 目つきや雰囲気が似ていて、椿さんの子供の頃は今の山茶花さんと似ているんだろうと簡単に想像できる。


「あたし的には暴力もアレですが……他の人の意見に任せるっす」


「私もそれで良いです〜」


 紅輪コウリンと色々とデカい人が発言。色々とデカい人は多分庭師のひまわりだろう。ネモフィラにも引けを取らないデカさだ。


「僕は警察に付き出すとかが良いと思いますよ。殺すのは流石に無理かな、今の日本では」


 コックの白熊木はぐまき。中性的な見た目で一人称が僕だから、性別がよりわかりにくくなっている。まぁ、女性らしいんだが。にしてもこいつ、なんか掴み所がなさそうだな。


「うーん……。メラレウカはどう思います?」


 全員がメラレウカの方を向く。メラレウカは一切の緊張も無いかのように(実際無いのかもしれないが)、これまた面白い提案をしてくる。


「ここで働かせるのはどうでしょう?」


「ふむ……。私としては別にそれでも良いと思うが、館の者達で決めてくれ」


 皆は真剣に考え……2、3分後、ローズが口を開く。


「私は、ネモフィラさんをここで働かせても良いと思います」


「お嬢様がそうおっしゃるなら」


「私達もその意見に賛成させてもらいます」


「あたしもっす」


「私も〜」


「うん、それもまた悪くない……料理の作りがいが増えそうだね」


「と、言うことだ。ネモフィラ、聞いてたか?」


「……。私が逃げる可能性は?」


 みんなが「あ」という感じで固まる。……え?考えて無かったのか?


「じゃあ殺すしか……」


「ぜ、是非!働かして下さい!!」


 切実だなぁ……。自分の命はそりゃ大事だよな、うん。


「じゃあ、ネモフィラちゃんが新しく仲間になるってことで、晩御飯はめちゃくちゃ力を入れさせてもらうよ」


「やったぜ」


「なんで朱宮あけみや様が喜んでるんっすか」


 おっと、心の声が漏れたようだ。


「もうネモフィラは離していいよな?」


「はい。もし逃げたりしたら、全財産使って捕まえるので」


「……」


 凄い量の冷や汗をかくネモフィラ。もう逃げようなんて考えないだろう。


「僕が料理作ってる間に皆でお風呂入ってきたら良いよ」


「あ、私は残るよ〜。白熊木さん一人じゃ寂しいと思うし」


 白熊木とひまわりは残るらしい。私達はお言葉に甘えて風呂へ向かった。


「あの……」


「ん?……あぁ、そういえば僵尸キョウシについて説明してなかったか。流石にローズ以外には聞かれたくないな」


「でしたら……皆さん、先に行ってください。私達は後で行きますので」


「了解っすー」


「これで、いいですよね」


「あぁ。じゃあ、説明しよう。僵尸について」


――――――――――――――――――――――次回へ続く

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