書きたかった3
18:00
「今日は泊まっていきますか?
二階の廊下を歩きながら私に質問をするローズ。後ろで手を組んでいるところがまた可愛らしさを強調させている。
今私達は宝物庫にオレンジダイヤの《オレンジ・ガーベラ》を取りに行ってる。
「あぁ、ここの飯は美味いからな。何が何でも朝ご飯まではここに残る」
「オレンジダイヤのためじゃなく、ご飯のためですか……ホントに好きなんですね、ご飯」
「あぁ。料理は味覚だけではなく、嗅覚、触覚、視覚……様々な五感を使い楽しむものだ。
故に不味いものと美味いものの差は大きい。そういうところが好きなんだ。
私は料理下手だからこういうタイミングでしか美味いもんは食えないてこともあるけどな」
「確かに言われてみれば五感を沢山使ってますね。ふふ、やっぱり朱宮様の話は面白いです」
「そうか」
「予告時刻は確か21:00だったか?その時それぞれ皆はどこで過ごすんだ?」
「あ、言ってませんでしたね。
まず門番さん達はいつも通り門番を、紅輪さんは天井、メラレウカは私の部屋の扉前に待機です。
庭師さんは玄関口、コックさんは裏口を見る手筈になってます」
「なるほど、窓からの侵入も考えると警備とか雇えば良いと思うが……何故しなかった?」
「この館の窓は全部防音、マジックミラー、強化ガラスの効果が付与されていて、しかも割られたらとても大きい音で警報がなりますので」
「凄っ。でも効果が付与されているって表現は厨二病を感じるぞ」
「そ、そこは気にしないでください! もう……ほら、宝物庫に着きましたよ」
宝物庫の扉にはダイヤル式……金庫のような扉になっている。ローズがダイヤルを回して、その後レバーを回し、あとは開けるだけの状態。もちろんローズは開けるために扉を押すが……
1ミリも動かない。
「ギャグか?」
「違います!扉が重たいだけです!」
「ふーん……どんぐらいの重さなんだ?」
「たしか150キログラムだった気が……」
「ちなみに自分の体重の3倍の重さを持ち上げられる人を怪力の持ち主と言うらしいぞ。」
「なぜ今その話を!?」
「いや、持ち上げるんじゃなく押すとしても、それなりに力がいるだろ?つまりそういうことだ」
「どういうことです!?」
「全く……とにかく、一人で開けられるわけ無いだろ。代われ」
「は、はい」
私は150キログラム程あるとか言われてた扉を……
片手で開けた。
「ふぁ!?怪力の持ち主だったんですか!?
……まさか頭脳だけではなく、筋力もあったなんて……万能じゃないですか!」
「こんぐらい大人ならできて当然だ。それと、持ち上げてるんじゃなくて押したんだ。怪力じゃないだろ。ほら、さっさと行くぞ」
「あ、待ってください!速いです!」
宝物庫は、その名で呼ぶに相応しいほどに金ピカゴージャスだった。金箔か純金なのか……とにかく、壁が金色だ。この部屋には金塊や骨董品、絵画などが丁寧に並べられている。
ひとつだけ、並べられているというより飾られていると表現したほうがいい物があった。中央に石でできた台があり、そのくぼみに1つのオレンジが埋められている。
「これがオレンジ・ガーベラか……やばい、胃痛が……」
「だ、大丈夫ですか?早く取って戻りましょう」
「そうしてくれ……いや、そうしても治らない気もするが……その前にトイレ行ってもいいか?」
「吐きそうなんですね!?どうぞ行ってください!!」
19:10
「取りに行ったのは良いですが、まだお風呂に入ってませんでしたね……」
「全くだ。肌見放さず持っておきたいのに先に風呂に入らんとは、これいかに」
「ま、まぁ、ペンダントみたいに持って入れば万事解決です!」
「裸ペンダントか……悪くない」
「発言が変態です!!」
19:15
「私着替え持ってきてないぞ?」
「大丈夫です。そんなこともあろうかと、朱宮様に似合う服を用意しておきました」
「まじか、助かる」
服が用意されてるとわかった瞬間に入浴意欲が高まった。私は急いで脱衣所に入る。
「お風呂もすきなんですね……」
「あぁ……っ!」
「…?朱宮様?」
「……」
「か、鏡を見て固まってますね……どうすれば……」
「何かあったっすか?」
不思議な顔をしながら現れたのは緑色の髪の女性……
「紅輪!どうしてお風呂にいたんですか!?」
「……そりゃ、風呂に入るためっすよ。で、そちらの方は?」
「実は鏡を見た瞬間固まってしまって……」
「ふむふむ……」
紅輪は
時々、「ほうほう…」とか「まさか……」などが聞こえた気がしました。
「何かわかりましたか?」
「はい。こうすればよろしいかとっ!」
そう言いながら紅輪はバスタオルを広げて鏡を隠しました。…はて、これで解決するのでしょうか?
「……ハッ!」
「朱宮様!急に固まられて心配しましたよ。紅輪、ありがとう」
「いえいえ〜、お客様のためですし〜」
「……お前、好きな食べ物は?」
紅輪とやらはニヤリと笑い、「キュウリっす」と間髪入れずに答えた。
「ふぅん……まさかここで同族に会えるとは」
「確かに広い括りじゃそうかもっすけど、全然違いますよね?」
「あの〜、一体何の話を……?」
「おっと、すまんな。紅輪だったか?このことは感謝する。少し風呂でテンションが上がりすぎたようだ」
「困ったときはお互い様っすよ」
「この恩はいつか返すかもだ」
「期待せずに待ってますよ」
それだけ言い残して紅輪は脱衣所を去っていった。……あいつ、服着てないのに大丈夫か?
「河童みたいな奴だったな。もし河童が存在したらあんな奴なんだろう」
「名探偵でも知らないことあるんですね」
「そりゃあるさ。そもそも、河童にはあったことがないから、河童がどんなやつか知らん」
「そうですか。もしそういう妖怪とかがいるなら、狸にあってみたいですね」
「狸か……変わってるな。それより、さっさと入ろう」
「そうしましょうか」
するすると手慣れた手付きでどんどん脱いでいくローズ。脱いだ先にはまるでローズの心を表しているかのような、純白の下着が……。
「私は一体何を解説してるんだ……」
「?」
カポーン……
二人共桶を持ってないのに何故か桶の音が鳴る。音は上の方から聞こえた……。全く、風呂の描写を挟むタイミングを奪うなんて。
風呂は温泉のような見た目……というより、温泉なのだろう。微かに硫黄の匂いがする。
「何だこの音は?」
「アニメとかでおなじみの『カポーン』をリアルでもやりたかったのでドアが開くと同時に音源が再生される仕組みを……」
「金の無駄遣いだな。というか発想が厨二臭い」
「うぅ……そこまで言わなくてもいいじゃないですかぁ……」
「事実だからしょうがない。さて、まず髪でも洗うか……」
目の前にあったボトルに手を伸ばす。
「それはリンスです。ほら、そこに書いてるでしょう?シャンプーはこれです」
「すまん、見えなかった」
適量のシャンプーを手に乗せ、泡立てる。どうやらこれも高価なもののようで、めちゃくちゃ泡がふわふわしてる。
「あの……」
シャンプーで髪を洗いながらローズが話しかけてきた。
「どうした?シャンプーが目に入ったか?それとも私に見惚れていたのか?」
「いえ、違います。先程の会話についてなんですが……」
私は見惚れていたことを否定され少しショックを受けつつも答えた。
「世の中には知らんほうが良いこともある」
「朱宮様が言うなら間違いないですね。失礼しました」
「んや、別にいい。それと、さっきから何故私の胸を見てくる?」
「ハッ!いいい、いえ!べ、別に小さいけどキレイな形で触ってみたいなぁ……なんて思ってませんよ!?」
「なるほど、な……触らせるわけないだろ」
「わかってますよ!流石に!!――っわぁ!?」
興奮したからか前に乗り出しながら発言したこいつは、私の足に引っかかり、足を滑らせてきれいに顔からコケた。
その拍子にオレンジダイヤがカーリングストーンかのようにツルツルと滑っていき、温泉に見事にドボン。
「あぁ〜!肌身離れちゃいました!」
「……いや、ちゃんと肌身離れて良かったよ」
「……?何を言っているのですか?」
「演技する必要はないぞ?ローズ……いや、
怪盗『ネモフィラ』さん?」
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次回へ続く
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