当日~準備編~
書きたかった2
某日 8:40
「さて、ここがブラックライ家の家か」
私は今、ここが日本だということを忘れさせるほどに豪華な館……もとい、ブラックライ家の家の門の前にいる。
門も塀も、私の身長では登ることすら困難なほどに高く、どこか風格があるような綺麗さを保っている。別に私が小さくてみすぼらしいわけではない。
「門番は一人……女性だな」
女性だが体の芯のブレが一切ない。なにかしらの武術を極めたのだろうか……。
流石に怪盗もこいつを倒すことは出来ないだろう。まぁ、毒ガスやらなんやらがあれば話は別だが。
「お待ちしていましたわ、朱宮様。あら、キレイな日傘ですわね」
門を開けて出てきたのは、依頼主であり、ブラックライ家の令嬢、ローズ・ブラックライだ。彼女の筋力ではこの門を開けられないのか、手を汚したくないのか、門番が門の開け閉めをしている。
「待たせたな、ローズ・ブラックライさん。それと、日傘を褒めてくれてありがとう。大事な日傘なんだ」
「ローズで良いんですよ?というより、ローズと呼んでください。フルネームで呼ばれるのは恥ずかしいです」
顔を赤らめるローズ。どうやら本当に恥ずかしいようだ。フルネームが恥ずかしいのか、はたまた……
「じゃあ、お邪魔するぜ」
私は一歩屋敷に入る。レンガが敷き詰められた道の左右には花々が咲いていた。
「キレイな花だな。というか、この館自体がキレイなんだよな」
「そ、そんなに褒めてもらわなくても……」
またもや顔を赤らめるローズ。これは可愛い。……が、
「ローズ、キャラ変わったか?ネモフィラが変装でもしてるのか?」
「第一印象が大事ですので、先日は少し無理をしていたんです。この前みたいなほうが良かったかしら?」
「いや、無理はするな。今日のローズのほうがやりやすいし」
「そ、そうですか。そう言ってもらえると助かります」
そう言ってローズはもじもじしながら俯いた。耳も少し赤い。また何か恥ずかしいのか、暑いのか……。ま、どうでもいいや。
そうこうしてるうちに、玄関口についた。ずっしりとしていて存在感が強く、黄金の装飾が施されている扉……流石金持ちと言ったところか。
「では、中を案内させていただきます」
「ん、宜しく」
扉を開けると、玄関ホールになっていた。
目の前には大きな階段……よくゲームとかで見る屋敷を想像してくれればいい。大体そんな感じだ。
「吹き抜け、天井はガラス張り……アニメとかならあっこから逃げるのがお決まりかな」
「ですね。そう思って天井にも見張りがいます」
「まじか」
こいつ、アニメとか見るのかよ。意外と庶民に近いのかな。
「それではどんどん紹介していきますよー」
屋敷の構造をまとめると、ざっとこんな感じだ。
https://kakuyomu.jp/users/SPUR514/news/16817139555539326712
https://kakuyomu.jp/users/SPUR514/news/16817139555539370283
https://kakuyomu.jp/users/SPUR514/news/16817139555539431336
10:00
「休憩しよう。お前の部屋行ってもいいか?」
「もちろんです!間取り図を描いるときは入らず目視で大きさを確認しただけですもんね」
ローズは嬉しそうにしながら部屋へ案内してくれる。こうしてみると小動物の様で可愛い。
「ここが私の部屋です。って、知ってますよね」
「場所はな。じゃ、入らせてもらうぞ」
「はい」
取手を回し、扉を開く。開いた先には、女の子らしい部屋があった。
壁紙はピンク、枕元にウサギのぬいぐるみとでっかいくまさん人形、机にはライトノベル……ん?
「お貴族様もラノベ読むんだな」
「失礼ですね!ファンタジーも好きだから読んでいるのです。ラノベと本に違いはありません!」
「へぇ、つまり本が好きなんだな」
「はいっ!」
とても生き生きとした返事。どれほど本が好きなのかが伝わってくる。きっとあの大きな図書室の本も読んでいるんだろう。
「本が好きなのはわかった。が、何故こんな本を読んでいる?」
私はライトノベルを読んでいたことにも驚いたが、そのライトノベルは
「悪いですか?いいえ、悪いはずありません!今の時代LGBTQは当たり前です!それにこの本はお気に入りなんです!」
「いや、確かにLGBTQに関してはそうだし、お気に入りの本を馬鹿にしているつもりはない。
が、人が来るのを理解しておいてそのままこの本を机の上に置きっぱにしているのが問題なんだ」
「いえ、どんな反応をするのかと」
「ふむ……ではこういう反応をしよう。この作品では胸より尻に重点が置かれている。そしてこれを読んでいて、なおかつお気に入りということはローズ、尻派だな。どうせメイドさんの尻も見てるんだろ?」
「流石名探偵様!見事な推理です!それと、流石にメイドさんのは見てません!」
「ふっ、この調子で今日の夜も守って見せるさ。それより、昼飯食べたいんだが……」
「そうですね、お昼にしましょう」
15:00
「さて、そろそろ準備をしていくか」
「まだ準備してなかったんですか!?」
「いや、間取り描いたりローズの部屋見たり昼飯食べたりしただけじゃんか」
「ハッ!」
「意外と抜けてるんだな……それより、この館にいる人数、宝石の場所、その他諸々教えてくれ」
「了解しました。まず宝石の場所ですが、今は宝物庫にあります。このあと私が保持し、朱宮様と共にいるという流れになっています。」
「ふむ、責任重大で胃痛が始まったぞ」
「うっ…すみません、耐えてください。そして、
館にいる人の数ですが、まず門番さん二人が表と裏に一人ずつにわかれています。そして庭師さんが一人、メイドが2人、コックさんが一人です」
「両親は?」
「二人共海外で働いていて、家にはずっと帰ってきていません」
「……」
このとき、一瞬ローズがとても歪んだ笑みを浮かべていた様に見えたが、未だにそれが真実か見間違いかわかっていない。
「つまり私達を含めて館には八人か。全員女か?」
「はい。
表で朱宮様と私が見たのは門番の
たまたま見えなかったのですが、庭師は
「いちいち言い回しがおっさん臭い」
「なんかそのフレーズどっかで聞いたことある気が……」
「さぁ?朝起きたら主人公になってた的な作品かなんかしゃね?」
「かもですね」
「で、残りの人は?」
「えっと、
まず、コックの
で、メイドさんの二人ですが……」
ローズがメイドの説明をしようとした時、ドアがノックされた。
「お嬢様、お茶をお持ちいたしました」
「まぁ、ありがとう。メラレウカ」
ローズがドアを開けると、灰色の髪の女が入ってきた。
「ダージリンか」
「よく分かりましたね。それも推理ですか?」
「いや、私は鼻が良くてね。匂いでわかっただけだ」
「へぇ~。私は五感に関しては普通なので少し羨ましいです」
「普通が一番だよ。ホントに」
「そうですかね……あ、匂いといえば、今日も香水つけてるんですね。いい匂いです」
「ホントか?良かった」
「フフッ」
「?何かおかしいのか……?」
「いえ、こんなに喜ぶ朱宮様は初めて見たので。よほど香りを気にしているのですね」
「ま、そんなとこだ」
私はそう言いつつ、紅茶を一口飲む。
「美味い」
「それは先程話した白熊木さんが淹れてくれた紅茶なはずです」
「そうか。白熊木は良いやつなんだな」
「お、美味しいものが好きなんですね……」
「あぁ。ところで、そこのメイドよ。名前は?」
メイドは私の方を向き、お辞儀をしてから話し始めた。
「私はメラレウカと言います。主に清掃を担当しているメイドです」
「あぁ、私が聞きたかったのはフルネームなんだが…」
「あ、あの。メラレウカは私が子供の頃拾ってきたんです。だから、フルネームは……」
「そうなのか」
「はい。私はお嬢様がまだ7歳の頃に拾われました」
「年下に拾われた気分はどうだ?」
「ちょっ!朱宮様!?」
「最悪でした。下に見られているようで」
「メラレウカ!?」
「ですが、お嬢様は決して自分を下に見ず優しく接してくれました。
それだけでなく、こうして働く場も下さいました。お嬢様は私の恩人です」
「だってよ」
「め、メラレウカァ……」
……いい話だな?準備とは全く関係ないが、こういうのを見るのも悪くないかもしれん。
15:30
「……。お見苦しいところを見せてしまい、申し訳ございません」
未だに赤く腫れている目尻を抑え、申し訳無さそうにしているローズ。本心から誤っているんだろうな。ホントに素直な奴だ。
「いや、別に良い。それより、もうひとりのメイドについて教えてくれ」
「は、はい。
もうひとりは
たまに料理も手伝っているんですが生まれつき金属アレルギーらしく、フライパンを使う際とても苦労してるらしいです。でも、紅輪さんの中華料理は絶品なんですよ?」
「ほぅ…?さては良いやつだな?」
「ここにいる人は全員良い人ですよ」
「ふむ、全員料理が上手いのか」
「そういうつもりで言ったわけでは……」
「冗談だ。それより、メイドは両方呼び捨てかと思ったがメラレウカだけ呼び捨てということは、よほどあいつと仲がいいんだな」
「はい。清掃だけでなく、昔から私の相手もしてくれてるんです。私の自慢のお姉ちゃんです」
「お姉ちゃんか……それも良いな。欲しい」
「欲しいって……お姉ちゃん的存在がほしいなら私が……」
「結構です」
「!?」
その後も他愛のない話を6時頃まで続けるのだった。
――――――――――――――――――――――次回へ続く
次回は遂にネモフィラ登場!(多分)
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