第29話 下

 さて、キャンディだが順調に2回戦も勝利、3回戦も勝利。準々決勝も勝利、準決勝も勝利した。


 こいつ、俺いるかね? 前から思ってたんだが、俺が一々指導する必要無いんじゃない? だって、勝手に他者の技術模倣してくやん。無茶苦茶やろ。


「もう、ウィルが出歩いてたから席埋まっちゃったよ」

「ごめんごめん」



 ウィルとメンメンは先ほどまで遠くの席に居たが、俺達のちょっと前の席に移動をしていた。カーミラ商会と話している間に、ウィルが座っていたメンメンの隣の席が埋まってしまったらしい。


 だから、二人で隣同士で座れる場所に移動したのだ。それがまさか、俺の前とは……クソ、恨むぜ



「ウィル、このポテト美味しいよ。あーん」

「あーん」



 おいおい、俺の前で何をしてるんだい?


「バン、ポテトあげる」

「あ、どうも」

「あ、あーんしてあげるわ」



 ポテトが美味い。でも、ウィルは許さん……。などと思っていたらウィルの隣にテッシーが座った。


「おー、ウィル。居るんやろ?」

「テッシー君!」

「隣ええか?」

「勿論だよ」


  ウィルとテッシーが並ぶ。おいおいウィルの隣のメンメンちゃんはどうするんだい?


「……テッシー君は勇者ダンが好きなんだよね?」

「せやな」

「実は……勇者ダンについて、僕はある重要な事実に気付いてしまったんだけど……それを言える人が居なくて……これは勇者が好きな男性の意見を聞くのがきっと良いと思ってたんだけど」

「あ、そうなん? なんか面白うやから聞いてもええけど……隣で魔力が高ぶってる子はどうするん?」

「……もう、ウィル! 私だって聞くよ」

「うん! なら聞いて欲しい!」



 ほぉ、俺に対する新たな事実ね……そう言われるとちょっと気になる所だ。


「え? ダンの新たな説ですって?」

「勇者君の新たな事実……」

「気になる……」



 隣の3人も流石に気になっているようだ。ウィルはごくりと唾を飲んでからゆっくりと語りだした。



「勇者ダンってさ……凄く、しもが大きいんだ」

「あ、そうなん……。それでそれがなんなん?」

「ちょ、それ、わ、私の前で言う?」



 なぜ、それをそんな大事おおごとのようにウィルは言っているんだ。というかそもそも何故それを知って……湖で汗を流した時か。


「え? 勇者君って大きいの?」

「知らなかった……でも、なぜそれを知ってる?」

「だ、ダンって、大きかったのね」


 タオルで顔を巻いている元パーティーメンバーが、隣で俺の下が大きい話を聞いていて、その反応を見せられているって……


「前に偶々水浴びをしてたら、偶然遭遇して目撃をしたんだけど……まぁ、それでね。下が大きいことについてなんだけど……勇者ダンと言えば最も平和を願っている存在なのは周知の事実だよね。度重なる激闘によって体はその戦闘に耐えられるように進化し、強くなる敵に適応をしていった。人間の体には適応能力があるよね? 彼の体は正しく、強さの、いや、彼自身の平和の願いの為に最適化されて言ったんだと思う。彼の思いが彼を強くした……」

「おぉ、なんかエエこと言っとるやないか」

「ウィルって本当に勇者ダン好きだよね」

「それで、その話から導かれるのは彼の平和の願いが下半身に宿ったって事なんだけど」

「急にしょうもなくなったやん」


 俺も前者の話だけ、聞きたかったな。


「別にふざけてるわけじゃないよ。僕はいたって真剣に下の話をしてる。言ったでしょ。勇者ダンは平和を願っているんだ。それこそ、ずっと先を見据えてる……だから、彼の体は未来の為に子孫を残す体にも最適化されてるんじゃないかなって思ってるんだ。じゃなきゃ、あの大きさには説明が出来ない」

「そんな……デカいん? 勇者の奴は」

「デカイ。初めて見た時、ビビったよ……でも、本当に凄いと思う。世界で一番だと思う。形も気品があると言うか……これも子孫を残すために最適な形に……」

「ウィル……何を真面目な顔で語っとんねん。お前、変人やったん?」

「僕は真剣だよ?」

「あ、変人やわ」

「も、もうウィル! 私の前でそう言う話をしないでよ!!!」

「あ、ごめん。ポテト食べてたし、食事中にする話じゃなかったよね」

「もっと根本的な問題なんだけど! 私、女性だから!! そう言う話慣れてないの!!」



 おいおい、ウィルって偶に変だよな……本当に変だ。確かに自分でも大きいと思うし、言いたくはないが性欲もかなり多いとは思う……。でも、性欲が多いのは普通だろう。


 旅をしてたら徐々に大きくはなったのは確かだが……元々大きかったし。成長期的な問題と筋トレして筋肉が付いたからデカくなると言う前世知識とか……そんな理由だと思うんだけどね。



「……ま、まぁ、僕はそう言う話興味ないかな」(え? 勇者君って、そんなに大きいの? しかも形も……え、ど、どうしよう。僕と結婚したら営みとかあるし……勇者君、昔から体力お化けだから……か、体持つかな……?)



 サクラは全然興味ない感じを出している。まぁ、他人の下とか興味出ないよな。



「……計画が狂う」(……どうしよう、わたしの勇者を酒を飲ませて押し倒した後、耳舐めをしつつ言葉攻めして、その上で勇者をひーひー言わせる計画が……これは逆にわたしが勇者にひーひー言わされるパターンになるかも。でも、それならそれでいい)


 カグヤは何を言っているのか、分からない。子供だからね。意味をなさない事も行ってしまう時があるだろう、しょうがない。


「ふ、ふーん。興味ないわね。ば、バンはそう言う話興味あるのかしら?」(だ、ダンって、そんなに大きいの!? てっきり仮面のしたに自信ないから、てっきりそっちの仮面の下も自信ないのかと思ってたけど……)



 リンは顔を真っ赤にしている。あぁ、昔と変わらず初心なのか。


「まぁ、人並みですかね」

「そ、そう」(あんまり自信がないって感じの反応じゃない。もし、勇者ダンの素顔がイケメンとか誰か言ったら曇り顔したり、顔のことについて聞いたら凄いしょんぼりした顔するのに……って事は否定する理由はないって事!? とんでもなく大きいのは真実って事なんだ!?)



 あ、決勝始まる。キャンディ頑張れー






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