第6話 ウィル2

 勇者ダンと無垢な少年ウィルの訓練は早朝から始まる。七日に一回しかないこの訓練は否が応でもウィルは気合が入った。


「はっ!!」

「……遅い。もっと速くしろ」

「あ”い”!!!」



 過呼吸になるほどに彼は動いていたので返事が重くなってしまった。しかし、対照的にダンは涼しい顔、正確には顔は見えないが涼し気に剣を振っていた。



「足を地面に全てつけるな、動き出しが遅くなる。つま先だけで立て」

「……あぁい!!」



 フラフラになるほどに彼は勇者ダンにこってりしごかれた。咳き込み口には少し血の味が広がる。地面に尻を付けると勇者からウィルに水筒が渡される。お礼を言う前にそれに口を付けて、ごくごくと飲み干す。


「はぁ、はぁ、あ、ありがとうございます……」

「これも食え」



 勇者はハチミツで和えた甘しょっぱい鳥肉が入った弁当を渡した。体つくりの為にバーバードと言う鳥型のモンスターの胸肉を料理して持ってきたのだ。


「あ、ありがとうございます」

「……礼はいいから食え。喰らえ、ゴールデンタイムだ」

「ご、ゴールデンタイム?」

「そうか、知らないのか」

「知りません。ゴールデンタイムとは一体?」

「いいから食え。喰いながら説明してやる」



 前世では一般的であった体を作る知識。それをウィルは知らないようであった。それも当然である。勇者ダンの持つ知識は異世界の科学が発展した世界での知識。分かるはずもない。



 ゴールデンタイム、運動をした後の30分間は食べ物の栄養を効率よく得ることが出来るというのをざっくり説明する。



「す、すごい、そんな知識聞いたことないです!」

「いいから食え」



 未だに残っているチキンを早く食べろと急かすダン。ウィルからしたら目から鱗であるが、ダンからしたらずっと日常でやってきた事。幼い時から積み重ねてきた事なのだ。


 それにダンはもう、褒め慣れている。凄いと言われて嬉しいという気持ちがないわけではないが、そもそも自身が生み出した知識でもないわけであるし、そんなに響かない。



 食べ終わるとウィルは語りだした、彼の顔は少し暗い。



「あの、僕に本当に勇者様の後継者が務まるのでしょうか?」

「どうした」

「その、僕、勇者様と一か月訓練させてもらいましたけど……そんなに伸びている実感がないというか……。僕の幼馴染にダイヤと言う子が居るんですけど、彼は魔法も第三階梯まで使えて将来は勇者になるって言ってます」

「それで?」

「僕よりも凄い人は沢山いて……だから、その」

「自信が無いのか?」

「はい……」



 ウィルは自信がない。しかも極度のあがり症であった。だから、周りと自身を直ぐに比べてしまう癖があった。勇者に訓練を受けているのに彼は未だに成長を感じられない、そのことも原因で自身を余計に攻めてしまった。


 勇者と言う英雄に訓練をして貰っているのにあまり成長できない自分。これは自分があまりに才能がないからではないのではないか。教えに悪い所があろうはずはない。

 なぜなら勇者ダンが教えているのだから。


 何度も何度も彼はそれを思った。更には最近、勇者が居なくても修行を頑張っているウィルなのだが、その姿をみたダイヤと言う幼馴染の取り巻きから、


『意味ないって』

『ダイヤには勝てないから』


 そう言われて、それがずっとささくれのように心にあったのだ。



「お前を見込んだのは俺だ。俺に間違いはあり得ない。間違いなくお前は伸びる」

「……本当に」

「くどいな。俺が見込んだと言っているだろう。それともお前は俺の言葉より、自分の不安を信用するのか?」

「い、いえ! そ、そんなことは……」

「伸びているは間違いない。




(計算、通り? 本当に……?)



 ウィルはちょっとだけ勇者を疑ってしまった。そして、早朝の訓練を終えて彼は一度、村の中で家の手伝いをしている。今は冬に近いので巻割とかをして家族の為にも時間を費やした。



「ウィル」

「あ、メンメン」

「浮かない顔してどうしたの?」



 ウィルが薪を割っていると彼の幼馴染でるメンメンが声をかけた。黄色の髪の毛に薄い青の瞳の可愛らしい少女だ。彼女はいつも一緒に居るウィルの顔つきがおかしい事に気付いていたので声をかけたのだ。



「えっと、なんでもない」

「また誰かに嫌味言われたの? 勇者にはなれないとか」

「……いや、そんなことはないけど」

「嘘、そんな顔してる」

「本当に違うよ。ただ……」



(ただ、自分の成長が実感できなくて、更に勇者様を疑ってしまう自分にも嫌になってるだけ……)



「ウィルはきっと大成するよ。私、信じてるから」

「うん。ありあと。でも、きっとダイヤの方が……」

「もう! ウィルはウィル! ダイヤはダイヤ! 関係ないよ!」

「……だよね」



(響かない……。こんなに親身になって気にかけてくれるメンメンの事も僕は疑っているのか)



――落ち込みかけた時、また自分を責めた時、村の中で大声が響いた。



「大変だぁ!! モンスターが現れた!!」



 村の羊飼いの人の声がして、そこから村中が大騒ぎだ。


「ど、どうしよう、ウィル」

「す、すぐに討伐をしに僕も」

「ウィル! 何言っているの! ウィルは今まで 



 声が聞こえる。確かに自身は今まで一度もモンスターと戦った事はない、しかも上がり症で行ったとしても役立たずになることは予測できた。



「ダイヤが討伐に出てくれるってよ!」

「大人たちと一緒に行くらしい!」

「流石はダイヤだ!」



 声が聞こえる。声が聞こえる。声が聞こえる、それが頭の中に木霊する。



「勇者様……」

「ウィル?」

「先に隠れてて!」



 彼は走った。きっとまだ勇者は居るのだろう。今日は自信を鍛えてくれる日なのだから、お昼が終わっても訓練をする約束をした。


 だから、彼にお願いをしよう。村を守ってくれと


 走って走って、辿り着いたところに鉄仮面を被った勇者が居た。



「あ、あの――」

「――俺がやるか?」




 身の毛のよだつとはこのことだった。自身は今試されている。そう感じてしまった。



「ぼ、僕が行っても、どうせ役に立たないし……もし、僕のせいで被害出たら」

「大丈夫だ、安心しろ。俺が少し遠くで見ててやる。何かあっても俺が一瞬で塵にしてやる、だから、被害は出ない」


 ――勇者は逃げる言い訳を許さない。


「……ぼ、僕にできるのでしょうか?」

「やれる。お前は俺が育てた。一か月しかじゃない、一か月もだ」


(もし、これで僕が全然ダメな動きをしたらこの人も見限ってしまうのだろうか)



「僕がもし、全然使い物にならなかったら」

「また鍛えるだけだ」

「……」

「十年待ってやる。例え芽が出なくてもな。如何にお前が弱くても必ずここにきてお前の自信が付いて強くなれるまで。だから戦え」

「――ッ」



(十年、この人は僕に十年も与えるのかッ!? この威圧、覇気、嘘じゃないッ)



 『戦え』そう言って勇者は彼に古びた剣を投げた。グリップは赤の布が巻かれているが所々破れていて、刀身も刃こぼれしている。だが、その剣には見覚えがあった。

 似たような剣はされどあるが勇者から渡される剣はたった一つしかない。


「こ、これって……ッ」

「そんなことはどうでもいいから速く行け。そして見せて見ろ。お前の成長を。安心しろ。俺が後ろで立っている、実質無敵だ」




(確かに、この人が、勇者ダンが後ろに居てくれるなら……無敵と言うも間違いじゃない)




 勇者はウィルの背中を強めに押した。



「行け、そして戦え」

「は、はい。やってみます!」




 緊張をして震えながらも彼は走り出した。ウィルが走った後にダンは気の抜けた声を漏らした。



「ようやく行ったか。……まぁ、ゴブリン二体くらい討伐してよくやったみたいな感じで褒めてやればいいか……」



「自信つけろよ。お前それなりには出来るからさ」




◆◆



 戦場に焦げた匂いが充満している。炎の魔法やモンスターを火で焼いた匂いである。それが村の中まで匂っている。

 村の外にはゴブリンが百体ほどいて、村の大人とそこにダイヤと言う少年が混じって戦っている。魔法を行使して戦い、それを少し遠くから村を守護する大人、ウィルと同年代のある程度戦える子達が見ている。


 彼らが村の最後の砦なのだ。



 村の小さい子や女性は隠れている。しかし、メンメンだけはウィルを探して隠れずに外に出ていた。



「あ、あの、ウィルを知りませんか?」

「メンメン隠れてろ!」

「で、でもウィルが」

「ウィルならどっかにビビッて隠れてるんだろ」




 一人の青年がそう言った。そんなことはないと言いたい彼女であったが、言い返せなかった。


 だが、ふいにとある場所に眼が行った。ゴブリンとの戦いの本当に一番端、そこに見知った黒髪の男の子がいたのだ。



「ウィル!? なにやってるの!?」



 彼は弱かった、それを知っていた彼女は彼を呼び戻そうと声を上げた。しかし、それは届かなかった。彼女は村から飛びだして彼の元に急ぐ。



 ウィルにゴブリンと戦う力はないと知っていたから。現に遠めであるが彼が震えているのが見えた。彼が臆病であることもあがり症である事も知っている。彼を放っては置けなかった。



 戦場の中、その端にウィルは居た。震える体を抑えて剣を抜く。



(落ち着け落ち着け、まずは落ち着け!!)




 緑色の異形の塊、手足の本数も生えている場所も同じだが顔つきが妙に気味が悪い。牙は鋭く、鼻が汚い。単純に気持ちが悪くて怖かったと彼は思う。



「ぐあぁあ!!」

「うわぁぁぁ!!!」




(あれ? 思ったより、遅い……?)




 咆哮に咆哮で返して斬った。最初にゴブリンの腕を剣で飛ばした。初めて戦場での血を見た。それは確かに驚きと気味の悪さがあった。しかし、もっと違和感を感じたのは自分だ。



(なんだ、これ?)



 体は緊張をしている、あがり症である事も自覚して、今も体が思ったよりも動かない。


――そう、思ったより動かなくてこれなのかと彼は驚愕をした。



「……本当に出来るのか?」



 彼の言葉に応えるように廃れた、刃こぼれをした剣が太陽の光に反射して一瞬だけ光った。



「首を斬れば……」



 首を斬った、それで終わった。ウィルは初めてモンスターを討伐したのだ。



 筋力的にも総合的も彼は以前よりも強くなった。唯一、欠点があったとすれば勇者以外との戦闘をしていなかったので、初めての恐怖があったという事だけだ。



 しかし、それも今、この瞬間彼は知った。恐怖を知った。そして、悟った。



(――勇者ダンより、全然遅い……)



 当然の結論の帰結。魔王すら片手でワンパンする男が手加減をしていたとはいえ一か月、教え込んだのだ。ゴブリン程度、どうとでもなる。



(落ち着け落ち着け、思い出せ。僕は誰に剣を習った? 誰から教えを受けた?)



(勇者ダンだろ……!! なら、この程度の敵なんて!)



(戦場を翔けろ。魅せろ。あの人に……)



(僕が後継者になるって!!!!)




 彼は走った、その時、目の端に鉄仮面を被った男の姿が見えた。まるでもっと高みに行けるはずだと分かっているかのように、傍観していた。ウィルは見ていてくださいと思い、彼は再び剣を振る。



「ダイヤか?」



 戦う大人の誰かがそう言った。ゴブリンを斬る姿に村で一番強い青年を幻想したのだ。しかし、そこにはダイヤではなく、未だ、緊張した表情でゴブリンを斬るウィルが居たのだ。



「大丈夫だ、行ける、僕は行ける。行ける行ける行ける、斬れキれキレ、斬れ。魅せろ魅せろ」




 ぶつぶつ独り言を吐きながら緊張を常に表に出しながら彼は戦っていた。その剣技にダイヤは、村一番の才溢れる青年は眼を疑った。



「誰だよ、お前……?」



 その疑問に誰も答えない。ダイヤに振り向きも意識もせず、ウィルは走り続ける。



「はぁはぁはぁ……まだいけるまだいけるまだいける……まだ?」



 気付いたらもう、モンスターは居なかった。ウィルの白の服は真っ赤に染まっていて、彼は十二体のゴブリンを斬っていた。



 唖然とする空気が流れた、遠くで見守る者も狐につままれたようにウィルを見ていた。


 彼を呼び戻そうと村から飛び出したメンメンも口をあんぐり開けて、棒立ちしていた。この後、何がどうなったのかと色々問い詰めてやろうと彼女は思った。


 もう、全て終わったわけなのだからと思ったその時、彼女の足元からゴブリンが沸いた。死んだふりをして人が来るのを待っていたのだ。



「炎の使途よ・鮮血に――」



 村一番の青年が魔法の詠唱を始める。間に合うのか分からない距離と、メンメンが襲われるまでの時間。誰も間に合わない、弓矢ですらもう、構えて引いて打つまで時間がかかる。



 それをウィルも見ていた。幼馴染が食われそうな瞬間を――



――その時、彼の中で記憶が弾けた。


 嘗てウィルの読んだ英雄譚にはこう綴られていた。勇者ダンは魔法が全く使えない時期があった。そんな時、手の届かない人を救うため、彼が使った一つの秘儀がある。


 弓矢も持ち合わせていない彼が遠くの人を救った、その方法は――




「――投剣オーバーフロー



 小声で呟いて、ウィルが誰よりも先に剣を投げた。そして、手を届かせた。


 先ほどまでウィルは緊張をしていた。ぶつぶつ小言を吐いて、不安を出して自身の平静を保っていたのだ。ゴブリンを十二体斬った時も切り終えた時もずっと体は本来の力を出していなかった。



 しかし、今、誰かが襲われる瞬間、彼の中の正義が緊張や不安、恐怖、混乱。それら全てを追い越した。最早息をするように彼は手を伸ばしていたのだ。



 ――グシャ



 ゴブリンの顔に剣が刺さった。鈍い音がして血が舞った、メンメンの顔や服に血がかかる。その時、メンメンはウィルの顔を見てまたしても唖然とした。



 全てがそがれた一瞬の煌めきの表情とでもいうべきか。今まで一度も見た事のない幼馴染の顔だった。



 誰もが信じられないモノを見たような顔つきになる。ウィルは自身の見た、読んだ、感じた勇者ダンの存在から彼は救いを勝ち取った。


 所詮真似事と言えばそうかもしれない。だが、それは俗にいう、英雄譚の一片に彼らは見えてしまったのだろう。



「あ、あれ? 僕……」

「ウィル! ウィル! 凄い凄い! ありがとう!!」



 メンメンが走ってきて彼に駆け寄る、ウィルも彼女も血まみれだ。そして、周りは彼の飛躍に百面相をした。


「おいおい、ウィルか?」

「嘘だろ」

「あり得ない……」

「最後の投げた剣、あれなんだよ!?」


「おおおおおお!!!! やるじゃねぇか!!」

「見直したぞ!!」

「なんだよ、あんな奴が!!」



感激する者、驚愕する者、畏怖する者、そして嫉妬する者。様々だった、辺り一面に広がる声がウィルを包む。


しかし、ウィルにはその声による音は一切聞こえていなかった。



ウィルがとある場所にいる鉄仮面の男を見る、反対に鉄仮面の男もウィルを見ていた。勇者は何も言わない。ただ、彼を見ているだけだ。



しかし、それだけなのに、ウィルにはこの世界に自分と彼しかいないような不思議な感覚を覚えてしまった。



何も言わないし、ジェスチャーもない。それでも勇者が自身を褒めてくれていることは何となく分かった。そして、それを感じたことを悟ったのか、勇者は背を向けてどこかへ歩いて行った。



(もしかして……もう会えない!?)



 咄嗟にそんな事を思った、何処かに行ってしまう勇者に対して永遠の別れのように感じてしまった。



 メンメンや村の大人達を避けて、彼は走る。走って走って、誰も見えなくなった時、勇者の背に彼は追いついた。肩で息をしてウィルは止まる、呼応するように勇者の足も止まった。



「あ、あの」

「よくやった」

「――ッ」

「計算通りだがな……言ったはずだ。俺が見込んだとな」



 ――勇者ダンに初めて褒められた。


 彼は嗤いながら泣いて、拳を握った。


「あ、あのこれからも教えて貰えんですよね?」

「当然だろ。だが、今日は休め」

「は、はい!」

「……それとそうだな。何か褒美をやる。何が欲しい?」

「えっと……な、七日に一回の訓練を――」

「――それは無理だ。他のにしろ」

「で、でしたらこの剣、ももも、貰ってもいいですか!?」

「良いだろう。勝手に使え」

「は、はい! ありがとうございます! あ、あと僕勇者様のこと、疑ってしまってて……」

「ほう、俺を疑うか……。まるで神を疑う信教者のようだな」

「で、ですよね! 本当にすいませんでした、これからお願いします!」

「あぁ、分かった」



 ウィルが頭を下げると勇者はまた歩いて去って行った。ここから彼とウィルの物語は本当に始まったのかもしれない。



◆◆



 いやー、思ったよりウィルが凄いんだが……。あ、あれ? 一、二体討伐して、よくやったな? これからも頑張ろうなくらいに考えたのに……十三体討伐しちゃったよ。


 しかもアイツあがり症だろ?


 後半どうした? 最高にイキってなかった? 最後の投げる奴、なにあれ? 誰に習ったの?


 凄い良い感じに戦績伸ばしていったからさ。俺の出番無かったし、本当はどっかで参戦してサポートしてやるかと考えたけどそれも必要なかったな。



 あとウィルに渡したあの剣も別に俺のじゃないしな。骨董品やで買ってそれっぽく加工しただけなんだ。だって、本物の始まりの剣は父にあげちゃったし。プロ野球選手も最初のボールは恩師にあげるとか言うからさ。


 だから、あれ、始まりの剣じゃないんだよね。敢えて石に叩きつけて刃こぼれさせたり、グリップ巻いて、数回素振りして削った偽物。ウィルは俺のファンらしいからあげたらやる気でるかなって思っただけなんだよね……。


「あ、あの」


 色々考えたらウィルが追いつて来た。


「よくやった」

「――ッ」

「計算通りだがな……言ったはずだ。俺が見込んだとな」


 ウィルの活躍は全然予想通りじゃないし、思った以上に凄かったけど全部分かってました感だそう……。



 やっぱり師匠として尊敬されておかないといけないからさ。最初はノリで、最近もノリだったけどずっと才能あるって言っちゃたしね。俺様キャラだし、いや予想よりすごかったって言うのも……無理だな。



 まぁ、後はまだまだ調子に乗るなよ。図に乗るな、これからだという意味合いも込めて、予想通りだったという事にしておこう。


 でも、大したもんだよ。褒美に願いを叶えてやろう。



「……それとそうだな。何か褒美をやる。何が欲しい?」

「えっと……な、七日に一回の訓練を――」

「――それは無理だ。他のにしろ」


 それは俺の力を大幅に超えた願いだ、諦めろ。お前以外にも声はかけているからね。ダメだね。



 え? 剣が欲しい。あげるあげる、別にいらないし、あと俺中古品好きじゃないんだよね、誰が使ったか分からないし。汚そう。



「うわぁぁ、これが始まりの剣。改めてみると年季入ってるなぁ……舐めたりしても良いかな……」

「やめろ」



 どんなおっさんが使ってかも分からないからやめておけ。

 

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