第8話 単独戦闘

その時は来た。


そろそろ最後の仕上げとなる時だった。


明日の早朝にてっぺんに機械神を信仰する印を設置する作業の前日の夜。


突如としてロボットが動き出した。


「これは……」


「ま、不味い!!退避!!退避〜!!」


壁が崩れ、天井に穴が空いた。


「とんだ……」


「あの方向は……遂にかの暴虐な魔物を倒しに行ってくれるのですね!!」


飛び去ったロボットは途中で光る一筋の光を回収すると勢い良く飛び去った。


ここから歴史的な戦闘が始まるのだと市民は沸き立ち、今夜は眠れない夜になりそうだと理解した……





***





【機体の操縦については合格点ですね】


「何日練習したと思ってんだ?」


【5ヶ月です】


「真面目に答えるね……っとそろそろか」


コックピットに目的地が映し出された。


拡大望遠に例の魔物がブレがあるが映った。


「居た……」


【今夜も飽きずに襲撃ですか。執着質ですね】


「さて、いっちょやるかぁ!!」


【2番格納ブレード展開】


背中から箱型の鞘がアームに吊られて腰へと移った。


そして、近づいてくる俺の気配に釣られてか魔物が一斉にこっちへと走ってきた。


「行くぞ。抜刀」


【―抜刀―】


抜き放たれた剣は光り輝き、月明かりにより背景に隠れた。


魔物はもう既に目と鼻の先。


「スゥー……ハァ〜…………ッ!!」


目をカッと見開くと一閃。目で追えない程の速さで剣が振られた。


すると目と鼻の先まで来ていた魔物が崩れ落ち、断面から血液を垂れ流した。


それに驚いた魔物達は一度距離を置くように急停止し、引いた。


「来いよ……次は誰だ?」


剣の切っ先にだけこびり付いていた血液が振り払われた。


これが、戦闘開始の合図となった……





***





「………ッ!」


場所は変わって遠く離れた森。


魔物達が襲撃の準備をしていた場所からすぐ近くだ。


王都の近くは平野が続き、そして突然高い山があるような感じの地形をしている。


その山から魔法が付与されたガラスを手にして遠くから突如現れたロボット……HBMヒューマンバトルメックを監視していた。


「……早い。剣筋が追えなかった」


あの一閃をした場面がガラスに映る。


魔物が崩れ落ち、断面から血液が流れた。


「前後で厚みが違う?剣が触れた場所から遠くをどうやって……」


注視したのは切断された魔物の断面。


剣が当たった場所より先すらも切られており、まるで見えない剣先があるかのように感じた。


「始まった……魔物を一定の距離まで引き寄せてから切る待ちの姿勢か……」


一振りで何十匹もの魔物が宙を舞う。


赤い月を照らすように赤い血が。


黒い月を真似したように黒い肉が。


魔法ではなく、一本の剣によって描かれる芸術の作業を目の当たりしているかのように見惚れた。


何もない所に色が次々と塗られ、変わり、出来上がる。


それは戦場とゆうよりは、虐殺を終えた跡。


酷く美しい芸術だった……

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