第4話 家族

突然頭の中で声が聞こえた。


【マスタープランXの強い意識を感じ、高周波数帯域での広範囲呼び掛けでお声を届けさせて頂いております。現場の状況の説明を行ってください】


(マスタープランX?まあいい!それより、意識不明の重症が一人居る!そして、謎の攻撃を受けた!!)


【現場の状況について理解しました。マルチロールHBMをそちらの直上に転送させます】


(いや、待て。ここは住宅街だ。どの程度のサイズを転送させるんだ!?)


【サイズは6m。内部コックピット式マルチロールHBMです。また、空間飛翔能力を保有しておりますので、安全に着地させます】


(わかった、早く頼む!)


【了解。指定座標へ緊急大型物質テレポートを開始。転送まで、5…4…3…2…1…0】


そして、月が見える空が歪み空間から大きな物体が中から出てきた。


それは月明かりに照らされ、機械の天使みたいにその空間に漂うロボットだった。


(す、スゲェ……)


真っ白な装甲に包まれた機械の頭部がこちらを向いた。


興奮しすぎて我も忘れてキャッキャと喜んでいると突然父が祈りだした。


「ああ、機械神よ。どうか我等をお助けたまえ……」


(そうだった!そこの女性の治療を頼む!!)


そう頭の中で指示を出すと機械の背から何かが飛び出してきた。


そして、母の近くへと来ると青いレーザーのような物で母を照らし、治していった。


「ああ!ありがとうございます!ありがとうございます!!」


父が土下座をして飛んできた小さな機械ドローンへと感謝する。


【応急処置完了しました。しかし、一度に多くの血液を失ったので約一ヶ月は安静にする余地があります】


(わかった。ありがとう…)


【いえ、感謝を述べるのはこちらの方ですマスタープランX……いいえ、マスター】


(え?それはどういう……)


答えを聞こうと思ったら突如として力を失ったかのようにロボットが地面へと落ちてズドンッ!と大きな衝撃と共に倒れた。


(え?なんで!?おい、どうした!?)


【安心してください。HBMの下には生体反応はありませんでした】


(いや、ロボット……HBMと言うのか?)


【はい】


(それがなんで突然倒れたんだ!?)


【現在HBMは全種類エネルギーを枯渇しており、太陽光発電システムによる蓄電でここ2400年を過ごしてきました。そこで、貴方様がお目覚めになられ、緊急の自体のようなので蓄電していたエネルギーで他へ供給可能なエネルギー全てを緊急大型物質テレポート。そして、貴方様の母上の治療に飛翔エネルギー等のコスト問題により発電を開始させる電力すらも枯渇しそうになった為飛翔を止め、最低電力での発電へと移りました】


(………?)


ヤベェ、突然専門的な事を言い出したからまったくわかんねぇ……


【つまり疲れたので死んだように寝るって事です】


(なるほど)


つまり徹夜明けの社会人みたいな感じか。


さて、こっからどうするか……ん?


(そういえばなんでこっちのドローンは動いてるんだ?)


【こちらのドローンはフル充電なので中継用として確保致しました。これからここで貴方様のサポートを致します】


(なるほど?)


まあ、わけわからんけどなんかフル充電してるんで大丈夫って事か。


(それで、これからどうすれば良い?)


【これからは周囲を偵察し、安全を確保したらこの家の修復作業を開始致します】


(了解。気を付けて)


【ご心配ありがとうございます。では】


そう言いドローンは空へと飛び去り、居なくなった。


すると父がハッと我に返り、俺を抱き締めてきた。


「大丈夫か!?傷は……一つも無いか。……泣いてくれたんだな」


(そりゃ泣くよ……人なんだから)


「実はな、俺はお前の事少し怖かった」


父が話し始めて俺を抱っこした。


「夜中に泣きもせず。爆発音が聞こえてもすぐに慣れて泣き止んだ。俺よりも強い子だと思っていたが……どこかで悪魔の子なんかじゃないかと思っていた」


(そりゃそうだ。俺だってもしそうなったらそう思う)


「でも、お前は泣いてくれた。機械神もお前に何もせず飛び去った。安心したし、それと同時に後悔してる」


(後悔?)


父がそう言うと目に涙を浮かべて震えた唇で息を詰まらせながら吸った。


そして、また話し始めた。


(お前を……悪魔の子だと思って……)


そして、遂に泣き出した。


手も震えている。


(……そんなに思ってくれてるなんて思いもしなかったよ。お父さん)


お父さんに手を伸ばした。


冷たい涙が伝う頬に強く手を押さえ付けた。


お父さんはそれに驚いたのかほおけた顔をしたが、俺の手を握ると嬉しそうに泣き始めた。


俺も、頬に涙が伝った。


「……あなた?」


「ッ!?メリー!!」


(お母さん!!)


突然目を覚ましたお母さんにびっくりしたが、安堵の気持ちが心を染める。


「メリー……死んだかと思ったよ……」


「私も……死んでしまったと思ったわ」


「ああ……メリー……本当に……本当に良かった……!」


「私もよ……あなたとその子が生きていてくれて……」


(抱き合うお二人方。強く抱きしめるのは良いんだが……その……俺が苦しイタタタタッ!?)


「「あ」」


お二人の愛に挟まれてその強さに気絶したとさ。


ちなみにあのあとドローンにしっかりと起こして貰った。その後は家は治り、ドローンも住み着き。お二人の激しい夜に若干引きながら……俺は5歳の誕生日を迎えた。

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