第4話新人の仕事
総務課全員が二日酔いだった。
酒が抜けるまでの午前中は、みんなマスクをしている。息が酒臭いからだ。
隣の福祉課の連中も数名マスクをしていた。
山内が戸川に仕事を教えている。
「戸川君、町営住宅の家賃を滞納している住民に電話を掛けてみようか?」
「はい」
戸川は名簿を見ながら、電話した。
「もしもし、町役場の戸川といいます。家賃の件でお電話しました。田所さんは3ヶ月ぶん家賃を滞納されてますが、今週中にお支払出来ませんか?」
『はぁ~、町営住宅だろ?金がねえからここ住んでるだよ!たかだか。3ヶ月で電話すんなよ!』
「しかし、家賃は家賃なので田所さん」
『うるせー、お前じゃ話しにならねぇ、責任者だせっ』
「山内さん、責任者出せって言ってますよ!」
「ま、見ときなさい」
「もしもし、お電話代わりました。田所さんいつも、お世話になってます」
『で、あんたは滞納を認めてくれるかい?』
「家賃1ヶ月分でも払って頂けないでしょうか?このままですと、強制退去になりますが」
『……強制退去?……それは困るなー。1ヶ月分でいいかい?』
「はい」
『じゃ、役場に払いに行くよ』
「宜しくお願いします」
「ま、こんな感じだ!払え払えじゃ、話が進まないんだ。逃げ道を作ってやるんだ。はい、2件目行こうか?」
その日は、戸川は20件対応した。
朝イチの田所は、会計課で3ヶ月分払ったそうだ。
昼から、町営住宅に住みたいおばあさんを連れて内見の手伝いをした。
戸川はヘトヘトになり、業務終了のチャイムを待った。
チャイムと同時に、戸川は帰って行った。
その頃、前園課長と堀係長は建設課の佐藤課長を老舗料亭『みち潮』連れて行く段取りをしていた。
3人は個室で焼酎を飲みながら何やら話しこんでいた。
「佐藤課長、まさか談合に関与はしていませんよね?」
「……前園君、面白い事をいうじゃないか?」
「警察で捜査してもらってもいいんですか?」
佐藤は顔色が変わった。
「外部には漏らしませんから、知ってることを全部話して下さい」
前園はジャケットの内ポケットに録音機を忍ばしていた。
「談合?」
「はい、官製談合です」
「すまん。俺は全く知らないんだ。明日、柴垣係長に聴いてくれないか」
佐藤は席を立った。
「もう、裏は取れてるんで、言い逃れは出来ませんからね。佐藤課長」
佐藤は個室を後にした。
「佐藤は間違いなく、関与しているな?堀君」
「はい」
「内部告発した、川崎さんのためにも、必ず成敗してくれるわ」
「課長、川崎さん今何してるんですか?」
「給食センターで働いているよ!」
「元若林建設の部長が可哀想です」
2人は軽く飲んで解散した。
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