第5話新聞記者

前園の親戚に新聞記者がいる。太田誠と言ってまだ、35歳で未婚である。

こいつの嗅覚は鋭く、この町役場のことも嗅ぎ付け探っている。

ある日、前園は太田を焼き鳥屋へ誘った。

「まこっちゃん!こっち、こっち」

「高志兄さん、お久しぶり」

「先ずは、生でいいかな?」

「はい、もう喉がカラカラです」

2人はお通しの枝豆を食べながら、喉を鳴らしてビールをのんでいた。

始めは、親戚の話しをして本題に入った。

「談合は間違いないね。ま、談合しないと田舎の建設会社は生き残れないが、それにより特定の人間だけが甘い汁を吸うのは許せないね」

「高志兄さん、今回は官製談合です。実行犯は建設課の柴垣係長です。指示したのは佐藤課長は間違いないです」

前園はビールを一口飲むと、

「証拠はつかんでるの?」

「若林建設の内田社長と建設課2人組がしょっちゅう会ってる写真がありますし入札も若林建設に有利な情報を流してます」

「でも、その佐藤課長も誰かの指示で動いてんだよね?……恐らく」

「はい。恐らく山根町長」

「警察にリークするか~?」

「……はい」

「何だか、それがいい手段かもしれない。ここまで証拠を集めたんだ。明日、2人で警察署に行こうか?」

「はい」

「今日はビール祭りだ!」

「鬼の征伐にかんぱ~い」


翌日。

「おはよう。堀係長。ちょっと」

「な、何でしょうか?」

「例の件は、警察にリークする。おおやけにはしたくなかったが、若林建設、建設課、町長が絡んで僕らの手には負えん。だから、今日は昼から警察署に行ってくる。ほら、僕には南風新聞の記者の親戚がいるからさ」

堀はうんうんと頷き、

「また、選挙ですね」

「そうだね。僕らも叩かれる事になるが耐えてくれ」

「はい」


午後、前園と太田は警察署へ向かった。

そして、捜査のメスが入ったのだ。

これから、マスコミの対応もしなければいけなかった。



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