第9話

「すいません」

「はいよー、お、見ない顔だね?買い取りかい?」


買い取りカウンターで対応してくれたのは若い青年だった。


「そうです。ちょっと量があるのですが・・・」

「お?あんちゃん収納鞄持ちかい?なら裏に解体場があるからそっちで頼めるかな?ここから行けるからついてきな」


青年の案内で俺は裏手にある解体場に向かう。

ちなみに収納鞄とは近年流通しだした収納魔法が込められた鞄で、物によって収納量が変わる。中に入れた物は経年劣化しないためハンターなどには重宝するが値段が馬鹿みたいに高い、一番収納量が少ないやつでも2年は遊んで暮らせるほどの高値、年々価格降下しているらしいがまだまだ庶民には手が出ない一品だ。


「ここなら大丈夫だよ」

「わかりました。では」


青年は俺を解体場から少し離れた場所に誘導した。なんでも昔馬鹿みたいな量を出した奴がいるらしく収納鞄や収納魔法の使い手はここに案内されるらしい。

俺はマントの下に下げている鞄から出すふりをしながら時空の腕輪を発動し、素材を出していく。


ロックリザード3体、ゴブリン20体、ウルフ10体、オーク8体、各種薬草を数種束で、そして最後にジャイアントスネーク1体


実はジャイアントスネーク討伐後色々試したくなりエルの指導の元、ジャイアントスネークのいた森の中を探索及び魔物の討伐・薬草採取をを行ったのだ。エルの探知能力や炎帝の攻撃力もあり全て合わせても1時間程で終わった時は空いた口が開かなかった。

そう、まさに今眼の前で同じく口をぽかーんと開けているギルド職員の様に・・・


「これで全部です」 

「か、かかか、かしこ、こまりました!!り、り、量が多いのでさ、査定には時間が、か、かかります。なかで、お、お待ちください!!」

「わかりました。よろしくお願いします」


俺は青年と別れ、ギルド館の中に戻ったのだった。

うん、やりすぎた・・・


☆☆☆


ライセンスカードと素材買い取り待ちの間どうするか・・・

現在手持ちは無し、つまり無一文だ

何かを注文するわけにはいかないし、建物外にでるわけにもいない、とにかく腹が減った・・・

近くで肉に食らいつく男と目が合う、余りにも美味そうに食う物だから思わず見てしまった。

男は反対を向き食事を再開した

悪いことをしてしまったな・・・


俺は手持ち不沙汰と空腹を紛らわす為にギルド内の依頼ボードを見たり、窓辺から町の風景を眺めたりしていた。何度も・・・

そしてついに、何度目かの往復かで


「おいっ!!なんだお前?さっきからウロウロしやがって!!鬱陶しいんだ、どっかいきやがれ!!」


とまぁ、ハンターに絡まれたり


「あのぅ、誠に言い難いのですが、街の方々から「窓辺に怪しい人がいて気味がわるい」などのクレームが来ておりまして、すいませんが窓辺から離れていただけますか?」


と職員に注意されたりと精神的に辛い時間を過ごすことになってしまった・・・ぐす


☆☆☆


「お待たせいたしました!!」


なんとか平静を保・・てず、内心泣いていたら受付から呼び出しがかかった。


「こちらがルキさんのライセンスカードになります。ルキさんは登録初日なので最低ランクのEからになります。それと、先程買い取り場から連絡があったのですが、ルキさんが持ち込んだ素材達の査定は明日までかかるそうです。ですが今終わっている薬草の査定は終了しましたのでそちらの代金だけお渡しいたしますね。」

「それは助かります。」

「はい、こちらがその報酬です。珍しい物や高価な物全てが高品質だったので全部で金貨3枚になります。いやー、薬草だけでここまで稼ぐ方を私は初めて見ましたよ!!」


金貨3枚

たしか金貨一枚で平民が普通に3ヶ月は暮らせる額だったか?

これは有り難い、たしかに強い魔物を倒すのも楽しかった。しかし俺は悠々自適な暮らしを目標にしている。ならば普段は薬草採取、たまに息抜きに魔物討伐くらいでいいのかもしれない。


「ありがとう」

「お仕事ですから、残りの報酬は明日のお昼位には終わっているそうなので明日またご来訪してください。」

「わかった、あ、一つ聞いてもいいかな?」

「なんでしょうか?」

「この辺りでおすすめのお店があれば教えてほしいんだ。お腹が減っちゃって・・・あ、」

ぐぅぅ~


そういうやタイミング良く俺の腹が悲鳴を上げた


「・・・」

「くすくす、いいですよ。おすすめは」


受付の女性は優しくおすすめのお店を教えてくれたのだった。


ありがとうございます

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