第2話

ある部屋で女が水晶を覗き込んでいた。


「そう、貴方もここに来るのね・・・」


女の悲しみと嬉しさが半々という顔をしていた。

そしてしばらく水晶を覗き込んでいた女は徐ろに立ち上がり


「準備しなくては!!」


立ち上がった女は部屋を出て動き出す。

いつの日か現れる彼の為に・・・


☆☆☆


「ここが・・・」


私は古の塔の中にいた。

中は綺麗に整理され家具などもある。

ちなみにここには転送魔術で送られた。

外は魔物が蔓延る危険地帯、そのため王城には古の塔へ罪人や物資を送る専用の転送陣が存在する。

この魔法陣は一方通行で、物資に関しては国王の采配次第だ。国王である父が送るなと言えば物資の提供はなくなる。仮に父が王の間、送ってくれていても次代の国王が止めろと言えば止まる。たしか歴代の王達は大体が世代交代すると物資の代わりに毒盃を送り終わらせたと聞いた気がする。この塔は様々な魔術が施されており、その中の一つに塔内の者が死んだ場合遺体は火葬され外に排出される魔法がかかっており、塔内を随時清潔に保つ魔法が込められているため塔内が汚染されることはないらしい。


「うっ!!」


転送陣から出ると身体に負荷がかかった。

これは塔内に居る者の魔力を吸収する魔法だ。

この世界には魔法があり、人間は生まれた時に神から授けられる魔法を行使することができる。ただし、人間の魔力量は生まれた時から決まっており使えば時間経過で回復はするが使った分だけ身体に負荷がかかるし、体内の魔力を使い切れば魔力欠乏症になり回復するまで起き上がることもできなくなるし、最悪死亡する可能性もある。

この塔の魔法は随時、対象者の魔力を活動限界ギリギリまで吸収する魔法らしく私は数歩歩いただけで息切れを起こしていた。


「はぁはぁ、」


身体には重りが乗ったような圧がかかり力が抜けていく。先程私を転送した魔法陣は光を失い沈黙しているため戻っても変わらない。

私はなんとか近くにあるソファにたどり着きドサリと座り込む。


数日もすればここでの生活にも慣れ、日常生活も送れるようになるらしいが・・・・


私は部屋を見渡す。

一応この部屋は塔の最上階で、下に行く階段らしき物はない。家具はテーブルにベッド、本棚、別室に軽く調理などができる台所やトイレと浴室があるらしい。

罪人とは言え流石は王族が入れられる場所だ、平民の家よりいい生活ができそうではある。

そこでふと本棚へ目が行く、本棚と言うよりも本棚の前、床の一部が光っているように見えるのだ。

私は気になり重い身体を動かしながらその一面に手をつける。


「っ!?こ、これはっ!?」


床に触れると先程まで重かった身体がすっと軽くなったのだ。全身に魔力が漲るのがわかる。驚いていると床に文字が浮かび上がった。


“魔力を流せ”


と、私は書かれている通り魔力を流す。

ガコンッ


「わっ!?な、なんだ!?」


ひとりでに本棚が横にスライドした。

本棚があった場所には下に続く階段があり、壁にはランプが等間隔で明かりを灯していた


私は立ち上がる。不思議な事に床から手を離しても魔力が吸収されることも身体に圧力がかかることもなかった。入口?か階段が続く下を覗き込む、すると階段の円状に続いておりその先には一つの扉があることがわかった。


「行ってみるか」


私は階段を下り始める。

どうせ私に未来はない、ならばこの身に何が起きようが怖くはない

私は階段を下り一番下層にあると思われる扉の前まで来た。

私は一呼吸入れると


「よし!!」


扉を開けた



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