幽閉された王太子は自由ライフを満喫することにしました

伊佐波瑞希

第1話

俺は何を見せられているのだろうか・・・?


「アンナマリー、君を生涯愛する事を誓う」

「ブラット様!!私も貴方を愛する事を誓います。二人で幸せになりましょう!!」

「アンナマリー!!」

「ブラット様!!」


そう言うや抱き合う二人

女性は俺の元婚約者アンナマリー・ランベル公爵令嬢

男性は俺の側近兼友人のブラット・スラスター伯爵子息


俺は周りを見渡す

場所は学園の舞踏会会場

今日は俺や眼の前でイチャイチャする二人を含めた最高学年の卒業式だ

俺達以外の卒業生在校生は俺達を円形に囲み二人には暖かな視線を、俺には絶対零度の視線を向ける。


先程まで俺は愛おしいレイチェル・パニア男爵令嬢と素晴らしい時間を過ごし、愛するレイチェルを虐める陰険女、アンナマリー・ランベル公爵令嬢に婚約破棄を叩きつけ、そして彼女の非道な行いを公表し裁こうとした。

だが、宣言を終えた俺に待っていたのは周りの観客からの拍手喝采ではなく、急に出てきたブラットの拳だった。

ブラットは俺を殴った後、俺が読み上げたアンナマリーの罪状を否定し彼女の身の潔白を証明した後、レイチェルが行っていた犯罪の数々を証拠と共に提示した。

その後レイチェルとパニア男爵、それと主だった関係者達が衛兵に連行され会場には無関係な貴族子女、その家族と来賓、そして俺、いや、私と眼の前でイチャイチャつく元婚約者と友人、そんな二人の側で祝福するおそらく二人に親しい者達だけだった。


レイチェルが魔力封じの手枷を嵌めはられた瞬間頭をガツンと殴られたような衝撃に襲われた。


一体何がどうなっている?

私は、なぜあのようなレイチェル粗暴な者を愛し、幼い頃より私を側で支えてくれていたアンナマリー愛しい人を嫌悪し排除しようとしたのだ?

解らない、なぜ?


そう思った時だった


「うっ!!」


急に頭の中に大量の情報が流れ混んできた。

そこには学園入学間もなく私に近づいてきたレイチェルあの者の動向、さらには学園生活でアンナマリーに私が行ってきた悪行の数々があった。

私は流れ込む情報量に耐えきらず頭を抑えながら数歩後ずさる。


私は、何ということをしてしまったのだ・・・


痛む頭を抑えながら私の心にあったのはこの一言だった。


「王太子アルフォンス」


未だ痛む頭を抑えているといつの間に近くに来ていた父、国王ラゼル・ガイゼンが立っていた。


「アルフォンス此度、お前が起こした事の重大さはわかっておるか?」

「・・・・はい」


痛む頭をなんとか我慢し私は父の元で跪き返事を返す。


「うむ、お前は王太子と言う身分でありながらあのような拙い術にかかり危うく国を危険に晒したのだ。分かるな?」

「はっ、申し訳ありません、いかような処分も受ける次第です。」

「うむ、ならばこの場でお前を裁く事とする。皆の者聞け!!」


父がそう叫ぶとざわざわと騒がしかった会場が静かにかる。


「今ここで王太子アルフォンス・ガイゼンに罰を下す。王太子アルフォンス・ガイゼンは王太子としの地位を返上し、古の塔へと幽閉するものとする!!アルフォンスよ、依存はないな?」

「はっ、謹んでお受けいたします。」

「うむ、では衛兵!!この者を連行せよ!!」

「「はっ!!」」


私は左右の腕を衛兵に拘束され、会場を後にする。

古の塔、それは約2000年前にある王族が罪を犯し幽閉するために作られた場所。それは王都の端にある魔物が蔓延る禁断の森の中心地にある。塔自体は結界で守られているが周りは強大な魔物が闊歩しており、脱出はできない。

つまり、入れば二度と出ることはないのだ


衛兵に連れられ会場を出る時、アンナマリー愛していた人ブラット友人に言葉をかけようかと思ったが止めた。

彼等にかける言葉が見つからないし私にはその資格もないのだから・・・



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