学校の怪談になろう!【男3女2 計5】

★台本ご利用の際は、必ず目次ページの規約

https://kakuyomu.jp/works/16817139555508097862

をお守りくださいますようお願い申し上げます!

●現代ファンタジー(コメディ・怪談)

●所要時間 15分程度


●配役 男3女2計5


登場人物


金治郎【男性】

二宮金治郎にのみやきんじろうの像。

夜中になると校庭を動き回るらしい。

年齢設定は若め? ご自由に。


ベートーヴェン【男性】

音楽室に飾られているベートーヴェンの肖像画。

目が動いたり目から血の涙を流したり夜中にピアノを弾いたり歌ったりと多才。

※※読み間違い多発地区、ベートーヴェンのセリフ中の国名は

【オーストリア】です。【オーストラリア】ではありません。


人体模型【男性】

理科室にある人体模型。

たまに保健室でくつろいでいる。


花子【女性】

トイレの花子さん。長谷川花子はせがわはなこ

おもに女子トイレに出没する。

年のころは小学生だが、なんならお姉さんでもよい。


デュラハン【女性】

馬に乗ってる。

首から上はなく、頭は片手に抱えている。

年のころはお姉さん。なんならおばさんでもおばあさんでもいい。



―― ここより本編 ――


金治郎:

さあて、今日は月もない真っ暗な夜!

元気に校庭で競争しようか、人体模型くん!


人体模型:

あ、そっか。昨日、金治郎くんと約束してたんだっけ。

実はさぁ、今朝がた、骨格模型くんと遊んでたら、うっかり内臓全部、吹き飛ばしちゃってさ……。

肝臓がまだ見つかってないんだ。

今夜はそれ、探したいんだよね。


花子:

え、どこで落としたの?

トイレでは見てないよ?


ベートーヴェン:

学校中のトイレを徘徊はいかいしてるのか、花子くんはマメだね。

音楽室にもなかったなぁ。


花子:

徘徊はいかいしなくても、この学校のトイレの事なら大体わかるんでーす♪

ベートーヴェンは大概音楽室にいるから、内蔵吹き飛ばしてたら気付くわよね。


ベートーヴェン:

そうだねぇ。


金治郎:

校庭にも落ちてなかったよ?

結構広いけど、さすがに肝臓が落ちてればわかると思う。


人体模型:

実は、旧校舎で遊んでてさ。


デュラハン:

旧校舎って、夜にならないと現れない校舎か。


人体模型:

あ、デュラハンやっほー。

そうそう。その旧校舎。


花子:

まあ、私たちの活動場所って、もっぱら、幻の旧校舎だもんね。


デュラハン:

しかし、体の一部が欠けていると、なんとも格好がつかないな。


人体模型:

首のないデュラハンに言われたくないですー!


ベートーヴェン:

はっはっは、まあまあ。

では、今宵こよいはこのベートーヴェンが、旧校舎を呼び出そうか。

いでよ! 幻の旧校舎!


金治郎:

おおー。


人体模型:

ドンとでたー。


花子:

じゃあ、今夜はまず、人体模型くんの肝臓を探しちゃいましょ。


デュラハン:

旧校舎は古いから、馬の足で踏みぬきそうで怖いのよね……。


金治郎:

大丈夫、大丈夫、どうせどちらも幻の存在みたいなものだ!


デュラハン:

それもそうか、では行きましょう。


人体模型:

おー! みんな、よろしくー!


【※少々の間】


金治郎:

あ、そういえばさ。


花子:

なに?


金治郎:

ずっと気になってたんだけど。


人体模型:

うん。


金治郎:

ここって、小学校じゃん?


ベートーヴェン:

そうだね。


金治郎:

学校の怪談なら、たいてい網羅もうらしてる、学校の幽霊関係者のたまり場じゃん?


花子:

そうね。


金治郎:

なんで、デュラハンがいるの?


人体模型:

……あ


花子:

う……


デュラハン:

今、それ言っちゃう……?


ベートーヴェン:

なんか、ずーっと前からいる気がするけど。


金治郎:

うん、だからずーっと前から気になってたんだよね。


花子:

ま、まあ、たしかにそうなんだけど。


人体模型:

なんか、そんなものかなって思ってたっていうか……。


デュラハン:

あう……


花子:

言われてみればデュラハンって、外国の人だよね。

ベートーヴェン、知ってる?


ベートーヴェン:

いや、私は立場上ドイツやオーストリアの事とか勉強してはいるが、あまり詳しくはないね。


金治郎:

立場上というと?


ベートーヴェン:

まがいなりにも「ベートーヴェン」を名乗っているからね。

私はあくまで「ベートーヴェンの肖像画」という怪異であって、ベートーヴェン本人の霊魂という訳ではないんだが。


金治郎:

ああ、そういうことね。

それを言ったら、僕も金治郎の像ってだけで、金治郎本人じゃないし。


人体模型:

でもベートーヴェンくんは、本物のベートーヴェンの周囲のことも勉強してるんだね、えらいなあ。


ベートーヴェン:

いやいや、趣味みたいなもので。


花子:

でもまあ、本物のベートーヴェンだったらデュラハンを知ってるか、といえば、そうでもないんでしょうけどね。


デュラハン:

う……うぅ……なんか急にアウェー感出してきた!

いまさら、いまさら仲間外れにする気……?


花子:

金治郎くんがデュラハンいじめてまーす。


金治郎:

えええ、僕ひとりにかぶせてきた!

いやいやいや、そんな気はなくて!

ただ何となく、なんでかなーって思っただけで!


デュラハン:

だって、だって楽しそうだったんだもん!

私、馬に乗って空駆けまわってたら、迷子になっちゃって、気付いたら国境も越えてて、いつの間にかここまで来ちゃって!


ベートーヴェン:

国境どころか、海も越えたね。


デュラハン:

なんか、お仲間みたいな気配を感じたから、何となくそっと、仲間に入っちゃえーって。


人体模型:

気付かない僕らもわりと、うっかりかもしれない。


デュラハン:

思えば、みんなは幽霊ってわけじゃないのね?

なんか気配が違うっていうか。


花子:

そうねー。

私も、長谷川花子なんてフルネームまでついちゃってるけど、実際は花子さんって人の霊魂ってわけじゃないのよ。


ベートーヴェン:

他は知らないが、少なくともここに集うみんなは、人々の思念から生まれたようなものだからね。


デュラハン:

思念?


金治郎:

だね、子供たちとかのさー。

噂や思い込みの力が強すぎて具現化しちゃったっていうか。


人体模型:

だから、幽霊じゃなくて、モンスターのたぐいってことになるのかな?

よくわからないけど。


デュラハン:

ああ、だから、何となく仲間だって感じたのか!

私も妖精だからな!


花子:

よう、せい……?


金治郎:

ようせい……?


人体模型:

ずいぶん、いかついというか、立派な感じの妖精だね……?


デュラハン:

え、日本人の妖精の印象ってどんななの!?


花子:

妖精っていったら、ちょうちょやトンボみたいな羽が生えてるんじゃないの?


金治郎:

花の周りをくるくる舞いおどるんじゃないの?


人体模型:

フキの葉っぱを傘にしたりしないの!?


デュラハン:

全体的にちっちゃくて可憐だね!?


ベートーヴェン:

ああ、えーと。

イギリスをはじめとする諸外国で認識されている妖精っていうのは、多種多様なんだよ。


デュラハン:

それこそモンスターよ。

見た目が怖いのも多い。


花子:

デュラハンに言われると、説得力があるような、お前が言うかーって感じになるような……


デュラハン:

なによー!

馬に乗ってるから大きく見えるだけの、ただの首がとれた人じゃん!


金治郎:

ただの、首がとれた人。


デュラハン:

私単体の見た目なんて、貞子とあんまり変わらないし!


人体模型:

いや、貞子は十分怖い。


デュラハン:

内臓吹き飛ばす方が怖いわ!


ベートーヴェン:

この学校で言うと、河童くんがなかなか怖い見た目だね。


花子:

ああ、そうかも。

結構リアルに河童よね。


デュラハン:

ちょっと待って。河童?


金治郎:

河童。


デュラハン:

随分長くいる割に初耳なんだけど、それはともかく!

河童ってなんで?

私、知ってるよ?

あれこそ日本の妖怪で、学校、関係なくない?


人体模型:

あー、それはねー。

この学校って、敷地のすみに小さい池があってさ。

そこには河童が住んでて、児童の尻子玉しりこだま狙ってるって噂が立っちゃって。


花子:

この学校独自かもしれないけど、学校の怪談として語られちゃってるのよね。


ベートーヴェン:

だから、この学校には、学校の霊としての河童くんが生まれちゃったんだよ。


デュラハン:

……! それだ!


花子:

え!?


デュラハン:

それよ、それ!

私も学校の怪談として噂されるようになれば、この学校のみんなの仲間になれるってわけじゃない!?


ベートーヴェン:

……あー。

いや、別にそこまでしなくても、今さら仲間外れになんて……


デュラハン:

だってさっき「どうしてここにデュラハンが」って言ったじゃない!


花子:

金治郎~。


金治郎:

いやだから、そんなつもりは!


人体模型:

んー、でもいいんじゃない?

学校霊ってことで定着しちゃえば、デュラハンも色々安心できるだろうし。


ベートーヴェン:

まあ、それもそうかもしれないね。

私たちの存在自体があやふやなものだから、人々に噂されていた方が、安定して存在していられるかもしれない。


デュラハン:

そういうもの?


花子:

噂されなくなったからって消えちゃう訳じゃないけど。

存在意義みたいなのがあったほうが、学校の怪談としての生活も楽しくなるのは事実よね。


デュラハン:

じゃあ、じゃあ、どうしよう!

どうしたら学校の怪談になれるかな!?


金治郎:

すっごいテンション高いね。


ベートーヴェン:

じゃあ、校庭で金治郎くんとかけっこなんてどうかな。

外の方が気配を感じやすいから、敏感な人が発見して噂してくれるかもしれないよ。


デュラハン:

金治郎とかけっこ!


金治郎:

馬とかけっこ!?


花子:

頑張ってねぇ~!


人体模型:

あ、あのー、僕の肝臓さがしは……


花子:

あとでもよくない?


人体模型:

えぇ……


デュラハン:

校庭は一番好きな場所だし!

旧校舎は、おもむきはあるんだけど、実はちょっとこわいというか、居心地悪いんだ。

トイレの形とかこわい何あれ。


ベートーヴェン:

形? 和式トイレのことかな?


金治郎:

あー、西洋の人には、なじみがないか。

でも水洗なだけマシだと思うけど。汲み取り式よりは。


花子:

くみ、とり、しき……?


金治郎:

え?


花子:

え?


人体模型:

え、まさか花子さんが知らないの?


花子:

なに、それ?


人体模型:

まさかの、ジェネレーションギャップ!!


ベートーヴェン:

この学校の旧校舎、木造だけど水洗トイレだったね、そういえば。


金治郎:

汲み取り式っていうのは~(※耳打ち風に)ごにょごにょ


花子:

え、ええ~~! そんなのやだやだやだ!


人体模型:

でももし汲み取り式なら、トイレの穴の中から白い手が伸びてきて~、みたいな怪談も作れるんだけどね。


花子:

そんなライバルいらない!


デュラハン:

とにかく! かけっこよ! 今はかけっこするの!


金治郎:

すっごいやる気だね……


ベートーヴェン:

ははは、いいじゃないか。

金治郎くんも、校庭仲間がもっと増えた方が楽しいだろう!


金治郎:

いやもうとっくに、デュラハンも仲間だけどね……?


デュラハン:

いいから走る走る!

人々の噂にならないといけないからね!


金治郎:

う~、わかったよぅ……


【※三日経過の間】


デュラハン:

というわけでだ!

三日間走り続けた結果、めでたく学校の怪談として噂になった!


金治郎:

ぜぇ~、はぁ~……ふうぅぅ……、つっかれたぁ~……


花子:

おつかれさま~!


ベートーヴェン:

なんだかここ数日、お祭り騒ぎだったねぇ。

にぎやかで楽しかったよ。


人体模型:

ちなみに肝臓はまだ見つかってません。


デュラハン:

ところで、小耳にはさんだんだけど!


金治郎:

うん? なに?


デュラハン:

子供たちの間の、私の噂だよ!

「馬に乗ったオチムシャが、自分の首を抱えて学校の校庭をさまよっている」だって!


ベートーヴェン:

え……


デュラハン:

「オチムシャ」ってなに!? ねえ、なに!?

かっこいいの? それともかわいいの?


花子:

えっと……


デュラハン:

「あの学校のある地域は、もともと戦場だったんだ」だって!

ってことは、かっこいい方の何かかな!?


金治郎:

えーっと……


デュラハン:

あと「ザンバラ」とも言ってた!

ザンバラ! かっこいいのかな!


人体模型:

う、あ、あ……うん、か、かっこいいよ……


デュラハン:

そうか~。


人体模型:

オチムシャっていうのは、まあ、いわゆる戦士のことでさ、ザンバラは、デュラハンみたいな、綺麗な長い髪のことで……あはは……


デュラハン:

そうかぁ~!


金治郎:

うわあ……


花子:

そうきたのね……人の噂って、怖いわ……


デュラハン:

これで私も晴れて学校の怪談の仲間入りだ!

ザンバラのオチムシャ! やったね!


花子:

……まあ、そうよね。うん。

デュラハン、これからもずっとこの学校で一緒よ!


デュラハン:

もちろん!


人体模型:

じゃあ今日こそ、僕の肝臓見つけてもらえるかなぁ……


ベートーヴェン:

ああ、そのことなんだが……


人体模型:

え?


ベートーヴェン:

今しがた、骨格模型くんから伝言頼まれてね。

旧校舎で遊んでたら、拾って預かっていたきみの肝臓を、うっかりトイレに落としてしまった、と……


人体模型:

ええ!?


花子:

便器に(笑)?


ベートーヴェン:

便器に。


人体模型:

ええ~~!?


金治郎:

ははは! 汲み取りじゃなくてよかったな!


人体模型:

よくないよおぉーー!!

あのホネ人間、バラしてトイレに流す!


花子:

詰まるからやめてー。あはは!


人体模型:

笑うなぁー!

花子さん、実は見えてたんじゃないの~!?


花子:

し~らない♪


デュラハン:

あっははははは!


人体模型:

もぉーーー!!



END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る