第3話 キス ― KISS ―
それから、マネージャーの話は何とか逃れ、ある日の朝の事だった。
「あ〜〜〜っ!遅刻だ〜〜〜っ!最悪〜〜〜!!占いハマって見てたら、いつの間にか眠ってて、目覚ましに気付かなかった~~~っ!ああ〜〜っ!どうしよう?どうしよう?髪すら決まらないっ!つーか、グチャグチャだっつーの!」
そして―――――
ドンッ カラン
誰かとぶつかり、その拍子に眼鏡が外れる。
「ったぁーー!」
「ってぇーー!」
ドキッ
「げっ!」
「げっ!って何だよ!先に謝れよ!」
そこには、クラスメイトの日賀の姿。
「いやいや、慌てていて……つーか、あんたも遅刻するよ!」
「遅刻?あー、別に気にしねーし!てか…あんた誰!?」
「誰って…同じクラスのもんだっつーの!」
「テメェみたいな美人いねーぞ!」
「えっ…?あっ!ヤバっ!」
私は慌てて走り去った。
「あっ!おいっ!逃げんなっ!」
後を追おうとする日賀。
バリッ
「……あれ…?何か…今…うわっ!眼鏡じゃん!…眼鏡…?あっ!!」
そして、眼鏡を手に取り、彼は学校へ向かう。
「はあぁ〜…門に間に合えば良いんだよね?いっつも、ここの鉄柵、防犯の為、閉まっちゃってさ」
教室には間に合わなかったものの、門の中に入れば、担任の先生の耳に入り遅刻と見なされない。
1限目に間に合えば良いのだ。
私は、髪を結ぶ為、トイレに行く。
「よし!完璧。眼鏡、眼鏡…」
「………」
「……………」
「…………………」
「えっ…?…ない…?嘘!?どうしよう!?ダテとはいえ容姿や本性はバラすの嫌なんだけど…」
「…帰ろうかな…?」
私は帰ろうとした。
「裏庭からなら何とかなるよね?バレずに済むっしょ?」
私は裏庭から帰る事を決意。
死角の為、バレずに済む事を知っている。
と、言うよりアイツ・日賀の情報ではあるが、校内案内の時に、コッソリ教えてくれた。
他にも色々な情報を知っているようだけど……
「はあぁ〜…とは言ったものの…スカートの私じゃムズい(難しい)…どうしよう??」
すると――――
ドサッ
荷物が落ちてくる。
「うわっ!何?空から荷物が…んなわけないって!」
誰かが飛んで来ると思われる足音がする。
「よっと!」
ドキッ
「うわっ!」
「…何してんだ?お前」
「いや…えっと…帰ろうかな〜って…」
スタッ
私の前に降りて来る日賀の姿。
ドキン
《な、何故…胸が…?》
「あー、そういう事。あっ!そうだ!ほらっ!」
「えっ?」
スッと無惨な眼鏡が差し出された。
「あっ…!」
「悪い!さっきぶつかった拍子に外れてたみたいで、気付かずアウト」
「そっか…」
「マジ悪い!」
「ううん。大丈夫」
「ほら!とっとと帰れ!見回り来るぞ!」
「えっ?あっ…うん…そうだね。そうなんだけど…」
「………………」
「あー…スカートじゃ無理だな。手伝おうか?」
「け、結構です!スカートの中、見られたらかなわないし!」
「テメェの下着に興味ねーよ!色気も何もねーし!」
「失礼なっ!あんたが知らないだけだから!」
「じゃあ自信あんのかよ?」
その時だ。
「おいっ!!誰かいるのか!?」
ビクッ
「うわっ!ヤベっ!つーか、今日の見回り早くねーか?」
隠れる日賀。
「うわっ!ちょ、一人だけ…ずるっ!」
キョロキョロ辺りを見渡す。
「おいっ!いるなら返事しろっ!」
足音が近付いて来る。
「ど、ど、どうしよう…?」
私は辺りをキョロキョロ見渡す。
「あの…バカっ…! おいっ!何してんだよ!」
手招きされる。
私はそれに気付き、日賀の元へ。
次の瞬間―――
グイッと力強く引っ張られた。
「きゃ……っ!」
ドキン……
そして、見回りが来た様子で、すぐに
「日賀っ!?」
「あ、先生、良い所を邪魔しないで下さいよ~」
「いや…すまん…いやいや…そうじゃなくてだな。場所は考えろ!ここは学校だぞ!!」
「いや…案外、カップルの溜まり場っすよ!するしないにしろ、結構、イチャイチャしてるんですって!今日は、たまたま、俺達だけだったけど」
「………………」
見回りの先生は去り始める。
「先生、内緒ですよ♪」
「こ、今回は見逃すが、2度目はないぞ!」
「サンキュー」
そんな私はドキドキがおさまらない。
《ヤバイ…》
《まともに見れない…》
それは、つい数分前に遡る。
グイッと引っ張られ、私の唇は奴に一瞬にして奪われてしまった。
顔が真っ赤になった私に気付き
「もしかして…初めてだった感じ?」
男の子ではなく
同級生とは思わせない行動や仕草に
私の胸は一気にドキドキと加速する
「ちょっと待ってろ!」
自分のシャツのボタンを外し肌を露わにする彼は、私のシャツのボタンを外すと、深いキスを要求してきたのだ。
唇が離れ、首筋に唇が這い、ゾクゾクする中、くすぐったいようなその感覚に吐息が洩れてしまった。
その瞬間、先生に見られた。
「案外、敏感なんだな」
更にその一言を私にしか聞こえない声で言う彼に、かあぁぁぁぁっ!っと一気に身体が熱くなってしまった。
そんな私の姿を後(しり)目に、私を隠すように自分の首筋に抱きしめるように何食わぬ顔して先生の対応をしていたのだ。
先生が去り
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫も何も…っ!」
再びキスされた。
「イイ女の唇は俺のモノ。じゃあな!気を付けて帰れよ!」
そう言うと、日賀は去って行く。
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