第64話 これからも、ずっと!

「私も好き、慶太の事好き……私も慶太の事、大好き!!!」

 抱き着きながら胸の中に顔を埋める梓が、絞り出すような声でそう言う。


「慶太の優しいところが好き、カッコいいところが好き! いっぱいいっぱい、私に構ってくれて、私と一緒に居てくれるところが好き!!!」


「うん、大好きだもん。梓の事大好きだから、ずっと一緒に居たいもん」


「私も、私も大好き!!! まだね、まだいっぱいある……まだね、慶太の好きなところいっぱいある! 慶太の作ってくれるお料理が好き、慶太と一緒にゲームとか電話してる時間が好き! 慶太が私と一緒に遊んでくれる時間が大好き!!!」

 ギュッと抱き着いた梓が、これまでの気持ちを全部全部ぶつけるように俺の胸に叫ぶ。


 その度にお互いの心臓の鼓動が早くなって、ドキドキと高鳴る音を共有して。胸の高鳴りが止まらなくなって、抱きしめる手にも力が入る。

「慶太と一緒に居ると、楽しくなるの、嬉しくなるの! 慶太、私と趣味一緒で話してて楽しいし、それに、それに……とにかく、慶太といると私も幸せ! 私も幸せで、大好きなの! 慶太の事大好きなの!!!」


「ふふっ、僕も大好き……でもそんなに言われると恥ずかしいかも」


「うん、私も大好き……えへへ、さっきの復讐。慶太が私の大好きなところ言ってくれたもん、私も慶太の大好きなところ言うもん! 私だって慶太の好きなところいっぱいあるもん、ずっとずーっと、慶太の事大好きだったもん……私ね、慶太のね……!」


「ちょ、梓……ふふふっ、恥ずかしいって、本当に……もう、僕も好き」


「好き、好き……慶太の匂いも、そうやってたまに素直になってくれるところも……えへへ、全部好きだよ。私、慶太の全部が好き……本当に大好きだよ、慶太……にゃ~ん、なでなでもしゅき、大好き……えへへ」

 ずっとずっと、さっき僕がしたみたいに甘い声で僕の好きなところを言ってくれる梓を。


 そんな可愛くて、大好きな梓をの、ごろごろ甘えるように胸に擦り付ける頭を撫でて、ギュッと抱きしめ続けた。

 絶対に離さないように、大好きな気持ちいっぱいお返しできるように……ずっとずっと抱きしめ続けた。



 ☆


「あとね、慶太の家の匂いも好き、慶太のベッドの匂いも好き。慶太に包まれてるみたいで、慶太の事いっぱい感じてドキドキする。慶太のベッドの中、ドキドキして大好きなんだ」


「うん、梓……え、ベッド?」


「うん、この前海未ちゃんとこっそり二人で慶太のベッド入って……あ、言っちゃった。えへへ、慶太のベッドに入った事、言っちゃった」

 腕の中の梓が失言を恥ずかしがるようににへへと幸せそうなとろとろな声で笑う。


 ふふふっ、別にいいよ、梓も海未も僕の大好きな女の子だから。

 だからベッドに入るくらい別に……あ、そうだ!


「ねえ梓、お顔見せてよ。梓の顔、僕に見せてよ。梓の可愛い顔、またしっかり見たいな」


「えへへ、大好き、私も……あえっ、顔? い、今はダメだよ、慶太……い、今顔見るのはダメ! ダメダメ……大好きだからダメなの!」


「大好きだったら良いでしょ。見せてよ、梓の顔」


「ヤダ、ダメ……だって私、今凄い顔してるもん。幸せ過ぎて、慶太の声聞くだけでドキドキしてぽわぽわして……ゆるゆるとろとろな、すごい顔してるもん。慶太に見せられない、すごい顔してるもん、今」


「ふふふっ、何だそんな事か。大丈夫、僕も一緒だよ、それじゃ! 僕だって今、すっごい顔してる。梓の事考えて、梓に名前呼ばれるだけで顔が熱くなって、にやけちゃうんだもん」

 さっきから本当に心臓の鼓動も、顔の熱さも留まることを知らない。

 ずっと熱くて、僕だってすっごい顔してる。絶対蕩けて、人に見せられない顔してる。


「ほ、ホント? ホント、慶太?」


「うん、本当。だから見せて、梓の顔。梓の可愛い顔、僕に見せてよ」


「うんっ、それなら……それなら見せる、慶太に」


「うん……うわっ」

 そう言って胸にずっと埋めていた顔を僕の方に見せてくれる。

 その顔は真っ赤で、とろとろに蕩けて……誰にも見せたくない顔。僕以外の誰にも、見て欲しくない、梓のすっごく可愛い顔。


「……えへへ、ほんとだぁ。慶太、すっごい顔してる。慶太の顔、すっごく可愛くて、それで……えへへ、可愛い、慶太」


「梓だって! 梓だってすっごく可愛い、誰にも見せたくない……僕以外に見せたくない、梓のその顔! とろとろで、可愛すぎて、絶対に誰にも見せたくない!」


「もう、えっち……えへへ、私も、慶太の事独占したい。大好きな慶太の事、一人占めしたい……えへへ、大好き、慶太」


「うん、僕も。僕も大好き、梓!」

 そう言って再び梓の身体を抱きしめる。

 梓の事を独り占めするようにギュッと抱きしめる。


「ふふっ、慶太……好き、大好き」


「うんっ、僕も……ね、梓、続きいい? さっきの続き……僕と、付き合ってくれますか? 大好きです、梓。僕の彼女に、なってくれますか?」


「……はいっ! もちろんだよ、慶太!!! 私も大好き、私を慶太の彼女にしてください!!!」



 ~~~

「う~ん、このステーキ美味しい! いつもよりランクが上な気がする」


「うわっ、福永上級国民! さっすが理事長の孫、私にも食わせろ……ってアレ? あの二人……ふふふっ、そっか。んふふふっ」


「ダメだね、これはボクのステーキ……ってどうしたの、川崎ちゃん? 何かあった……ってありゃ!? まさかあの二人……ありゃりゃ!? おりょりょ!!!」

 ―あの二人、仲良しだったけどちゃんと……良かったね、梓ちゃん!


 ―少し悔しいけど、でも……梓ちゃん、良かったね!!!


「ふふっ、そうみたいだな、福永! で、どうするんだ? 高梨盗られたけど、福永はどうするんだ?」


「どうするもこうするも、ボクは慶太の親友だし! 慶太の親友ですから! それよりも、川崎ちゃんの方なんじゃない? 川崎ちゃんの方が、どうするか気になるんだけど? 慶太の事、どうするか気になるんだけど?」


「どうするって……別にどうもしないけど? それより、それくれないなら寿司の早食い勝負しないか? この寿司、どっちが早く食べられるか勝負しないか?」


「お、失恋のやけ食いですか!? いいでしょう、ボクが相手になりますよ! 川崎ちゃんの友達として、ボクが相手してあげますよ!!!」


「だからそう言うんじゃ……ふふっ、まあいいや! 勝負だ、福永!!!」



 ~~~


「はわわ、海未ちゃんアレ……はわわ!?」


「ほわわ、ほわっ……やっぱ見ちゃダメ! ダメダメ!!!」


「いや、大丈夫ですよ二人とも。梓さんは私とも友達ですし、梓さんなら兄さんの彼女に、って思ってましたから。だから海未の感情は祝福です、梓さんと兄さんを祝福したいと思います!」

 ―ようやくですか、梓さん……どっちが勇気出したかわかりませんけど、良かったですね。ようやく、昔からの夢が……ふふふっ、祝福しますよ、兄さんに梓さん。


 ―海未は少し悔しいけど、良いのです。兄さんとはいつも一緒ですから、海未は兄さんの妹ですから……だから良いんです、海未は。兄さんの妹―そのポジションだけは絶対に梓さんにも譲りませんから。


「な、なるほど! 良かったね……ね?」


「良かったんですよ、それで。ほら、あっちにケーキバイキングがあります、食べに行きましょう! 彩葉さん家のケーキ、すっごく美味しいんですから!」


『う、うん!!! 食べたい、ケーキ食べる!!!』


「はい、食べましょう。私も兄さんの事ちょっとは悔しいのでやけ食いします……ほら、透ちゃんも一緒に行きますよ。ケーキ、食べましょう!」


「じー、お兄さん……え? あ、ケーキ、うん食べる! 私もケーキ食べるよ、ケーキ大好き! よ~し、いっぱい食べるぞ~!!!」

 ―流石に私じゃまだ早かったですよね、私じゃ無理ですよね……ふふふっ、幸せになってくださいね、お兄さん!!!




「えへへ、慶太私幸せ……慶太の彼女になれて、すっごく幸せ。カッコよくて、優しい慶太と付き合えて、すっごく幸せだよ」


「うん、僕も。大好きな梓と一緒になれて、すっごく幸せ。これからもずっと一緒だよ、梓」


「うん、絶対だよ……絶対浮気、しないでよ!」


「しないよ、そんな事。浮気なんてするわけないじゃん!」


「私も絶対しない、浮気なんてしない! 慶太の事道具にも使わない、慶太の事金づるにもしない! 大好きな慶太と、一緒に幸せになる! ずっとずーっと大好きだよ、慶太!!!」



 ★★★

 次回最終回の予定。

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