第61話 パーティー!

「ねえ慶太、パーティーしよ! 僕達と一緒にパーティーしよ!」


「ぱ、パーティー?」

 家の前で待機していた友達達のリーダー格、彩葉の言った言葉に僕達警察帰り組の頭には?マークが浮かぶ。

 え、パーティー? なんで? 何の?


 僕達の疑問に、目の前の彩葉はふーふー興奮した様に息を吐きながら、

「なんの、って決まってるじゃん! 慶太が元カノの事を完全に払しょくした記念、これからもうその影に怯えることが無くなった、って言うその記念!」


「いや、記念って……それはちょっと申し訳ないというか、不謹慎というか。なんかちょっと嫌な感じするんだけど」

 いくら相手が千尋でもなんか記念、って言われるとちょっとモヤモヤしちゃう。

 確かに怯えなくてよくなったんだけど、記念って言われるとちょっともやっちゃう。なんか変な意味に聞こえちゃう……それにいいことではないしね、これ。人が逮捕されてるわけだし。


「大丈夫大丈夫! どんな嫌なことでも、終わってしまえば全部記念碑、それを弔うイベントが必要! そりゃ捕まったことはちょっと可哀そうだけど、でも慶太にやった事考えれば自業自得! という事で何の問題もありゃしません!」


「そう言うものなかなぁ?」


「そう言うものだよ、慶太! ていうかボクは慶太とパーティーがしたい! 慶太と一緒に遊びたい!」


「本音出てるぞ、絶対メインそっちじゃん! 遊びたいのが本音じゃん!」

 いや、遊びならむしろ良いのか?

 いやでもいくら千尋とは言え、知り合いの人が捕まって、警察に連れていかれた瞬間にそう言う事して遊んだりするのはちょっとだけ人の良心が痛むというか、変なところで気持ちが揺れるって言うか……どうしたらいいのでしょうか、これ? 

 割と場違い感ある感情なのはわかってるけど、なんか微妙に納得できないんだよね、この悪癖は多分直らないんだろうな……だからちょっと悩んじゃう。


「まあまあ、高梨。私たちも高梨が帰ってきてくれて嬉しいんだ、ここは福永の気持ちも立ててやってくれ。それに私も無事で、しかもその脅威がなくなった、ってなると嬉しいし。だからさ、ここは来てくれよ……あ、もちろん海未ちゃんも東海林さんも。みんなでパーティーするらしいから来てくれると嬉しいな! 来てくれた方が楽しいと思うし」

 悩む僕に苦笑いしながら、彩葉の隣まで歩いてきた川崎ちゃんがそう言って僕たちにパチン☆とウインク。


「あ、私は良いですよ、行きます! 慶太が行くなら、私も行きます! あ、でも無理しなくていいよ、別に行かないならそれでいいし!」


「海未もです、海未も行きたいです……兄さん次第ですけど。兄さんが行く、って言ってくれれば海未も行きます、透ちゃんたちと遊びたいですし。もちろん、嫌なら兄さんと一緒に居ますけど。兄さんと一緒に居たいですし……で、でもパーティーするなら行きたいです!」

 そのウインクにほだされたのか、二人とも口ではそう言ってるけど、瞳の輝きは「行きたい、行きたい!」と僕に強く訴えかけていて、「パーティーしたい!」という強い意志を感じて。


 ……僕だって別に行きたくないわけじゃないんだ。でもなんか変なとこ引っかかっちゃって、なんか微妙に気持ちが動かないだけで。

 変なところ頑固な僕の悪い癖が出てるだけで、行きたいか行きたくないかで言われると行きたいという気持ちが強いのも確かなんだ。


「じゃあ来てよ、慶太! 慶太が来ないと主役不在、楽しくない! ボク慶太と一緒が良い!」


「そうですよ、兄さん……行きましょうよ、一緒に。海未派そんなの気にしなくていいと思いますよ?」

 ……まあ、みんなが行きたいんだったら僕も行くのが正解だな。ここで僕が変な意地とか考えで楽しい流れぶった切るのも変な話だし。


 よし、千尋の事は忘れよう! もう関わらないでって言ったしきたし、それに考えるだけ無駄だ、だって千尋だし!

 僕の事虐めて、ぶん殴ってきて、金づるにして……ああ、考えてたら腹立ってきた!よし、これなら楽しめそう! この考えなら楽しめそう!


「わかった、良いよ。僕も行く、僕も楽しむよ! 僕だってパーティ楽しめる、海未に梓、行くよ! 僕達もパーティ参加するよ!」


『よっしゃやりぃ!!!』


「よし、ナイス慶太! それなら早く準備していくよ、もうパーティの用意はしてるんだから! 僕の家の大広間でパーティする準備じいやとかが整えてるんだから! だから早く行くよ、料理が冷める前に!」


「アハハ、それ最初からやる気満々だったじゃん彩葉! まあいいけど、もう楽しめそうな気持になったし! それじゃあ行きますか、レッツパーティー!」


『パーティー!!!』

 僕の声に合せて、みんなの楽しそうな声が静かな住宅街に大きく響いた……ちょっとだけ、恥ずかしいかもだけどでもなんだか楽しい気分!



「……あ、梓のお母さんに言うの忘れてた」


「あ、大丈夫だよ慶太。私がもうそれは言ってる、だから平気。楽しんでおいで、って言うメッセージ頂きました!」


「おー、それは良かった! それじゃあ言葉通り楽しみますか!」



 ~~~


「え、この家? あの家なの、彩葉君の家ってあの家なの?」


「うん、そうだよ。どうかした?」


「いや、ちょっとびっくりしただけ……あ、あの豪邸そうだったんだ。みんなが御城って呼んでたあの豪邸……すげえ、すげえ」


『福永先輩すごい……流石理事長の孫……』



 ☆


「それではえっと……パーティーの開幕です! イエーイ!」


『イエーイ!!!』

 色々なことに配慮した結果、全然言う事が思いつかなくなったらしい彩葉のその言葉でパーティー開幕の号砲が打たれる。


 彩葉の大豪邸の中にある大広間で始まったそのパーティーには種類様々で大量の料理が並んでいて……相変わらず凄いな彩葉の家は。初めて来たであろう海未の友達3人と梓はかなりびっくりしてたし、何なら固まって隅の方でちっちゃくなってるし。

 そんなに緊張する必要ないよ、あくまで彩葉の家なんだから! 友達の家に来てるだけなんだから緊張しないで大丈夫!


「いや、でも……こ、怖いじゃん慶太。こんな家、マナーとか……ねえ、みんな?」


『うんうん!』


「大丈夫大丈夫! この前家の中でバトミントンしてても、お風呂でバレーしてても何も怒られなかったし! だからそんな事気にしなくていいよ、普通に自由でいいよ!」


「え、でも……てかそれは……」


「おーい、慶太! こっち来なよ、何してるの? 美味しい料理いっぱいあるからこっちおいでよ、ボク達と一緒に食べようよ!」

 委縮する初体験組にそう言ってる僕を呼ぶのは口の周りにいっぱいソースをつけて手をべとべとにした彩葉。

 何でこの短時間でああなれるかなぁ……でもこれで緊張とかしないでしょ、みんな!


「兄さんの言う通りです。みんな、行きましょうよ。美味しいですよ、海未も自由に飲み食いしてますし。海未と一緒に楽しみましょう、みんなで!」


「ま、まぁ、海未ちゃんがそう言うなら……えへへ、楽しめるかな? 怖いけど、自由、楽しもう!」


「そ、そうだね! 海未ちゃんと、みんな一緒なら私も怖くないかも……えへへ、海未ちゃんエスコート頼みます! まだちょっと緊張してるし」


「はい、任せれましたです、みんな。それじゃあ行きますよ、あそこにステーキとお寿司の最強ゾーンがあるです。まずはあれを目指しましょう! あれ食べて、緊張ほぐしましょう!」


『ステーキ!!! お寿司!!!』


「ふふっ、目が輝いてきましたよ、みなさん! それじゃあお兄ちゃん大好き倶楽部出動です! レッツゴー!」


『ドンキ! キリシマ!!!』

 海未のお誘いに目を輝かせた透ちゃん含む友達達はそのままずんずんと進軍を進める。良かった、あそこは海未が居れば大丈夫だろう。


 川崎ちゃんは彩葉と競うように自由にもきゅもきゅ食べてるし(弟たちは親戚の家に遊びに行ってるらしい)、良哉カップルはいちゃついてるし、もう大丈夫だね。


「ふふっ、あそこは仲良しだね……それじゃあ慶太、私も遠慮せずに何か食べに……」


「待って、梓。梓はちょっとだけ待って欲しい」

 さっきまでの緊張していた表情から一転、柔らかくなった表情でご飯を漁りに行こうとする梓を止める。


 急にストップをかけられた梓は困惑した表情で、

「……え、なんで? 良いじゃん、食べに行こうよ!」


「ううん、良いんだけど、違う……大事な話、あるから。聞いてほしい話があるから」


「……え? 大事な話?」


「うん、大事な話……ちゃんと伝えなきゃいけない話」

 ……今日でちゃんと気づけたそんな想い。

 ちゃんと梓に伝えたいから。



 ★★★

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