第60話 お疲れ様でした!
「ね~、千尋ちゃん? これも千尋ちゃんがやった事でしょ、これも千尋ちゃんの仕業なんでしょ? いろんな人が千尋ちゃんにやられた、って言ってるけどどうなのかな? 詳しく聴く前にまずは、答えてくれる?」
「え、あ、いや、そ、それは……そんな事私……」
「何? ハッキリ言ってくれないとわかんないんだけど? ハッキリ言いなよ、ここは学校じゃないんだよ? ちゃんと言わないと、誰も許してくれないよ? 嘘ついたらその分、自分にかかる罪が大きくなっちゃうよ?」
「……わ、私がやりました。私が全部、やりました……全部私が悪いです!」
―と、とにかく今は服従してやる、今は認めないとなんかヤバそうだから一旦は認めてやる!
―でも私は悪くない、悪くないから……だから、だから、だから!!! 絶対に復讐してやる、絶対に……絶対に!
「……なーに、そんな悪い顔してるの? 何か企んでる……変な事企んでたらまた同じような事なっちゃうよ?」
「し、してませんよ……何も考えてません」
―私はあんまり犯罪とかわかんないけど、無罪で入れられるんだからどうせ執行猶予とか保護観察みたいなやつになるんだろ、私は! それか不起訴で何もならずに世間に出れる……そうなったら警察も訴えてやろう!
―もちろん私の金づるにならなかったあのクズどもも、この写真を盗撮したクズも! 全員を訴えて全員に復讐してやる、全員に痛い目を見させてやる! この私に逆らったこと、骨の髄から後悔させてやるんだ……ぐふふふふ……
「絶対何か変な事考えてるでしょ、この子……おおかたすぐに釈放されるとでも思ってるのかな? 自分は未成年の女の子だからそんな大きな罪には問われないとか考えてるのかな? そんな風に自分の罪を認識せず、自分だけは大丈夫なんて考えてるのかな?」
「そんな事させないよ、絶対にそんな事させない……絶対に君の罪、償わせてあげる。今でさえ二桁で、これからどれだけ余罪が出てくるかわかんないけど、その罪の数だけどれだけ罪が重くても償ってもらう。君のやったことはそれだけ凄い事なんだから」
「絶対に逃がしはしない、こんだけ被害者がいるんだ。君のやったことがどれだけ酷い行いだったのか骨の髄までちゃんと反省するまで許さないよ。もしそれが出来ないようなら、その性根から叩き直してもらえ。君のような考えと所業が許されるような甘い国じゃないんだよ、ここは」
☆
「それじゃあ、みんな今日はお疲れ様。色々話してくれてありがとうね、あの子は多分普通に罪に問われると思うよ、刑事罰ってやつ! 結構余罪もあったみたいだし。なんか20件以上の恐喝と暴行とか……あっと、これは言っちゃダメな奴だ! ごめん忘れて! そうだ、送って行こうか、パトカーで!」
「アハハ、遠慮しときます。迎えも来てるみたいなんで」
警察署内での聞き取りと治療から解放されて夕暮れの時間、警察署の玄関でそう元気よくまくしたてる婦警さんに少しびっくりしながら、ひらひらと遠慮の手を振る。
千尋の事を聞かれて、今日の暴力事件の事を聞かれて、その他もろもろまで……色々聞かれて疲れてるし、海未と梓もなんだか疲労困憊してるみたいだし。
そんな時にパトカーで帰ったなら気が張っちゃって余計に疲れが溜まっちゃう、周りから見られてるみたいで身体が強張っちゃう。
だからパトカーは遠慮します、それに梓の両親さんが来てるみたいだし。連絡受けてから、ずっと近くの駐車場で待機してたみたいだし。
「そっか、それは残念? でもありがとね、今日は色々話してくれて! また何かあったら連絡するかもだけど、その時はよろしくね!」
『はい! ありがとうございました!』
「うん、じゃ~ね~! 悪い事しちゃダメだよ~!」
そう気楽そうに手を振る婦警さんに苦笑いして、警察署の外に出る。
いやー、今日は大変だったな、色々……でもこれで色々脅威は過ぎ去った。
だから明日からは安全で、もっと楽しい生活が待ってる! これからもっと幸せな生活が待ってるんだ!
「ふふっ、慶太楽しそうだね! そんなに嬉しかった?」
「いや、嬉しいはちょっと不謹慎で失礼だけど……安心した感じかな? これからもっと中学校の時みたいに梓と一緒に遊べるって思ったら嬉しくなっちゃったかも」
「え、ホント? それなら私も嬉しいかも、慶太といっぱい一緒に居れるの私も嬉しいかも……もっともーっと、慶太と過ごしたいかも」
「うん、僕も。だから今日もこの後……って痛っ!? な、何?」
ふわふわと指を絡めながらそう言う梓を誘おうとした瞬間、わき腹に走る鋭い痛み。
海未がギュッと僕のわき腹を強く握っていて……何、どうしたの海未?
「……別にです。なんか海未が仲間外れにされてるみたいでいやになっちゃっただけです。もうちょっと海未とも話して欲しいなぁ、って思っただけです。別に深い意味はないです。なんか寂しくなっただけです、別にいいですけど」
「……ふふふっ、ごめんよ海未。海未と一緒に居れるのも嬉しいよ、でも海未は当たり前だから。海未は僕の妹だから当たり前にずっと一緒だよ」
「……それはそうですけどなんか……でもいいです。梓さんなら良いんです……私も兄さんと梓さんと一緒に居るの嬉しくて大好きですから。梓さんと兄さんと一緒の時間が私の一番の幸せですから」
少し拗ねたように僕の腰をギュッと握っていた海未が、ふわっと柔らかいいつもの笑顔で僕と梓に微笑んだ。
……僕も幸せだよ、みんなといる時間が。だから帰ろう、僕達の家へ……そしてすごそう、作ろう幸せな時間……でも今はちょっと眠いかも。
車内、慶太就寝中……
「……で、梓さんはいつ兄さんに告白するんですか? 海未は悔しいですけど、やっぱり梓さんなら海未も嬉しいですから。梓さん以外なら嫌ですけど」
「あ、ありがとう海未ちゃん。でもそれは、その……ど、どうしよう? もう大好きとか言っちゃったし、二人でいると幸せとか言っちゃったし、言ってくれたし……こ、これでよくない? もう私と慶太付き合ってることにならない?」
「なりません、ダメです。兄さんはそう言う事平気で言う人ですから、多分意識してませんよ、梓さんの事。ちゃんと言わないとわかんない鈍感さんですし、兄さんは。だから半分無意識です、ちゃんと意識させてあげてください」
「……け、慶太ぁ……ど、どうしよう、本当に?」
「zzz……zzz……」
☆
「ふわ~、ねむ……ってあれ? 誰かいない、家の前? なんかいっぱい人がいる気がするんだけど?」
梓の両親に送ってもらって、もうすぐ着くよと起こしてもらって家の前、なんか妙な人だかりが出来てることに気づく。
あれ、何だろうこの人? もしかしてカメラとか……そんなわけないか。
「これじゃ車止められないわね。ちょっとこの辺で降りてあの人たちどかしてくれるかしら、慶太君?」
「あ、はいわかりました。それじゃあちょっと行ってきます……あ、海未と梓も一緒に来る?」
「うん、私も行く! 慶太一人じゃ大変だろうし!」
「わ、私もです。兄さんだけにお家の事、任しておけませんから」
そう言ってくれる頼もしい二人を引き連れて、車の外へ。
野次馬さんだったらめんどくさいけど、それ以外なら……ってあれ? あのシルエットってもしや……あ、あれ?
「遅いなぁ、もしかして……って慶太! 慶太が帰ってきた、やっと帰ってきた! お帰り、慶太、それに海未ちゃんと梓ちゃん!!! お帰り、お疲れ! よく頑張ったよ、みんな!!!」
「お帰り高梨兄妹と、えっと……東海林さん、だっけ? お帰りなさい、お疲れさま! 良く生きて帰ったな、高梨」
『お帰り海未ちゃん!!! それにお兄さんとお姉さんも!!!』
「……み、みんな? なんでここに? なんでいるの?」
「な、何で透ちゃんに麻衣子に志保……それに彩葉さんまで……ええ、なんで?」
「……わ、私の友達はいない……当然か……なんか悔しい」
僕の家の前にいたのはいつもの友達―彩葉に川崎ちゃんに良哉カップルにそれに海未の友達3人。あ、あれ? なんでここに? 海未も梓もわかんない、って風に固まってるし、じゃあなんでいるのみんな?
「何でって決まってるじゃん! 慶太が怪我したって、事件に巻き込まれたって聞いて、いてもたってもいられなくなって……って本当に怪我してる! 顔怪我してる、大丈夫だったの慶太? 海未ちゃんと梓ちゃんは無傷!?」
「アハハ、彩葉焦りすぎ。大丈夫、みんな平気だよ。その……千尋関連の事で色々あったけど、でも大丈夫。元気です、意外とそんなに怪我してなかった! ね、海未に梓?」
「は、はい! 私は無傷です、兄さんのおかげです!」
「うん、私も怪我してない……ちょっと怪我させちゃったかもだけど」
「良かったぁ!!! 良かったよ、慶太が無事で!!! ねえ、みんな!」
『YES!!!』
……なんか恥ずかしいな、こんな風にやられると!
いや、心配して、それで喜んでくれてるのは嬉しいんだけどでも……なんか恥ずかしいです、でも無事です! 心配してくれてありがとう!
「うん、良かった、本当に……それでね、ここに来た本当の理由だけど……パーティー、しようと思って! みんなでお祝いの楽しいパーティー開催しようと思って! そのお誘いに来ました、みんなでパーティーだよ!!!」
『レッツパーティー!!!」
『……ぱ、パーティ?』
仲良くみんなでパーティーと叫ぶ友達に、僕達3人は首を傾げた……な、なんのパーティーですか? 梓は誕生日過ぎたし、僕と海未はまだだよ?
★★★
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