第59話 今が幸せだから
ショッピングモールの2階には近くの警察署からたくさんの警察官さんが集まってきて。
「ちょっと待って、なんで私が!!! なんで私が連れていかれるの、おかしいでしょ! おかしいおかしいおかしい!!! おかしい!!!」
「はいはい、暴れると罪を重ねるよ~。ダメダメ~、おとなしくしてね~。君には聞きたいことも聞かなきゃいけないこともいっぱいあるんだから~」
一人では制御できそうにないくらいに暴れていた千尋も何人かの警察官さんに取り押さえられて、ようやく静かに……なることは無く、いまだにガンガンと警察官さんの言葉も無視して暴れ続ける。
「ハァ!? 私何も悪いことしてないんだけど!? 私は正義の行いをしたの、私がしたことの何が悪いの!? 悪いのはあっちでしょ、あっちのクズ達でしょ! あのクズは私の事叩いたのよ、私の事侮辱したのよ、私に従わなかったのよ! あのクズどもの方を捕まえなさいよ、無能警察が!!!」
「……随分とこじらせてるみたいだね、君は。こりゃあの話以外にも余罪が見つかりそうだ」
「ハァ、何!? ふざけんなふざけんなふざけんな!!! ふざけんなよ、このバカ!!! 私があいつらに生きがいを与えたんだぞ、私のおかげであのクズは生きる意味を持ってたのに! 私がいなくなったら生きる価値がないクズが量産されるんだぞ!!!」
「もう、好きかって言わない! ほら、早く歩いて暴れちゃダメ! 本当にそう言う事言っちゃダメ、早く歩く!」
警察官さんに捕まってもなお、色々暴言を吐く千尋を呆れた様な表情と声で連行していく数人の優しそうな警察官さん。
「大変だね、警察さんも」
「ですね、海未には無理そうです。怪我とかしちゃいそうですし」
「そうだね、すごく大変そう。あと海未は警察官はダメだよ、もっと安全な仕事についてね」
良かった、警察官さんが優しそうな人で……僕のイメージの警察官さんって大阪府警だからそんだけ暴れるとまた殴られてめんどくさいことになる気がしてた。
警察官さんが不利益を被るそんな大変な展開になってしまう可能性があったから。良かった、警察官さんが理不尽に叩かれる未来が無くて。
そんな事を考えながら、ぼけーっと考えながら、梓と海未とこっちになんか色々もっと向かってくる婦警さんを待っていると、ばっちりと連行される千尋と目が合う。
その目は理不尽に怒ってるようで、自分の扱いに納得いっていないようで。
そんな血走った目で僕を見つめた千尋は僕に向かって大きく怒声を浴びせる。
「なあ、お前! そこのクズだよ、そこのクズ男! お前は私の事が好きなんだよな、私の事を愛してるんだよな!!! そう言ったよな、絶対そう言ったよな! だったら助けろよ、私の事助けろよ! 私の事大好きなんだろ? 大好きな私が捕まってるんだぞ、助けに来いよ、男なら! それなら金づる以上も考えてやるぞ!!!」
「……ホント都合良いよね、千尋は。あれだけ殴っといて、あれだけ罵倒しておいて……お断りだよ、もうやめて。僕千尋の事好きじゃないし、全然好きじゃないし、むしろ嫌いだから。だからそう言うのやめて、気持ち悪い」
まだそんなこと言えるなんてホント凄いよ、逆に尊敬しちゃうよ千尋の事。
そんなわけないじゃん、さっきも言ったけど嫌い、大嫌いだから!
「ハァ、何いってんだよ、ふざけんじゃねえぞお前! お前は……ちょ、離せこいつに話があるから! お前言ってだろ、私といると幸せって、私といるだけで嬉しくてハッピーな気持ちになるって! 気持ち悪かったけど! 嘘だったのかよ、それは!!! 嘘つくなんてホントクズだな、クズクズクズ!」
「あんまり暴れない方が良いよ、罪増やすのもったいないし……あのね、確かに昔はそう言った。確かに昔は千尋の事が好きだったし、千尋と一緒に居れるだけで幸せだった。千尋と一緒に居れるなら、どんなことがあっても良いと思ってた」
「おいおい、そうじゃねえか! そうだろ、だから私と一緒に居るのが幸せなら私の事、私の代わりに……」
「でも今は違う。今僕はすごく幸せ。海未と梓と彩葉と、他の友達みんなと気遣いとかそう言う事何にも気にせずにいっぱい遊んで、いっぱい楽しんで、学校とか放課後とかに色々話して、一緒にご飯食べて……そんな何気ない日常が今が僕の幸せ。千尋が居なくても今の僕はすっごく幸せだから。だからもう二度と僕と関わらないで。僕の幸せにもう千尋は必要ないんだ」
隣で心配そうに僕の腕をギュッと掴む海未、ニヤッとどこか楽しそうに笑う梓。
いつも学校とかで遊ぶ彩葉に良哉に川崎ちゃん、それに他のみんなも……みんなで何気なく過ごす時間が何よりも楽しくて、幸せだって気づけたから。
だからもう千尋は必要ない、いらないんだ……僕は僕だけで自分の幸せ、見つけることが出来たから! 本当に幸せで楽しい場所に今いるんだから!
そんな僕の言葉を聞いても諦めきれないのか、千尋はドタバタと暴れて。
「ハァ、何だよそれ、何だよそれ!!! おいおいお「はーい、もうお話終わり、もう行くよ! 暴れないで、もう暴れちゃダメ……実力行使しちゃうよ!」
「おい、離せって、このゴミクズ! クズポリ公、離せ……ひぃ!?」
「おい、あんまり調子乗んなよ? 女子高生だからって少し優しくしてたけど、これはダメだ……もう絶対容赦しないからな。自分の犯した罪、ちゃんと感じさせてやるからな」
「はえ、あえっ……はぇ……」
「……よ~し、行くよ~みんな! それ連れてけ連れてけ……あ、ちゃんと裏口使うよ! アイドルを見に来てる人にこんな汚いもの、見せちゃいけないからね!」
恐ろしい声と顔で凄んだ数人の警察官さんに最後まで暴れまわっていた千尋が気力を無くしたようにトボトボと連れていかれていく。
良かった、これで一件落着、色々解決! 僕と海未も学校に行けます!
「あ、君たちもちょっとお話聞きたいから私たちについて来てね。特に男の子、君の怪我、見た感じ結構酷いから! ちゃんと治療するからね、勝手に帰っちゃダメよ!」
『はーい、わかってます!』
「もー、本当にわかってるんだか……でもよく頑張ってね、君たち。偉いぞ、すごいぞ、頑張った!」
『えへへ、ありがとうございます!!!』
なんか婦警さんに褒められると照れるな、なんかすごく照れちゃう!
これだけで頑張ったかいがあったというか、この言葉だけで……やっぱり警察さんとかに褒められるとすごく嬉しい!
「もー、兄さんは……ふふっ、やっぱり兄さんです! やっぱり私の大好きな兄さんです……私も兄さんと一緒に居れてすごく幸せです。兄さんと友達と仲良く過ごせて最高に幸せ感じてます」
「そうだね、慶太は慶太だ! いつも変わらない、ちょっとダメだけど面白くてカッコイイ慶太だ! ちなみに私も幸せ! また慶太と海未ちゃんと仲良くなれて、一緒に遊んだり、デートしたり……そう言う時間凄く幸せ! 本当に幸せ!」
「もう、何二人とも? どうしたの急に……僕だって、幸せだよ。海未と梓と一緒で、大好きな二人と……大好きなみんなと一緒な今が一番幸せだよ!!!」
★★★
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