第44話 川崎ちゃんと嵐の前のなんとやら

「ん、お帰り姉ちゃんに智……って誰だあんた!? 姉ちゃんの彼氏か!?」

 僕の頭にも?マークが浮かぶ中、のっそりと部屋の奥からもう一人手前の男の子と同じ顔の男の子が現れて……え、本当に何?


「おいおい、慶太だぞ、こいつは慶太! 姉ちゃんの友達で同じクラスらしいぞ! そして俺とよく遊んでくれるいい人だ! 今日も遊んでくれるらしいぞ!」

 僕の困惑を察してかしてないか、隣の智樹がそう言ってくれる。


 その言葉にポン、と思いついたように手を打つ二人の男の子。

「ああ、慶太さんですか。聞いてます聞いてます、最近姉ちゃんと智樹たちが良く話してます。僕は姉ちゃんの弟でさらに双子の弟の康太です。よろしくお願いします、慶太さん」


「おー、あんたが慶太さんっすか! どうもっす、俺は双子の兄の健太っす! よろしくっす!」

 そう言って軽快に楽しそうに自己紹介……ああ、なんか双子の兄弟がいるって言ってた気がする! でも何回か家行ってるけど、何で会わなかったの?


「それは僕たちが野球部だからですね。帰るの遅くなったり、友達の家でお泊りしたり……そう言う事が多いからです。今日は休みです」


「お泊りは野球部関係ないでしょ。取りあえず、ご存じ? の通り僕は高梨慶太、川崎ちゃんの友達です。今日は川崎ちゃんがいないから智樹と春樹の事頼まれてここに来ました、どうかよろしくね」


「ご存じっす! そう言う事っすか、てことは今日は姉ちゃん遅いんか……了解っす、慶太さん!」


「はい、お願いします、慶太さん……そして智樹と祐樹は園服を着替えてきてください」


『はーい!』

 康太君の言葉に智樹と祐樹の二人はてくてくと自分の部屋の方に向かう。


 二人が部屋からいなくなった直後、双子兄弟君が僕の方に寄ってくる。

「いやー、あなたが慶太さんっすか……ところで本音のとこどうなんですか? 本当は姉ちゃんと付き合ってるんじゃないっすか?」

 そういやらし気な顔で健太君の方が聞いてきて……だから付き合ってないって!


「ホントっすか? でもうちの姉ちゃん、可愛いっすよ?」


「まあ、それは確かに」

 川崎ちゃんは確かに結構顔は整ってると思う。

 クラスでの人気も高いし、可愛いとは思う。


「そうでしょそうでしょ? それに姉ちゃんおっぱいもお尻も大きいっすよ! 弟から見てもたまんないくらいっすよ! マジで包容力ぱねえっす!」


「……それはノーコメントで」

 いやまあ、確かに大きいかもだけど、でも多分梓の方が大きいし、それに……ていうか友達のそう言う事言っちゃダメ! 健太君もそう言う事言わないの!


「そうですよ、健太。姉ちゃんのおっぱいの話なんてしちゃダメです……慶太さん、姉ちゃんの本当に素晴らしいのは脚ですよね? あのスラっと伸びて、でも健康的なふとももがたまらなですよね、むしゃぶりたいですよね」


「……だからノーコメントで」

 ……康太君の方はまともかな、なんて思ったけどそんな事なかった!

 てか二人とも川崎ちゃんの事そう言う目で見ちゃダメだよ、姉弟でしょ君たち!


「いやー、そう言う目では見てないっすけど? でもやっぱりクラスの女の子と比べた時に……なあ、康太?」


「はい、姉ちゃんはちょっとね……中学生には目に毒ですよ」

 そう言って少し恥ずかしそうにはにかむ二人。

 まあ確かに川崎ちゃんは……ノーコメント。でも苦労はしてるんだな、本当に。


 そんな会話をしていると、私服に着替えた保育園児二人が戻ってくる。

「着替えたぞ……って何の話してるんだ、慶太?」


「ううん、何でもない。それより今日も仮面ライダーごっこするんでしょ? 何の役する、智樹に祐樹?」


「俺はセイバー!」


「ぼ、僕はジオウがしたい」


「OK,それじゃあ僕は敵役するね! ほら、いつも通り……」


「待っす、慶太さん! 俺も参加するっす、俺はフォーゼがやりたいっす!」


「それじゃあ、僕はウィザードをやりましょうかね」


「……健太と康太もやるの? 良いけど、本気出さないでね」


『わかってます!』

 そう言って元気よく返事する二人も引き連れて、川崎ちゃんの家にある畳の大広間でいつも通りに遊ぶ。



「おれおら慶太! とどめじゃ!」


「ちょ、タイムやばい! 慶太お兄ちゃん怪我する!」


「あはは、大丈夫っすよ、人間意外と丈夫っす!」

 ……そして案の定4人にボコボコにされて……運動部の中学生はせこいよ、本当に!



 ☆


「ごめん、高梨ただい……って何があったし? なんでこんなみんな疲れ切っとる?」

 しばらくの仮面ライダーごっこでヘロヘロになってソファでお菓子食べながら長い休憩をしているとようやく川崎ちゃんが帰ってくる。


「いやー、ちょっと遊びすぎてね……でも楽しかったよね!」


『はい! でも疲れた今は休憩!』

 僕の言葉に4人の男兄弟全員が元気に返事。

 楽しんでもらえたなら良かったです、僕はボコボコにされたけど!


「まあ、男の世界は私にはわからんからね……それじゃあご飯作るからちょっと待っててね」


「あ、僕も手伝うよ」


「いいよ、高梨は休んでて。お礼の意味も兼ねてるんだから」


「良いって。手伝わせてよ、川崎ちゃん」


「……そこまで言うなら手伝わせてあげる。それじゃあ、私着替えてくるから、人参切っておいて。袋の中に入ってるから」


「りょーかい!」

 そう言って階段を上がる川崎ちゃんに返事をしてそのまま袋からニンジンを取り出す。

 材料的に今日のご飯はカレーかな……あ、そうだ。海未に今日はご飯いらない、って連絡しておかないと!




「あ、そうだ川崎ちゃん。カギ返すよ、ありがとね」


「包丁使ってる今言うのは危ないぞ、高梨……それにそのカギは持っててくれ、高梨が持っててくれた方が弟たちも喜ぶ。うちのカギは4つあるから、一個くらいなくても大丈夫だ。いつでも出入りしていい、その方が弟も喜ぶし、私的にも負担が減る……だからお前が持ってろ、


「まあ、そこまで言うなら……って今名前で呼んだ? 名前で呼んでくれた?」


「呼んでない。気のせいじゃないか?」


「えー、絶対呼んだよ! 川崎ちゃんと仲良くなってもう長いけど、名前で呼んでくれたの始めたかも! これからも呼んでいいよ! あ、川崎ちゃんも名前で呼んでいい? えっと……」


「だから呼んでない、それに私の名前も呼んじゃダメだ、高梨! 私とお前は高梨と川崎ちゃん、これくらいの関係でいいんだ!」


「えー、ケチ!」


「ケチじゃないでーす……ほら、しゃべってないでさっさと手を動かせ」


「はーい」



 ☆


「……兄さん今日帰ってこないそうです。どうしますか、梓さん?」


「えー、そうなんだ……なんで?」

 だらしなくソファに寝転んでポテチを食べる梓さんが聞いてくる……この人はなんでこんな食べて太らないのか不思議です。


「友達の家でご飯食べるそうです……そしてこの友達が海未は気になります」


「なんで~? 良いじゃん別に、慶太が友達と仲いいのは良いことだよ?」


「いえ、この友達女の人なんです……私とも仲いいんですけど、すごく可愛くて梓さんぐらいおっぱいも大きくて料理も出来てホント凄い人なんです。それに兄さんはその人の弟君たちとすごく仲が良くて……もうわかりますよね、梓さん」


「……それはまずいね。私も頑張らないと……でもポテチはやめられない!」


「……栄養が全部胸に行くのは羨ましいです、梓さん」



 ☆


「ねー、千尋? 最近俺以外のやつとSEXしてない? ちゃんとした浮気してない?」


「な、何いってのあんた。そんなのしてないよ……てかあんたは金づるにも嫉妬してたし、嫉妬深すぎるよ、ちょっと」


「だって、心配だし。金づるって言葉ホントは俺好きじゃなかったし、俺だけと付き合ってほしかったし、そいつ可哀そうだし……あとパパ活とかそう言うのも俺は嫌だからね」


「ふふっ、大丈夫……私が好きなのはあなただけだから」

 そう、私が好きなのはこの人だけ。

 他の有象無象は全部私に金をくれるおもちゃ、私が認めたのはこの人だけなんだから。だから可哀そうとか思っちゃダメよ。




「はー、はー……これであいつも終わり、終わりなんだ……ふははは! フハハハハハ!!!」



 ★★★

 明日から最終章。

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