おまけ

「お兄さん、楽しかったですね! なかなかお星さまの事も勉強になりましたし……本当は恭ちゃんと一緒に来たかったですけど、でもお兄さんが来てくれてよかったです」

 プラネタリウムの上映が終わって、暗い室内が少しだけ明るくなったところで、透ちゃんが僕の手を握ったままはにかむ。


「僕もすごく楽しかったよ、ありがとね透ちゃん……それでそろそろ手、離してくれない? もう上映終わったし、ちょっと恥ずかしいし」


「え……あ、すみません、忘れてました。ごめんなさい、お兄さん……でもでもお兄さん! お兄さんの恭ちゃんとしての役割は完璧でしたぞ! 本当に恭ちゃんとデートしながらプラネタリウム見てるみたいでした!」


「あはは、それは良かった、僕で満足してくれたなら良かったよ。それじゃあ外でよっか、なんだか注目も浴びてるみたいだし」

 少し興奮した様に話す透ちゃんに注目が集まってきたので、そう言って外に出ることを促す。やっぱりこんな視線はあんまり慣れないね。


「およよ、そうですね。ここに長居しても仕方ないですし、それでは外に出ましょうか! 行きますよ、お兄さん!」


「そうだね、外でよう!」

 るんるんと楽しそうに出口に向かってスキップで歩き出す透ちゃんの後ろを僕も追いかけることにした。




「おー、お土産コーナーなんてあるんですね! ほうほう、恭ちゃんに何か買ってあげたら喜ぶでしょうか? この星のシャーペンなんか……いやでも恭ちゃんはこんなものでは……」

 外に出ると営業戦略ばっちりの位置に置かれたお土産コーナーに目を輝かせた透ちゃんが飛び込んでいく。

 僕も海未になんか買ってあげようかな、海未も星の事好きだし……あ、それより。


「ん~、どうしようかな、恭ちゃんは……」


「ねえねえ、透ちゃん。透ちゃんはここにあるもので何か欲しいものはない?」


「恭ちゃん……って何て言いました、お兄さん? 私に何か言いました?」


「うん、言ったよ。ここにあるもので欲しいものあったらなんか買ってあげるよ、って言った。なんかほしいものない?」


「あ、聞き間違えじゃなかったんだ……気持ちは嬉しいですけどそれは悪いですよ、お兄さん! そこまでお兄さんのお世話になるつもりはないですから!」

 僕の言葉に少し焦ったような表情を見せたけど、でもすぐにいつもの顔に戻ってそう言ってえっへんと胸を張る。


「そんなこと言わないでさ、貰ってよ、買ってあげるよ。それに今日は僕、弟君の代わりなんでしょ? だから何か買ってあげるよ、透ちゃんへの誕生日プレゼントで」

 さっき透ちゃん誕生日に何も貰えなかった、って言ってたし。

 それに海未の友達だし、これからも仲良くしてほしいし、それくらい安いものですよ。


「……ダメです、そんなとこまで甘えられません」


「甘えてよ、透ちゃん。今日は僕弟君の代わりだよ、弟君から誕生日プレゼント欲しかったんでしょ? だから何か買ってあげるよ、透ちゃん?」


「……お兄さんがそこまで言うなら買ってもらってあげますよ。買った貰ってあげるんですからね……私はこの星の模様の入ったヘアピンが欲しいです。これ可愛いので、これが欲しいです!」

 口をまごつかせながら、そう言って僕にその商品を渡してくる。

 分かった、これが欲しいんだね!


「ふふっ、了解。それじゃあ買ってくるね。海未には……このマグカップにしよ」

 海未のお土産も買ってそのままレジへ向かう。

 ちょっと強引かもだけど、でも喜んでもらえると嬉しいな!



「もう、お兄さんは……もう」



 ☆


「お兄さん、こんなプレゼントまで貰って、本当に今日はありがとうございました! 恭ちゃんとの仲直りも頑張ってみますね!」

 プラネタリウムを出て人通りの少なくなった道、透ちゃんがそう笑う。


「こちらこそチケットありがと。頑張ってね、弟君との仲直り」


「はい、頑張ります! それではお兄さん、また学校で……あ、そうだ!」

 そう言ってくるっと振り返って。

 夕焼けに照らされた透ちゃんの姿はかなり絵になって、少し見とれてしまって。


「……お兄さん?」


「ああ、ごめんごめん。ちょっとボーっとしてた、それで何の話?」


「もう、気をつけてくださいよお兄さん……その今日の事は海未ちゃんに内緒でお願いします。海未ちゃんには今日私と会った事、言わない方向でお願いします!」


「……なんで?」


「何でもです! 海未ちゃんに怒られちゃうかもですから……だからお兄さん海未ちゃんには内緒ですよ! それではまた学校ですよ、お兄さん!」

 そう言ってしゅっと、颯爽と走り去っていく。


「……なんでかはわかんないけど、わかった。じゃあね、透ちゃん! 今日は楽しかったよ!」


「私も楽しかったです、お兄さん!」

 走り去った透ちゃんに向かってそう叫ぶと、楽しそうな声が返ってきた。



 ☆


「ただいまー……って梓いるじゃん? なんだ、海未が出かけた相手って梓だったんだ、ちょっと残念」


「残念とは何だ、残念とは! 私でも嬉しいだろ!」

 家に帰るといつものようにソファに座っていた梓にそう言われる。

 今日は海未もデートかな、なんて思ってたけどそれだけちょっと残念。


「お帰りなさいです、兄さん……兄さんの期待通りのデートではなかったかもですけど、今日は梓さんと楽しく遊んでました。兄さんこそ誰とどこ行ってたんですか?」


「うーん……ふふっ、内緒」

 透ちゃんに口止めされたし。

 ここは黙ります、理由はわからないけど。


「何ですか、それ……それじゃあ今日は海未がお料理しますので、兄さんと梓さんはそこで休んでてください」

 可愛いエプロンの紐をきゅっと締めて、そのままキッチンの方へ向かう海未。

 今日はちょっと疲れたし、僕は休憩しようかな?


「ねえねえ、慶太海未ちゃんのデートって何? 海未ちゃん好きな人出来たの?」

 梓の隣に座ると、そう耳打ちしてくる。

 あ、梓には言ってないんだ。


「実はね、海未は彩葉の事が好きみたいなんだ。自分では否定してたけど、この前彩葉と付き合ったら~みたいな話してたし……だから確定だと思う!」


「え、そうなの……そ、それは大変になるかもね」



 ☆


「姉ちゃん、ちょっといいか?」


「……どうしたの、恭ちゃん?」


「その……これ! 姉ちゃんの誕生日プレゼント……何が良いかわかんなかったからクラスの女の子に手伝ってもらった。予定会わなくてプラネタリウムいけなくてごめん……でも姉ちゃんには最高の誕プレを……って姉ちゃん!?」


「もう、恭ちゃんやっぱり好き! そんな事考えなくていいのに、気持ちだけでも嬉しいのに……もう恭ちゃん大好き、ありがとう恭ちゃん!!! プラネタリウムの事はもう気にしないで、またお姉ちゃんとデート行こうね!!!」


「ちょ、姉ちゃん抱き着かんといて、苦しいし恥ずかしい……でも良かった……俺も姉ちゃんとまた姉ちゃんとお出かけ行きたい」


「恭ちゃーーーん!!!」


「だから抱き着かんといてや、姉ちゃん!!!」



 ★★★

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