おまけ+鈴木千尋

「それじゃあ二人とも気をつけてね」


「大丈夫だよ、慶太! ボクのお家の車だもん、セキュリティは万全さ!」


「ハハハ、それもそうか」

 夜、夕ご飯を食べ終わった梓と彩葉が帰るために黒塗りの高級車に乗り込む。

 彩葉の家は学校の理事長ってのもあって大金持ち、この前ベンツに乗った時は本当に落ち着かなかった。


「それじゃあ慶太バイバイ! また学校で会おうぞ! 海未ちゃんもまたね!」


「慶太、またお家遊びに行くね……それじゃあ、またね」


「うん、じゃあね」


「サヨナラです、お二人さん」

 彩葉と梓に手を振って、今日はサヨナラ解散の時間。


「ばいばーい! また会いに行くからねー!!!」

 車が見えなくなるまで、今生の別れみたいなことを叫ぶ彩葉にずっと手を振り続けた。



「……兄さん、兄さんは彩葉さんの事どう思ってますか?」


「急にどうしたの、海未……そうだね、ちょっとうるさいし、うっとおしいところもあるけどでもいい友達だよ。面白いし、趣味も会うし。高校では一番仲のいい友達かな?」


「そうですか……それならもし、もしですよ? もし海未が彩葉さんと付き合うって言ったら、彩葉さんと一緒になるって言ったら……兄さんはどう思いますか? 兄さんはどうしますか?」


「え、本当に何、どうしたの? まぁ、海未の相手が彩葉なら僕は全く否定しないし、応援するよ! 彩葉はなんやかんやで優しいし、それにお金持ちだしね。海未がそう言うのなら僕は応援だよ……ところで、海未は彩葉が好きなの? もしかして彩葉が好きなの、恋してるの?」


「いえ、言ってみただけです……兄さんの鈍感」




「……梓ちゃん、慶太の事好きでしょ? 慶太に恋してるでしょ?」


「え、急に何……?」


「ふふっ、答えて」


「……好き、だけど。ずっと大好きだけど。誰にも負けないつもりだけど」


「そっか……ふふっ、それじゃあライバルだね、ボク達」



 ☆


《ここから千尋視点》


 ネオン煌めく繁華街の裏側、人通りの少ない暗い道。

「き、君が千尋ちゃん? ず、ずいぶん若いね、本当に高校生みたいだ」


「ふふっ、この制服偽物じゃないですよ? という事でホテル行きましょ、ホテル!」

 話しかけてきたキモイおっさんに向かって、吐き気を我慢しながら、それでもこういう奴にはなれてるので100点のスマイルを返す。

 パパ活再開してもう何人も相手したけど、それでもやっぱりまともな奴は来ねえな。


 行為中はキモいけど、こういうおっさんのほうが金払いは良いし、それに社会的な地位とかそう言う言葉にも弱いし。

 だから金巻き上げるならこういう奴に限るってわけよ、それにおっさんも私みたいな完璧美少女とヤれて嬉しいだろうし。


「ち、千尋ちゃん、シャワー一緒に浴びようよ。ねえ、千尋ちゃん」


「ダメです! 今大事なところキレイキレイしてますから、入っちゃダメですよ、メ、です! すぐあがりますので、待っててください、きもちよくなりましょ?」


「ん~、うん! そ、それじゃあ待ってるね!」

 ……しっかし本当にキモいなこいつも。

 一緒にシャワーとか信じらんねえし、それに鼻息めっちゃ荒いし……決めた、こいつからは3桁取ろう。


 私は優しくて素晴らしい人間だから、相手の事も考えてあげていつもは20とか50とかしかとらないであげてるけど、今日は特別だ。

 こいつこんなにキモいから家族とかもいないだろうし、どうせVtuberとかそう言うしょうもなくて気持ち悪い物に金使ってるんだろ?


 そんなしょうもない毒にも薬にもならないところに金使うくらいなら私がもっと有効活用してあげる!

 おっさんの気持ち悪い趣味に使うより、私みたいな完璧美少女に使われる方がお金も幸せだと思うし……ふふっ、やっぱり私って超優しい!!!




「……ぐへへ、この年になって初めてだから、それにこんなかわいい子……バレない様にカメラ回しとこ! この子の事をこの日の事を忘れないように、いつまでもこれでデキるように……この位置ならバレないかな? この位置なら千尋ちゃんの顔も僕の顔もしっかり写るし……ぐへへ、千尋ちゃ~ん、今日は楽しもうね……ぬぺぺ」



 ☆


「……で、おっさん払えねえの? 100万払えねえの、私マジで高校生なんだけど? おっさん高校生とシたんだよ、私が被害届出せばあんた終わりなんだよ?」


「いや、でも君同意を……」


「同意なんてしてねえよ、耳にあんこでも使ってんのか、饅頭みたいな体型しやがってよ!!!」


「痛い、痛い……やめてください」


「ああイラつくイラつく! てめえみたいなやつ私は大嫌いなんだよ、うじうじしないで早く100万持ってこいや!!! 男らしく持って来いよ、お前みたい人間嫌いなんだよ!!! あんだろ、100万ぐらい! 持ってくるか捕まるかどっちにする? あ? あ?」

 いつものようにちょろっとやってそのままいつもの脅しタイムに移動する。


 こいつ童貞みたいで何にも気持ちよくなかったし、マジで最低!

 なんでこんな人間が生きてるんだよ、こういう人間は欠陥だろ、処分すべきだろ!


 価値無し人間排除……将来私が総理大臣になった時に初めにやる仕事はこれだな、きっと賛成してくれるだろう。

 そうすれば私みたいにレベルが高い人間だけ残って、この世界はよりよい物になる。


 それにこいつやあの金づるみたいに惨めな思いしてへこへこ思い出に這いつくばる生きてる価値ないゴミ人間も死んだ方がまし、って薄々自分でも気づいてるでしょ?

 こんな自分が生きてても意味ない、私たちみたいな人間に迷惑をかけるだけだ、不快感を与えるだけだ、ってわかってるでしょ?

 だからこの法律は良いものだ……人口が少なくなるのは難点だが厳選には仕方ないことだ。うちの人間も全員死ぬかな? 


「おい、おっさん! 持ってこいや早く!!!」


「おえ、あえ……も、持ってきます、持ってきます」

 蹴られた顔をパンパンにはらしたおっさんが息も絶え絶えになりながらそう言う……気持ちわる、本当に気持ち悪い! こういう人間マジでいなくなれ!


「ふん、わかればいいんだよ、わかれば! ほら、ここで待ってるか近くのコンビニで……あ、逃げたらどうなるかわかってるだろうな?」


「ひゃ、ひゃい……と、取ってきます!!!」


「15分以内だぞ? 時間伸びたら、倍貰うからな?」


「そ、そんなの……」


「あ? 本当は10分のところ15分にしてやってんだぞ、私の恩情だぞ? なんか文句言うのか、この場で警察に突き出そうか? あん?」


「ご、ごめんなさい……行ってきます」

 そう言って走り出したおっさん。

 本当に早く持って来いよ……私はタバコでも吸って一服しよう。


 カバンがおきっぱだが……ここは焼きあとつけるくらいで勘弁してやるか、私は優しいからな! ズタボロは回避してあげる、慈悲に満ちてるからな!




「こ、これで100万です、ちゃんとあります……」


「……確かに。それじゃあおっさん顔、私に近づけて」


「え、何ですか?」


「ふふっ、ご褒美だよ」


「え? そ、その……お願いしま熱っ!?」


「あはは、良い反応良い反応!!! キスされると思った? バカだねえ、焼き豚にするんだよ、あはは!!! あはははははは!!!」

 何かを期待するように顔を近づけてきた男の頭に吸っていたタバコの先端を突き当てる。良い反応だ、人の苦しむ声はホント素晴らしい! 

 チャーシューの完成だ……いやまだ未完成だな、もういっちょ!


「熱い、熱い髪が髪が……」


「あはははははは!!! あはははははは!!!」

 薄い髪をライターであぶってあげると、さらにいい声で鳴いて。

 あはは、何もできない無能のゴミカス人間だと思ってたけど、ちょっとは良いとこあんじゃん、このおっさん! 

 人が焼けてるの見るのも楽しいな、今度からもっとしようかな!!!



「あはは、ははっ……あー、笑わせてもらったぜおっさん! それじゃあ、これはもらって帰るから、おっさんもすぐ帰れよ……あ、警察には言わないであげる」


「は、はい……ううっ……」

 しばらくおっさんの焼ける音と匂いと鳴き声を楽しんだので、今日はもう帰ることにする、こんなおっさんと長くいる意味もないし。



「お、お姉ちゃんお帰り! 今日も遅かった、ね」

 家に帰ると妹がいた……なんでこいつまだいるんだよ!


「……話しかけてんじゃねえよ、ブスが! 早く死ぬか家出しろよお前、私の前に現れんな。どっか行けよ、マジで」


「え、いや、でも私お姉ちゃんの妹……」


「お前の事妹なんて思ったこと一度もねえよ。こんなブスで気持ち悪い人間が私と血がつながってるわけあるか……じゃあな、もう話しかけてくんなよ。私の前にも絶対あらわれるんじゃねえぞ」


「ううっ……」


「返事は! そういう所だぞ、気持ち悪い!!!」


「……はい」


「チッ、クソが……マジで早くどっかいかねえかな、このクソ女が……」

 ホント家ガチャ外してるわ、ホントクソだわこの家。

 早く総理大臣になって日本良くしないとダメだな……ざっと20年後くらいかな?





「ううっ、あの女、絶対……は、ビデオ! ビデオある、昔の僕ナイス、これにあいつの悪行と淫行が全部……!」


「……でも警察に突き出すだけで済ましていいのか? もっと被害者いるはずだ、この女はもっと社会的に殺してやらなきゃダメだ! 捕まっても高校生では大した罪にならないし、もっと絶望を与えないと、一生再起不能になるほどの絶望を!!!」


「……あの制服、近くの高校だよな……よし」



 ★★★

 そろそろ終わります。

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