第39話 修羅場!?
梓と彩葉、二人のAが初めての邂逅、お互いバチバチに目を合わせて。
『ねえ、慶太。誰この女の子?』
そうして二人同時にそう言って僕の方を真っ黒な目で見つめきて……なんか怖いし、めんどくさいことになりそう!!!
「ちょっと慶太、この子誰? 先週私とデーとしたばっかりなのにもう他の女のこともデートしちゃうの? ていうか昨日も私とデートしたよね? なんでそんなことが平然とできるの、そんな男の子だったの慶太は?」
「梓ちょっと落ち着いて。こいつはね……」
「ちょっと慶太、この女の子誰? ボク以外にもこの子とデートもしてたわけ? それは僕ちょっとショックだな、ボク以外ともダブルブッキングしてたなんて! ボクを裏切ったの慶太!?」
「彩葉はちょっと黙ってて! しゃべるとめんどくさいことになるから!」
梓は良いとして彩葉までなんでそんな感じなんだよ!
彩葉がそんな感じだと話がめっちゃこじれちゃうよ、そっちが男だと言えばいい話なのに!
「ちょっと慶太、その言い方はないんじゃないかな! 慶太はちょっと黙ってて、ここからは私とこの子の話にするから!」
「いや、その……」
「シャラップ!!!」
「……はい」
梓の迫力に押されてん僕はぴゅひゅと口を噤む。
怖いよ、梓さん……でも二人で話されるともっと怖いことになりそうだけど。
「ふー、それじゃあ……ねえ、彩葉さんといったかしら? あなたは慶太とどういう関係なの?」
「君こそ……梓ちゃん? あなたこそどういう関係?」
「私は慶太と家族ぐるみの付き合いをしている中学の同級生の東海林梓です! 海未ちゃんともめちゃくちゃ仲いいし、それに先週は慶太とお出かけしました! 一緒に動物園行って映画見てついでに夜ご飯もごちそうになりました!」
「へー、そうなんだ! じゃあ僕と似たような関係だね! 僕は慶太の同級生で、福永彩葉って言うんだ! 僕も慶太の家族と仲良しだし、海未ちゃんともかなり仲がいいよ! 今日も慶太とデート中だったんだ……さっきの慶太すごかったな! 僕の事可愛い可愛い、って褒めてくれて、いっぱいいっぱい……慶太凄かったな!」
そう言った彩葉はニヤニヤ、梓はニヤニヤ笑顔を崩して僕の方をギロリ。
……二人とも嘘はついてないんだけど、本当の事なんだけど!
彩葉についても本当の事なんだけど!
「あの、梓さん、その……」
「だから慶太は黙ってて!」
「あ、はい、すみません……」
言い返そうとしても梓が怖すぎる!
何も言い返せないよ、こんなこと言われたら!
「それにね、慶太はボクとのデート楽しみだったらしいんだ、ずっと! 千尋ちゃんと別れる前から何度もデートしてくれたけど、でもやっぱり別れた後はもっと特別って言うか……ふふっ、そんな感じのこと言ってくれたし、ボクも思うんだ!」
……言ってねえよ、そんな事!
彩葉はややこしい言い方するな、デートじゃなくて僕と彩葉は男友達でしょうが、普通に遊んでるだけでしょうが!
それに楽しみとか別れた後は特別とか言ってねえよ、マジで!
「ハァ、何それ、慶太そんなこと言ってたの!? も、もしかして慶太が千尋ちゃんと別れた本当の理由って……私たちには色々言ってたけど本当は……慶太! どういう事なの!? ちゃんと説明してよ慶太!!! 私とは遊びだったってわけ!?」
でも僕の心の声なんて届くはずもなく梓はギロっと濁った怖い目で僕の方を睨んできて。
さっきから説明しようと思ってるんですが梓が……とは言えないので、僕はこほんと咳払いしてもう一度梓と向き合う。
「あのね、梓、色々誤解してる。そのね、彩葉は……は!?」
説明しようとした時、周りからとんでもなく痛い突き刺さるような視線が飛んできていることに気が付いた。
周りを見渡すと、彩葉と梓の言い争いに気が付いたのかぞろぞろと野次馬が集まっていて。
そしてその目はこの中で唯一の男に見える僕の方を厳しく糾弾するように睨んでいて……やばい、これは大変だ! 僕が二股最低野郎みたいになってる、何言っても言い訳にしか聞こえなくなる奴だ、これ!
「と、とにかく二人とも! 一回ここを離れよう、ちょっと話の続きは別のところで!!!」
「ちょっと慶太、それじゃあ……!」
「ここで冷静な話できないでしょうが! 取りあえず、どこか違う場所へ……彩葉もついて来いよ、自分の荷物持って!」
文句言いたげに怒っている梓と少しうきうきした様に瞳を輝かせている彩葉にそう言って、僕たちはここを移動することにする。
「ねえ、慶太この事海未ちゃん知ってるの? 知ってるの、ねえ? 私はどういう感じだったの、ねえ!!!」
「……その辺も話すから待ってて」
移動中も梓に睨まれ続けて……怖いよ、怖すぎるよ、マジで!!!
☆
結局適当に二人と移動して着いた一回にあるファミレス。
「ドリンクバー3つで……」
「あとDXミックスグリルSPもお願いします! あとポテトも! 大盛で!」
僕の注文に合わせて梓が頭の悪そうな食べ物とポテトを追加注文する。
何だその料理とメニューを見てみればお値段何と2200円……ファミレスでしていい値段設定じゃないんだよ、それ。
「それじゃあボク飲み物取ってくるからね! 慶太何飲みたい?」
「いや、僕も自分で……」
「いいの、僕がとってきてあげる。ちょっと待ってて」
そう言って彩葉はテクテクと逃げるようにドリンクバーのコーナーに。
そして残されたのは僕と梓、それに気まずい空気感。
「あの、あず……」
「ずいぶん仲良くて、気遣いも出来る子みたいね。あの子が慶太の今の彼女? いつから付き合ってるの? 千尋ちゃんと別れるより前だよね? 私とデートする前だよね?」
「だから、梓ちょっと聞いて、あいつは……」
「慶太、千尋ちゃんと別れた本当の理由教えてよ。なんか千尋ちゃんの方が浮気したとか言ってたけど、本当は慶太の方が浮気したんじゃないの? 海未ちゃんは慶太に優しいからすぐ信じると思うけど、でも私はそこまで優しくないよ。ねえ、慶太本当はどうなの? 本当はあの子と付き合ったから別れたんじゃないの?」
梓の真っ黒な目は僕の方をまっすぐと睨んで。
絶対に自分の考えを信じている、そんなまっすぐな目で……ホント早く考え改めさせないと。
「あのさ梓、ちゃんと聞いて。僕と彩葉は同級生で、そもそも……」
「おまたせー、慶太! メロンソーダでよかったよね、慶太好きだもんね!」
男だ、と言おうとしたタイミングで彩葉が帰還、タイミングとしては最低最悪。
「……ってあれ? 二人とも空気悪いね、どうしたの?」
「彩葉さんは慶太といつから付き合ってるんですか? どれくらい前から付き合ってらっしゃるんですか?」
梓の冷たい、ストレートな声。
それに彩葉はニヤリと楽しそうに笑って……おい、余計なこと言うなよ!
「そうだね、ボクと慶太は実は半年……」
「彩葉、嘘つくな、余計なこと言うな! そもそもそんな事実ないだろ、どこにも!」
「えー、酷い! 慶太、ボクとは遊びだったの!?」
「変な言い方するなよ、わざとやってんだろ! そもそも遊びに決まってるだろ、だってお前は男なんだから! だからその……」
「慶太! そう言うのは絶対にダメだよ、絶対ダメ!」
しょうもないことを言う彩葉を咎めていると、ガシっと胸ぐらを梓に捕まれる。
「慶太、そう言うの言うのは違うよ! 失望したよ、慶太には……慶太はもっと素直で優しくてカッコイイと思ってたのに……そんなこと言う人だったの、そんなことする人だったの!? 失望した、本当にダメだ、何してたんだろ……ずっとこんな人……ハァ……」
そう言って悲しそうに顔を伏せて。
僕の胸ぐらをいつの間にか離して、そのままがっくりと項垂れて……もう、一人で暴走しすぎだよ、梓。
「彩葉、学生証出して」
「……うん、それそろやりすぎた感ある。これはボクも反省案件」
反省した様にぺこりと首を垂れる彩葉が素直に学生証を渡してくれる。
さてと……
「ねえ、梓ちょっと聞いてほしい」
「何、浮気男」
「浮気男……梓、ちょっとこれ見て。これ彩葉の学生証なんだけど、ここ見て、ここ。性別男、って書いてあるでしょ」
そう言ってつんつんと学生証の性別欄を叩く。
顔写真の下に彩葉の性別の男がしっかり刻まれている。
「……書いてあるケド。偽物? 浮気紛らわすために作ったの、わざわざ?」
「違う違う、マジで男なの。女装が趣味の変な奴だけど本当に男なの、今日もデートじゃなくて普通にお出かけというか、男同士で遊んでただけというか……なあ、彩葉」
「うん、そう。えっと、ごめんなさい梓さん。ちょっと遊びすぎちゃいました、梓さんの事からかってた。本当にボクは男で慶太とは友達だよ。海未ちゃんと仲いいのも本当だけど、それはよく遊びに行くからで……その辺も聞いてくれたらいいかな、海未ちゃんとかに」
珍しく素直に頭を下げて謝る彩葉に便乗して僕もぺこりと頭を下げる。
最初は信じるのあれかもだけど、でも信じて欲しいです!
「……マジで? 彩葉さん、嘘ついてない? 慶太にやばい時はこう言えとか言われてないの? 本当に男なの?」
「うん、本当に男だよ! 慶太とはただの友達だし、遊んでただけだから!」
「……じー」
彩葉の言葉に僕をじーっと見つめる梓。
そしてすぐに、また顔を背けて。
「……一回信じてみる。でも海未ちゃんに聞くまで信じないから、今日は慶太の家行くから」
そう言ってもう一度睨みつけてきて……お客さんが一人増えるくらいいいだろう、ちゃんと誤解は解かないと!
「お待たせしました、DXミックスグリルSPとポテト大盛でーす!」
「……これ慶太の奢りだからね!」
「え、なんで……払います、わかりました」
梓の気迫に押されて思わず了解してしまって。
その後パフェを追加注文した梓と3人分のドリンクバー約5000円を支払うことになった。
「……梓ちゃんよく食べるね、凄いねあの子」
「それは僕も思ってる。しかも多分昼ご飯食べた後だよ、あれ」
「ひえっ……」
★★★
感想や☆やフォローなどしていただけると嬉しいです
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます