おまけ+鈴木千尋 

「う~ん、やっぱり慶太のハンバーグ最高!!! 何個でも食べれちゃうよ、ほっぺがてるてる止まんない! さっすが慶太だよ、すごいよ慶太!!!」


「兄さん、海未のリクエストの天ぷらも作ってくれるなんて……ありがとうございます、すごく美味しいです! 混ぜご飯も最高です! 流石です、兄さん本当に嬉しいです!!!」


「褒め過ぎ褒め過ぎ二人とも……嬉しいけどさ、ありがと」

 僕の眼の前でご飯を幸せそうに食べるながら賞賛のコメントをくれる二人にそう答える。

 褒めてくれるのは嬉しいけどそんなに言われると照れくさいよ。


「でもでも、本当に美味しいんだもん!!! ねえ、海未ちゃん!」


「はい、すっごく美味しいです!!!」

 ニコニコ笑顔でご飯を食べてくれる二人を見ているとこっちまで幸せになってくる。


 今日の献立は混ぜご飯にアサリの味噌汁、サラダにハンバーグに天ぷらにひじきに……結構気合入っちゃってカロリーとんでもないことになってそうだけど二人とも幸せそうだしOKだね。

 梓はその前に焼きいももティラミスもたくさん食べてたし、最初から気にしてないのかも知れないけど。


 ……それにしても。

「海未ちゃん、ほっぺにソースついてる。拭いてあげるからこっち向いて」


「あ、すみません……ありがとうございます」

 こうやって二人が仲良くしてるのを見ると、何というか……


「……ふふっ?」


「どうしたの、慶太?」


「いや、なんだか二人が姉妹みたいだな、って。本当に仲いいからさ、二人とも。本当の姉妹みたいでちょっと嫉妬しちゃうな、って」

 二人ともすごく仲良くて、それで面倒見たり見られたりって感じで。

 そんな感じで姉妹みたいに見えちゃったな、本当に。


 僕の言葉に二人は顔を見合わせる。

 その顔はニヤニヤ楽しそうに揺れていて。


「姉妹だって、海未ちゃん! それじゃあ私がお姉ちゃんだね! 梓お姉ちゃんだよ、海未ちゃん!」


「ふふっ、そうですね。よろしくです、梓お姉ちゃん」

 そう言ってまた楽しそうに笑いだす。

 この二人が仲いいと僕も嬉しいし、このまま姉妹みたいにずっと仲良しでいてほしいな!!!



 ☆

《ここから千尋視点》


「ふわぁぁぁ……やっぱ入学式ってくそだわ、レベル低い奴しかいないしこんなくそ公立校なんかじゃ。ほんと最悪、マジで親ガチャミスったわ!」

 入学式が終わってHRが終わった後、廊下を歩きながらそうブツブツ呟く。


 中学の時私は悪くないのに転校させられて、そして迎えた高校生活。


 本当は私立に生きたかったんだが、親が私立に学費払ってくれないらしいし、パパ活も出来ないように制限されたからそんな金もねえし……あーあ、本当に最悪、最低の毒親だ。子供の自由を奪って、こういう奴がいるから子供が何とか言われる社会になるんだよ、ちゃんと反省しないとな!


「……はぁぁぁぁぁ」

 そして周りを見渡してもやっぱり全員低レベル、ゴミしかいねえなこの学校。流石公立高校、程度が知れてるって感じ。

 髪も誰も染めてないからか、私の金髪珍しそうに見るやつばっかだし……地毛だよ、地毛。お前たちとは生きてる世界が違うんだ。


 まあ多少はマシかな? って思えるやつもちらほらいるけど、この私に合うような奴はいないかな? 私の美貌があれば全部そのあたりのミジンコ以下だわ、やっぱり。

 それに金持ってる奴もいなさそうだし……ハァ、こりゃダメだ、こんなとこいたら女が腐る。


 親に言われた通りに高校時代はおとなしく過ごしてやろうかな、こんな高校じゃ出来るもんもできねえだろうし……

「あ、あの、鈴木さん、だよね? 鈴木千尋さん、だよね?」

 そんな事を考えていると後ろから声をかけられる。


 振り返るとさえない男と女みたいな顔してその男に「やめなよ、慶太! なんか嫌な予感する!」と言っている男……何だこいつら知らないんだけど。

 ていうかそのレベルでよく私に話しかけようと思ったね、逆に尊敬するわ……その勇気に免じて少しだけ話してあげる。


「鈴木千尋だけど……どうしました?」


「あ、あ、やっぱり! そ、そうだよね、う、後ろ姿とかオーラとかで一発で分かったよ! 僕、高梨慶太って言います……覚えて、ますか?」

 たかなしけいた?

 なんだそりゃ、聞いたこともねえや、ていうかこいつなよなよしてて気持ちわりいな! 

 何、私に運命感じてるとか……キモ、キモ!!!

 何だこいつ、最悪じゃん、最悪なタイプの男じゃん! 


「アハハ、やっぱり覚えてないよね……アハハ、小学校の時一緒の学校で助けてもらったことがあるんだけど、覚えてないかな?」

 そう言って頭をかく男……キモイキモイキモイ! 生理的に無理だわ、こいつは無理なにおいするわ!


 小学生の時なんて覚えてるわけないだろ、そんな時代!

 そんなときの記憶に縋ってんの? そんなときの記憶で生きてんの?

 中学の時楽しいこととかなかったわけ? 

 そんなしょうもない記憶で生きるなんて……なんてかわいそうな人なんだ。哀れで底辺で情けなくて人間のゴミで……涙でそう。

 世の中ってやっぱりダメだ、死んだ方が良い人間はいっぱいいる。


「覚えてないですけど……連絡先くらい交換しますか? 何か思い出すかもですし」


「え、え、えいいい良いの? 連絡先いいの、鈴木さん?」


「はい、良いですよ。それくらいなら」


「や、やった! そ、それならよろしくね、鈴木さん」

 ……でもそんなゴミの分際で私に話しかけてきたのはすごい勇気だ、褒めるに値する。

 だから少しだけ夢見させてあげる……それになんだかこいつ、金持ってそうだし。

 私の金づるとして使ってあげる……それがこのゴミの生きる価値だから。

 人間に生きる意味を与えてあげる……私は何て慈悲深くていい人間なんだろう!



「もう、慶太あの子絶対危ないって! 絶対危険だよ、なんか裏あるよ!」


「大丈夫だって、あの子は僕のヒーローって前言ったでしょ? だから大丈夫だよ、裏なんてないよ福永さん」


「……本当にそうなの? あとさ、ボク男だから、さんとかいらないから。名前で呼んでくれたらいいから!」


「……彩葉君?」


「呼び捨てでいい! ボクも慶太って呼んでるんだから慶太もボクの事呼び捨てして! 彩葉って呼んで!」


「……彩葉?」


「もう一回!」


「彩葉」


「もう一回! あと3回!」


「彩葉! 彩葉? 彩葉!!!」


「うん、合格、それでよし! よろしくね、慶太!」



 ☆


「ん~、お金がない」

 男の部屋で私は呟く。

 なんか最近、金ないんだよなぁ。


「そんなこと言って千尋ちゃん、どうせあるんでしょ? あの金づるの子からお金どうせ巻き上げてるんじゃないの?」


「最近それするのすら気持ち悪くなって、あいつの事生理的に無理になったからもう金取ることすらしてなかったんだよね。だからお金全然ないの、もう縁切ったし」


「ふ~ん、そっか……まあお金なくても俺は千尋ちゃんの事切ったりはしないよ」


「私もあなたの事大好きよ。あの金づると違ってあなたはカッコいいもの」

 そう言って近づいてきた彼氏とキスをする。

 少しタバコの匂いとお酒の匂い、そしてトリップするよなクラクラする匂い……やっぱり男はこうでなくっちゃ!


「ねえあなた、続きしない? ベッドの上で」


「うん、俺もそう思ってた」

 そしてそのままベッドの上で熱い一夜を過ごす。

 濃厚で飛んでしまいそうなそんな一夜を。



 ……でもお金がないのはかなり問題だ。

 しょうがない、あれ、解禁しますか……高校に入ってから私、もっと磨きかかってるし。



 ★★★

 久しぶりの千尋。

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