おまけ ちょっと前の話

《ちょっと前》


「兄さん、兄さん。少し大丈夫ですか?」


「ん、どうしたの? 何かあったの、海未?」

 引き続き皿洗いとか、気になったのでシンクもちょっと洗っていると、階段をてとてと降りてきた海未にそう聞かれる。


 なんだろう、梓となんかあったのかな?

 ケンカとかしてなかったらいいけど。


「いえ、私と梓さんは仲良しです、平常運転です。それでですね兄さん、今日は兄さんに夜ご飯を作ってもらいたいと思いまして。兄さんの夜ご飯が食べたいと思いまして……だから兄さん今日も夜ご飯、良いですか?」


「……なんだ、そんなことか。もちろんOKだよ! ていうか最初から作ろうと思ってたし! そう言う事なら僕に任せて!」

 本当は昨日梓に作る予定だったし!

 だから梓がきた今日、作るしかねえよなぁ!


「あ、そうだったんですか。それなら好都合です……それじゃあお買い物に行ってほしいです、今日は海未は天ぷらが食べたいです。タコさんの天ぷらとサツマイモの天ぷらが食べたいです」


「ふふっ、天ぷらね。わかった……でも今日は梓の食べたいものが一番だから、梓の方優先するよ! 梓に食べてもらいたいからさ、久しぶりに!」


「……そうですよね。梓さんのですよね。梓さんの食べたいものが一番ですもんね」


「うん、約束してたからね! おーい、梓今日の晩御飯何食べたい? 何でもいいよ、梓の食べたいもの!」

 そう階段の下から梓に問いかけるとしばらくの沈黙の後、「何でもいいよ! 慶太が得意な料理がいい! とびっきり美味しい慶太の得意料理が食べたい! 期待してます!」っていう返事が聞こえてくる……ふふっ、期待してくれてるんだ、嬉しいな!


「期待しすぎていいよ! とびっきりの作るから!」


「うん、期待しすぎとく! 慶太の料理期待しとくね!!!」

 よーし、梓にエール? プレッシャー? 取りあえず、気合の出る言葉も貰ったし、僕も気合つけて買い物行きましょうか! 

 梓に喜んでもらうために、僕も全力で料理しないとね?


「それじゃあ海未、買い物行ってくるね!」


「……はい、行ってらっしゃいです、兄さん」

 少し寂しそうな顔をして海未がひらひらと手を振る……ふふっ、大丈夫だよ、海未のリクエストの天ぷらも作りますから!

 だから今日のお料理は天ぷらと……あとはスーパーで考えようかな!!!


「……んっ」


「……どうしたの海未?」

 そう思って買い物に行こうと床に直置きしたままだったリュックを背負うと、海未にギュッと服を掴まれる。

「……」

 そして無言のまま、ギュッと握ったまま、その手を離さず俯いて。


「どうしたの、海未? 海未も一緒に買い物行く? というか3人で買い物行く? そっちの方が早く終わると思うし、梓の食べたいものも一発で分かるし!」


「マタアズササン……いえ、大丈夫です。兄さん一人で行ってください。海未は梓さんと一緒にいるので……だから大丈夫です」


「そっか……それじゃあ服、離してくれると嬉しいんだけど」


「……気をつけて行ってきてくださいね。ゆっくりしてても良いですけどなるべく早く帰ってきてほしいです……でもやっぱりゆっくり帰ってきてください」


「どう言う事、それ?」


「どう言う事でもないです、やっぱり……とにかく気をつけてくださいね。兄さんの夜ご飯、楽しみにしているのは梓さんだけじゃないんですから……海未も楽しみにしてますから。それじゃあ、行ってらっしゃいです!」

 そう言って少し乱暴に僕の服を離して階段をタッタと駆けあがって自分の部屋へ。


 ……わかってるよ、海未の食べたいものも作るし、ちゃんと海未の事も考えて作るよ。

 だから海未も楽しみに待っててね!



 ☆

《さらに前 28話のやつの後 だから梓視点》


「え、慶太……というか慶太と海未ちゃん高梨House? なんでそんな急に?」

 急に誘われるの嬉しいんだけど……もしかして何かある感じ?


「いえ、何もないです、何をそんなに警戒してるんですか? 昨日兄さんから聞きました、『梓さんが家に来る予定だったけど、でも無くなった』って……まさかほっぺにちゅーして恥ずかしくなったからとは思いませんでしたけど」


「あ、それは、その……ごめんなさい」


「謝らないでください、怒ってませんから別に。だからその埋め合わせです……久しぶりに来てください、私たちのお家に。兄さんも絶対、喜んでくれますから。何か作ってるみたいですしそれも食べれるかもですよ」


「……わかった、行く! 行きます、慶太に会いに行きます!」

 ……昨日の今日で慶太に会いにくい、って言うのもあるけど。

 緊張して変な感じになる可能性はあるけど。

 でも、やっぱり会いたいし! それに……約束したことも果たしたいし!


「そうですよね、ありがとうございます……本当は私が梓さんとしたいことがあるんですけど。兄さんじゃなくて私の予定なんですけど」


「ん? 海未ちゃん何か言った?」


「何も言ってません、お会計しましょう。 えっと、お会計は……」


「ちょっと待って! ここは私が払うよ、全額私に払わして!」


「良いですよ、そんな事。割り勘でいいです」


「ダメだよ、私の方が先輩だし、それに……私パフェ、食べちゃったし」

 割り勘にすると海未ちゃんの方が損するし、それに今からお邪魔になるわけで。

 今から慶太にお邪魔になるわけで。

 だからここは私が全額払うよ!


「……そうですか、ありがとうございます梓さん。お言葉に甘えますね、それじゃあ」


「うん、甘えてくだせい!!!」

 それにたまには海未ちゃんに年上らしいところを見せたいしね! 

 だから海未ちゃん、ここは私に甘えてね……パフェ頼んだのがちょっとだけ恥ずかしいとかじゃないからね!




「そうだ、梓さん。着いたときはお庭に隠れててください?」


「……なんで?」


「何でもです……そっちの方が面白くないですか?」


「そんな事ないと思うけどなぁ……」



 ★★★

 今日は時間が無かったのでおまけです、明日本編+新作かもです。


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