第21話 動物園だよ! ぱーと2!
「ん~、楽しかったね、鳥の楽園! やっぱりペンギンは可愛いし、ハシビロコウは動かない! そしてインコはよくしゃべる!」
鳥の楽園から出て空気が少し変わったところで、うーんと伸びをしながら梓がそう言う。
ショーとかはもうほとんど終わっていたせいで見れなかったけど、それでもやっぱり動物園は楽しい!
……でも、インコに「慶太はシスコン大魔神!」なんて喋らすのはやめてほしかったな、めっちゃ恥ずかしかったし。
「で、でも慶太だって『梓はスイーツクイーン!』って喋らせてたじゃん!」
「先に梓が仕掛けたことだし……それにスイーツクイーンは別に恥ずかしくないでしょ?」
「うん、嬉しい!」
屈託のない声と顔でそう言う……梓の悪口とか全然思いつかなかったからなんかそれっぽいこと言ったけど喜んでくれたなら良かった。
「クイーンだからね、スイーツの! 嬉しいに決まっておじゃる!」
「アハハ、良かった良かった。僕にもそう言ういい感じのあだ名みたいなのつけてほしいんだけど」
「うーん、キングオブシスコン?」
「……せめてシスコンからは離れてほしいな」
シスコンの自覚はあるけどそこまでじゃないでしょ、多分。
「いや、慶太はシスコンだよ、絶対。仲のいい私が言うんだもん」
「それあんまり根拠ない……まあいいや、この話はここで終わり。ほら、次のとこ行こ、動物園の動物エリア!」
「そうだね、行きましょうか! 私の楽しみは、レッサーパンダ! パンダより先に発見されたのにレッサーになった可愛い子!」
「可愛いよね、レッサーパンダ! 僕の楽しみは……」
そんな他愛のない話をしながら、一緒に次のゾーンへ向かう。
☆
「見てみて! カバだよ、カバがいるよ! ステロあくびして時速50キロで走れるカバさんだよ!」
「何そのカバ陽気最速?」
「ううん、普通のカバだよ、私のは意地HAだけど。ちなみにカバの噛む力は1トンでワニの次くらいに強いらしいね! あと泳ぎも上手! 特化レヒレの波乗り確定耐え!」
「何それカバ最強じゃん」
50キロで走れて泳ぎが得意で噛む力は1トンとか最強生物でしょ、カバ。
ていうか梓カバに詳しいね、半分ポケモンだけど。
「まあね、ポケモンのカバさんが好きで現実のカバも好きになったからね。ちなみに慶太はカバ好き?」
「僕は普通かな。あ、でも海未はカバのこと苦手だった気がする」
小さい頃家族で動物園に行ったときにカバにビックリしてしばらく泣いて僕に引っ付いてた、ってことがあった気がする。
「むー、また海未ちゃんの話だ。本当に慶太は海未ちゃんの事大好きだよね、やっぱりシスコン大魔神だ!」
「いや、これはエピソードだからしょうがないでしょ。その呼び方やめて」
「どうかね、海未ちゃんの話したくてうずうずしてたんじゃ……まあいいや。ちなみに動物で私を思い出すことは無いの?」
少し口を尖らした梓がむすーっとした声でそう聞いてくる。
動物見て梓? そんなの考えたことないかも。
「考えたことなくても何かないの、そう言うの?」
「えー、そうだな……あ、ハシビロコウ見たらさっきの梓の凄い変顔思い出すかも」
「今日の事じゃん、しかも悪い思い出! そんなのじゃなくてさ、もっとポジティブな奴ないの?」
「変顔ノリノリだったくせに……それに今日のだっていいじゃん、これから作っていけばいいわけだし」
「そうだけ……え、ちょっと待ってそれってそう言う……!?」
相変わらず口を尖らせながら僕と話していた梓の顔が急に赤く染まり、そのまま後ろにバックステップ……あれ、変なこと言っちゃたかな?
「いや、変な事とかじゃなくて、あ、そのえっと……お、終わり! もうこの話は終わりです、ハシビロコウでもいいです! あ、あっちにシマウマいるよ、見に行こうよ! 私はカレンミロティックが好きなんだ!」
わちゃわちゃと高速で手を振りながら、隣のシマウマのところに走っていく。
それは違う馬だし、急になんか変だし……まあいいか、僕はヴィルシーナが好き。
☆
動物園の目玉商品とも呼べるサバンナゾーンはまだまだ続く。
少し様子のおかしかった梓もシマウマのところで色々話していたら元の梓に戻ったみたいで、元気にプレーリードッグどこから出てくるかクイズなるものをやって、全外しして少し怒っていた。
そして現在ライオンの檻の前。
涼しめの気候もあって、百獣の王らしい堂々とした雰囲気を醸し出していた……こんなカッコいいのに熱いと猫ちゃんみたいにだらけて可愛いのずるいと思う。
「夏のライオンはネコ科って感じがして確かに可愛いよね! 私はそっちのライオンの方が好き!」
「確かにだらけ蕩けライオンも可愛いよね。全然威厳はないけど」
「威厳はないけど、可愛けりゃいいの……がおー!」
そう小さく叫んで僕の方に威嚇のがぶがぶポーズ。
「……?」
「んもう、なんか言ってよ慶太! ライオンがぶがぶポーズだよ、可愛いでしょ! ライオンいるからやろうと思ったの!」
「ああ、そう言う事ね。うん、可愛い86点」
「何その微妙な点数は! 高いけど後の14点はどこ行ったの! こんな点数つけるなら慶太の見本も見してよ!」
「高い点数つけたつもりなんだけどな……がおー?」
梓に言われたとおりにお揃いのポーズでがぶがぶがおー……したんだけど梓の反応は全然よくなくて眉間にしわを寄せていて。
「うーん、49点。可愛さも威厳も何も感じられないね、ダメダメライオンだよ、それじゃあ! もっと腰入れて、声も張ってがおー! だよ!」
「え、そんな真面目にやることなの、これ?」
「何事も真面目が一番だよ、全力だよ慶太! という事で一緒にやるよ、がおー!」
「それもそうか、ほだされてる気はするけど……がおー!」
「ガルルルル!!!」
『ぴえっ!?』
よくわからない理論で色々言ってくる梓と一緒にがぶがぶポーズをしていると檻の向こうのライオンが「これが本物だ!」と言わんばかりに突進しながら威嚇にも近い大きな鳴き声を上げたので、びっくりして梓と一緒に後ずさり。
こ、これが王者の風格か……すごいな、ライオン! やっぱり百獣の王だ!
「すごいね、ライオンの咆哮は! 生で見ると大迫力! 王様って感じ!」
「あ、そ、そうだね。少し……かなりびっくりしちゃった」
僕の服の裾を震える手でギュッと掴みながら、か細い声でそう言う梓。
「ふふっ、怖がり過ぎだよ梓」
「だって、その……食べられちゃうかと思って怖かったんだもん!」
「大丈夫だよ、檻あるしライオンは出てこれないし」
「そ、そうだけど……でも怖かったもん、あんな近距離ライオン初めてだし!」
まあ確かにめっちゃ近くまで来てたし、怒ってるように見えたし。
男でライオン好きだから僕は興奮したけど、確かに怖いわな、あれ。
「うん、そうでしょ……怖かった、本当に」
「アハハ、そっかそっか。これからは安易な挑発? ものまねするのはやめないとね」
「でも、だってぇ……まあでもそうだね、変なことしたから怒っちゃったんだね、ライオンも」
ずっと服の裾を掴みながら、少し元気になった声でそう言う。
怒ってるというか本物見せてくれた感じだけど、でも安易にものまねするのは危険だ、という事は何となくわかったよ。
「それじゃあ、大迫力ライオンも見れたし次のところ行こ。なんとここのキリンには餌やりができるらしい! キリンに餌やりとかファンタジーで僕興奮!」
「え、餌やり、キリンに? そ、それって大丈夫なの? 手噛まれたりしない?」
「ちゃんとしてれば噛まないよ。舌がザラザラしていて気持ちいいらしいよ!」
「ザラザラ……アハハ、ちょっとだけ怖いかも」
「でも何事にも挑戦で全力だよ、梓! 餌やりも絶対楽しい、鳥にも楽しくできたじゃないか!」
「キリンはサイズが違いすぎるよ……でもそうだね、何事にも全力で挑戦だ!」
掴んでいた服の裾を離して、楽しそうに右手を振り上げる。
良かった、完全復活梓みたいだ。
「恐怖はすぐに治るよ、いい経験でもあったしね……ねえねえ、これでさライオン見たら私の事思い出すようになったんじゃない?」
「ふふふ、なったかもだけど、怖がってたしこれも悪い思い出じゃないの?」
「ううん、これはいい思い出!」
☆
「ねえねえ、慶太見てみて! このペンギンのぬいぐるみ可愛くない?」
キリンの餌やりに梓がまたまたビビったり、レッサーパンダ追いかけたり、チンパンジーにじゃんけんで3連敗したり……心行くまで動物園を楽しんだ後のお土産屋さん。
さっき店員さんにおすすめされた3色3段ジェラートを食べながら梓がUFOキャッチャーをぺちぺち叩いていた。
今日の梓、本当によく食べるね、別腹もいっぱいでしょ、これじゃあ。
「動物園歩いてカロリー消費したからいいの! それより見てみて、このペンギンのぬいぐるみ! めっちゃキュートで絶対モフモフ……でも私UFOキャッチャー苦手。これ限定品、UFOキャッチャーにしかない、どうしよう?」
「良いのかなぁ、本当に……ぞれ欲しいんだったら取ってあげようか?」
「良いんだよ……って、え、良いの!? ていうか慶太取れるの!?」
驚いたように目を丸くしてガラス越しにぬいぐるみを見つめていた顔を僕の方に向ける。
僕を誰だと思ってるんですか、海未とか彩葉にゲーセンに行く度に色々取らされて鍛えられて腕を舐めないでくださる?
「本当に取れるの? 取ってくれるの?」
「うん、任されよ。僕のテクニックに酔いしれな!」
「……そのセリフは少し気持ち悪いかも」
「……カッコよく決めたつもりなんだけどなぁ」
財布から100円を取り出して、筐体にIN。
UFOキャッチャーのコツは焦らず急がず慎重に。
しっかりと目標を見極めて……よし、今だ!
「おー、すごい! 持ち上がった、取れそうだ!」
アームの力は意外と強いのか、そのままぬいぐるみを持ち上げるとすーっとゴールまで一直線。
そのまま吸い込まれるようにストンと落ちると、ガチャンという落下音が聞こえる。
「ふふ~ん、どうよ、梓!」
「すごっ! 一発で捕るとか……慶太凄い! 絶対何回かかかると思ってた! すごい、天才、カッコいい!!!」
「ふふっ、ほめ過ぎだよ、梓! はは~ん、僕くらいになると一発で決めるんだよ! という事ではい! これは梓にプレゼントです!」
褒められて嬉しくなったので、少し照れ隠しも込めて梓に言ってた通りのもふもふのぬいぐるみを手渡す。
「……慶太が持ってても良いんだよ? 慶太が捕ったんだからさ」
「何言ってんの、梓が欲しかったんでしょ? 梓のために捕ったんだよ、だから遠慮せずに受け取ってください!」
「……そっか。わ、私のために、慶太が捕ってくれたんだもんね! ありがと、慶太……ふふっ、もふもふで可愛い。お気に入りのぬいぐるみになるよ、ずっと大切にするね」
ジェラート片手にギュッとぬいぐるみを抱きしめて、満面の笑みを浮かべる。
良かった、この笑顔見れるなら、こんなに喜んでくれるなら取った甲斐があったというものだよ!
★★★
昨日は泥酔状態で書いたせいか誤字や文章のダブりがひどかったです、ごめんなさい(修正しました)
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