第12話 なんで付き合ってたの?

「……なあ慶太、このミナレットちゃんって歌とか歌わないの? 多分歌ったら上手だと思うんだけど」


「確かに上手そうだけど、歌ってみたとかはあげてないかな?」

 ミナレットちゃんは声も明るいハッキリしてるし確かに歌は上手い気もする。


「そうなんだ……じゃあ、スパチャでお願いしよっかな、【何か歌ってみてください!】って」

 そう言ってポチポチとスマホを操作する良哉。

 ピコーンと鳴ったスマホの音は課金完了スパチャレッツゴーの音で……え、嘘でしょ、マジでスパチャしたの? 早くね、躊躇なさすぎね?


「いや、この前ちょっと別のもの買ったときの端数の120円が残ってたからさ。何に使う用事も無かったし、それならスパチャしようかな、って」


「いやいや、にしてもでしょ、躊躇ゼロすぎでしょ。今日知ったばかりでしょ、ミナレットちゃんの事」


「まあ、はまりそうだしそれでもいいかな、って。あ、コメント読まれた、歌ってくれるみたい……なんか嬉しいな、これ!」

 そう言ってテンション高く膝をぺしぺしする良哉。

 まあ本人が幸せそうなら良いかな、120円だし。


 それより、僕もミナレットちゃんの生歌聞こう、楽しみ楽しみ!



 ☆


「……掘り返して悪いんだけど、慶太はなんであの女とずっと付き合えてたの? 俺らがみてる範囲ではあの女慶太に対して塩対応というか、あんまり話してないというか、そんなイメージあるけど。デートとかもしてないだろ、全然。なんで付き合えてたんだよ、破綻してるようにしか見えなかったんだけど。早く分かれ切り出した方が良かったんじゃないの? 良く持ってたな、尊敬しちゃうよ精神力」

 ミナレットちゃんのきりたんの歌を聞き終えて、無事たどり着いたカフェ。


 注文したミックスジュースを啜りながら、少しだけ申し訳なさそうに目の前の良哉がつらつら言葉を並べて聞いてくる。

 なんかものすごい言われような気もするけど……まあいいか。


「確かに最初のころ以外はデートとかはしてなかったけど。なんかほしい物言われて買ってあげたり、お金渡したりしてたくらいだったけど。あ、でもおしゃべりはしてたよ、結構返事もしてくれてたし」


「……それ扱いパシリとかキャバ嬢と同じだぜ、慶太さんよ。返事も塩対応だったし、お前洗脳でもされてたん? それ彼女彼氏の関係違うで」


「……でも名前で呼んでくれてたし、大好きって言ってくれてたし。『おねが~い、私の大好きな彼氏の慶太君!』『ありがとね、大好きな彼氏の慶太君!』って言ってくれてたし。その時はすっごい甘い感じで話してくれたし」


「え、何それキモ……じゃなくて、それあれなんだわ、完全にキャバ嬢とか結婚詐欺師とか、そう言う感じの手段なんだわ。たまに甘い感じで言って高いものを買わせる、それ完全にそう言う奴なんだわ。彼氏と書いて財布と読むんだわ、それは。良かったな、これ以上貢がされなくて……あ、そっちがパフェです、俺はパンケーキのほうです」

 呆れたようにそう言って、注文したパンケーキを受け取る。


 僕も注文したパフェをいただきますして一口……うん、美味しい!

 甘々でトロピカル、それでいてシュワシュワ!

 そして千尋はたぶんそこまで悪女じゃないよ、絶対!


「いや、悪女だと思うよ、証拠が出そろってるし、アンミカでも黒一色になるわ。恋は盲目とか言うけど、盲目過ぎだぜ、慶太さんよぉ。完全に騙されてるって、金捕るだけ取って、貢がせるだけ貢がせて……別れたのは正解だったぜ、慶太。浮気も噂かと思ってたけど、多分ホントだな、この感じだと」


「そんなに千尋の事悪く言わなくても。浮気はまだノーコメントだし……それにそんな事言われたら僕がバカみたいじゃん」


「いや、ノーコメントって、それ認めたようなもんだぜ? あと、今までの話聞いてたらおまえバカ以外の何でもないよ」


「酷くね、そこまでドストレートなのは?」


「まあまあ、まあまあこの話はなしで。取りあえず、今のところお前とあの女が付き合ってるという要素が見当たらないんだけど。お前ら本当に付き合ってたの、キャバ嬢とバカな客の関係じゃなくて?」

 バターをしっかりはちみつに溶かしながら、ものすごく失礼なことを聞いてくる。

 なんだそれ、そんな関係なわけないだろ!


「失礼な、そんな関係じゃないわ。告白されてちゃんとYES貰いましたよ」


「……その告白、どんなんだったんだよ」

 告白か……人生初めてだったからあんまり覚えてないけど、確か……


「僕が好きです! って言って千尋が『まあ、たまにはいいか。わかった、よろしく、高梨……高梨君』って感じだったと思うけど」


「はい、ダウト―! たまには、って言われてんじゃん、遊ばれてるって完全に! 告白の時点であの女はお前の事好きじゃなかったって! 絶対に金づるとしか見てないって、それ! 名前も思い出せてないし!」


「失礼な、その後思い出してくれたよ! それも千尋は好きって言ってくれたよ、僕の事! 絶対に僕の事好きだったもん! 好きっていっぱい言ってくれてたもん! 好き好き大好きって言ってくれたもん!」


「……どんな時だよ、それ」


「えっとね、何か欲しいときとか、僕が心配になって『好きだよね?』って聞いたときとか! 甘い声とかで言ってくれてたもん!」


「それもダウトだわ、完全ダウトだわ! 媚び売ってるときと適当にあしらってるときだけじゃねえか、全く思ってないぞ、それは! 本心じゃないぞ、口から出まかせ薄っぺらだよ!」


「そんなことないよ、千尋は恥ずかしがり屋さんなんだよ。好きって言うの、結構恥ずかしいじゃん」


「ポジティブだなぁ、お前は! 見た目は清楚っぽいけど、今までの話聞いてるとあの女はそんなんじゃないことだけはわかるぞ! 絶対恥ずかしがり屋のお清楚さんじゃないって、経験豊富なビッチさんだって!」

 ドンと机を叩いたことで視線が僕たちの方へ集まる。

 もうちょっと落ち着いてよ、お互い好き同士だったはずだって……あと浮気してたからってビッチとか言うのは失礼だよ!


「浮気認めてるし、落ち着けるかこれで……もしかしてお前がやばいんか? お前が変な奴なのか? 慶太が盲目過ぎて実はやばかったのか?」


「もう、今日の良哉失礼が多いよ。僕は普通だよ、良哉が一番知ってるでしょ? ずっと仲いいじゃん、僕たち」


「そうなんだけど……ああ、普通の概念が壊れそう! お前と高校入ってから仲いいけどお前のこと今一番わからんわ!」


「……なんでそんなに泣きそうなの? 僕のパフェ食べる?」


「うるさい、バカ! パフェは食べる……うまい!!! 俺のパンケーキも食べていいよ! そして。もうこうなったら今日はとことん聞いてやる! 掘り返すのは悪いけど聞いてやる! 今度はデートだ、デートの話だ! お前が『楽しかった!』としか言わなかったデートの話だ、中身はどんなんだったんだよ、お前たちのデート! 絶対ろくな事なさそうだけど!」

 僕のパフェを食べながらそう言う……何をそんなにやけくそになってるんだよ、良哉は。

 でもデートの話か、それはえっと結構あるよ、僕にも! 後このパンケーキ美味しいね、良哉!




【ちょっとおまけ】


「……あ、またスパチャ来てるます! りょうさん、ありがとうございます! えっと、【初見です! 歌とか上手そうですけど何か歌ってくれませんか?】……ありがとうございます、今後もミナの事よろしくですよ!」

 初見さんが来るのは嬉しいです、穴党さんにご招待です。

 しかし歌ですか……ボイスチェンジャー使ってるのでうまく行くかわからないですね。


 まあしかし、要望もありましたし、コメント欄も盛り上がってますし……ここは一発かましますか。

 取りあえず喉を整えて……よし完璧!


「よしじゃあ歌うね、あ、あ……きりたんぽっぽーたんぽーきりたんぽっぽーたんぽー うーうー てっててー きりたんぽっぽーたんぽー……」



 ★★★

 長くなったので恒例のカット。

 慶太君と千尋ちゃんの秘密に迫ります。


 感想や☆やフォローなどしていただけると嬉しいです!!!


 ギャグ回です。

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