第10話 妹の秘密

「おーい、慶太、この後飯食いに行かね? みんな部活だし、彩葉も家の用事だしで俺と慶太の二人になるっぽいけど……どう? 一緒に来ない?」


 放課後、帰る準備をしていると、今日一日情報を嗅ぎつけた人たちからや怖い人たちからの追撃を、華麗にさばいてくれた彩葉ともう一人の第一人者、良哉にそうやって声をかけられる。

 今日は本当に助かりました……そしてもちろん、ついていきます!


「だよな、だよな! それじゃあ、食べに行こうぜ、何食べるかは後で決めるとして! 取りあえず、慶太が彼女にフラれたのの慰め会だ!」


「もう大丈夫って言ってるのに……でも行きましょう、楽しみであります!」

 慰められるほど傷は深くは残ってないけど、でもお供しますよ!


 そう思って、カバンを持って教室の外へ……と、見覚えのあるシルエットが目に入った。


「あ、に、兄さん、その……い、今からお帰りですか? い、今から帰りますか?」

 いつもより少しオドオドした様に目線と言葉を揺らす海未が教室の前の廊下に立っていた。

 珍しいね、こっちまで来るなんて。


「何かあった、海未?」


「い、いえ、その……えっと……」

 ちらちらと僕の下半身に目を移しながら口を濁す海未……チャックとか空いてる、もしかして!?


「い、いえ、チャックなんて開いておりません、大丈夫でう! その、兄さん今日わたしと一緒に帰りませんか? お買い物とか付き合って欲しいんですが……ど、どうでしょうか?」

 慌てた様子で顔を赤くしながらそう言う。

 一緒に帰るか……ちょっと、今日は先約が。


「ごめん、海未。今日は先約があって……あ、出てきた。今日は良哉と一緒に夜ご飯とか食べる約束したから。だからごめんね、海未」


「あ、海未ちゃん久しぶり! 今日はお兄ちゃん借りてくけど良いかな?」

 僕の肩からひょこっと顔を出しながらそう言う良哉に少しビクッとする海未。

 この二人はあまり関わりないからこうなるのかな?


「あ、はい、大丈夫です。ぜひ借りて行ってください、楽しんでください……それでは私は帰りますね、兄さん。帰る時は連絡よろしくお願いします。色々、ありますので。だから、連絡、後は楽しんでくださいね」


「うん、楽しむよ、ありがとね海未。連絡も必ずするね」


「はい、よろしくお願いします。では、さようならです、兄さん……しゅわっ!」

 そう言って猛スピードで、どこか恥ずかしそうにぴゅいー、と駆けていく。

 そんな走ったら危ないよ、怪我したら大変だよ。



「……久しぶりに会ったけど海未ちゃんやっぱりいい子だね。それに可愛くもなってるし」

 海未が去った後、ボソッと,でも僕に聞こえるような声で良哉がそう呟く。


「……良哉に絶対にあげないよ。断固拒否するよ」


「そんなこと思ってないですけどぉ。お兄ちゃん、ちょっと怖すぎるよぉ、シスコンだよぉ……まあ、冗談は置いておいて。妹ちゃんの許しも出たし、飯食いに行きますか! まずはスイーツでも食べようぜ、カフェかどっかで!」


「何も思ってないのはそれはそれで……まあいいや。いいねいいね! それじゃあ行きましょうか!」

 良哉と手を取って、僕は学校の廊下を歩き出した!




「……ストップ、慶太!」


「……もう、目隠しは良いって」



 ☆


 ……兄さんは今日はお友達とお出かけですか、ご飯はいらないですかね?

 私一人で寂しくご飯食べればいいですかね?


 ……まあ、しょうがないですけど。兄さんは友達多いですし。

 今日も一人で帰りましょうか、兄さんと帰って、そのまま色々あそびたかったですけど仕方ないです……いや、むしろ一人の方が良かったですかね?


 その、志保のせいでちょっとまだ兄さんの事見ると顔が赤くなっちゃって、緊張しちゃって悶々としちゃいますし、下の方にどうしても目が言っちゃうというか、私も……ななな、何でもないです、私は平気です、えっち当番の梓さんとは違いますから、私は平気なはずです。


 それに今日はしたいこともありますし、だから一人で帰った……ああ、したいことって言うのはそのえっちな事じゃなくてですね、普通の、ちょっと特殊ですけど、普通の事です。普通の事ですから海未はえっち当番さんじゃないです。


 顔が熱くなってきたのを感じたのでそくさくとお家まで歩を進める。

 決して私はそんなんじゃないですから、海未は兄さんが好きなだけですから。



「た、ただいまです……誰もいませんね、当たり前ですけど」

 誰もいないお家のカギをガチャリと開けて、中に入る。

 兄さんはお友達といますし、両親は太陽の国でアミーゴしていますし、ここは今から少しの間私の城です、私の時間です。


 少しルンルンした気分で自分の部屋に向かう。


「あ、あ……兄さん、兄さん、兄……や、やっほー……やっほー、やっほー!」

 机に座ってパソコンのスイッチとセンサーをオン、クルクルボイスチェンジャーのスイッチも入れてそしてちょこっと発声練習。

 よしよし今日も絶好調です、これで多分大丈夫、今日も絶対にうまく行く。

 兄さんは……いたらダメですけど、いなくてもちゃんと海未ひとりで上手くできます。


 ぺんぺんと緊張をほぐすために顔を叩いて、頭に真っ黒ゴーグルとヘッドホンを装着、ふるふる体とサイトと心をセットオン!


「あ、あ、繋がってます? 繋がってま……あ、繋がってますですますね、配信スタートしてるですね……あ、あ、や、や……」

 海に潜るように、プールに深く沈むように息を整えて。

 すべてを変えるようにギュッと息を吸い込んで。


「ヤッホー☆穴党のみんな! お兄ちゃん大好き系Vtuberミナレットだよ! 今日も今日とてゲリラ配信だけど、みんなちゃんとついて来てね! ついてこれずに逃げちゃったら……ミナが大穴、開けちゃうぞ☆」

 そうして私は「Vtuberミナレット」として、今日もバーチャルな世界にダイブする。



 ★★★

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 ☆が欲しいです。


 vtuberの配信の仕方はよくわかってないので有識者の方がいらっしゃれば教えてくだされば幸いです。

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