第9話 学校と友達
「みんなおは……」
「おー、慶太! 良かった、慶太が無事だ、元気だ!!!」
何とか千尋に合わない様に教室についてドアを開けた瞬間、友達の
「……ちょ、良哉!? ど、どうしたの急に!?」
何々、急に飛びついてくるとかどう言う事? どうしました、どうしました?
「どうしたじゃないだろ、心配してたんだぜ、慶太の事。慶太があの女に浮気されて酷いフラれ方した、って噂になってたから……だから心配だったんだよ! やっぱり印象は清楚でも金髪だし絶対怪しいし! 清楚匂わせな感じするし、清楚ビッチみたいな感じもあるし! ⋯⋯とりあえず、慶太はあの女のこと大好きだったから心病んだりしてないか、って……なあ、心配だったよな、みんな!」
そう強く、でも心配してくれているのがひしひしと感じる良哉の声に、うんうんと頷くクラスの友達のみんな。
そっか、みんな心配してくれてのか……ありがと、みんな。
「ありがと、でも大丈夫だよ。もう結構、ちゃんと復活しましたから。高梨慶太はいつも通り、結構元気です!」
「……本当か? お前相当あの女に入れ込んでるというか。付き合ってるかどうか割と怪しかったけど、でも慶太は俺たちの話聞かないくらいにはあの女の事好きだったと思うけど……本当に大丈夫か?」
「うん、結構もう平気だよ……まだちょっとだけ引きずってるみたいなところはあるけど、もう十分平気です、元気です! ホントにみんな、ありがとね!」
まだ千尋の事好きな気持ちって言うのはやっぱり残ってるけど。
でももう諦めついてるって言うか、なんか色々大丈夫と言うか……うん、大丈夫。
僕のその言葉を聞いて、良哉と後ろのみんなの顔がパッと輝く。
心配しすぎだよ、みんな……でもここまで心配してくれるの、すごく嬉しいな。
「そっか、元気なら良かった! 俺たち的にもお前が別れて……おっと、これはやめておこう、ストップだ。元気ならそれが一番だ!」
そう言ってガハハと豪快に笑って胸を張る。
そうだよ、元気が一番……僕はもう元気ですから!
☆
「ふふっ、元気なら良かったよ、高梨が。ところで高梨、これ食べるかい? 昨日作ったのおやつにしようと持ってきたんだけど……もしよければ高梨にあげるよ!」
みんなの少しホッとしたような表情に見送られて自分の机に移動すると、前の席の女の子、川崎ちゃんにつんつんと机を叩かれる。
いつも学校では良哉とともにつるんでる女の子で、たまにこうやってお菓子くれるんだけど……今日のは何だこれ?
「これかい? これはレモンピロバロンだよ」
「レモンピロ……え、なんて!?」
「レモンピロバロン、甘いレモンのお菓子だよ! 甘酸っぱくて青春の味がする……あっと、今の高梨にはこのお菓子は無粋だったかな?」
クスクスと笑いながら、お菓子を隠す川崎ちゃん。
もう、無粋なんてないよ、嬉しいです、ありがとうございます。
「ふふっ、どういたしまして。またお腹空いたときにでも食べてみて、めっちゃ美味しいから!」
「うん、ありがたく食べさせていただきます……ところで川崎ちゃん、なんで僕がフラれたこと良哉が知ってたかわかる? 僕誰にも言ってないんだけど」
いや、まあ多分千尋の側から話が洩れたって言うのはわかるんだけど。
どっから聞いてのかがちょっと気になるというか。
「ああ、そのこと? 結構話題になってるよ、今……あ、高梨の側からじゃなくてあっち側からね! ていうか高梨があの女の彼氏ってこと、知らない人の方が多いみたいだよ!」
「え、どう言う事? 僕ちゃんと彼氏だったはずだけど……?」
「いや、だって……まあ、その話は置いておこう! 取りあえず、、あの清楚でおしとやかそうな鈴木千尋が浮気して彼氏を振ったかも、って言う一大スキャンダルなんだから! 当の本人は黙秘してるけど……ところでところで! この話どこまで本当なんですか? ちょこっと、この川崎めに教えてくれませんか?」
そう言いながら、僕の方に耳をちょいちょいと寄せてくる川崎ちゃん。
……僕の彼氏うんぬんの話は置いておいて、そりゃまあ、千尋は学校でも随一の美人で人気あって清楚でおしとやか、って印象の女の子だからそりゃ話題になるよね、そんな話あったら。
ここで僕に出来ることは、僕がしなくちゃいけないことは……
「さて、どうだろうね~? 僕にはそのことは、話せませんよ~」
千尋を守ることぐらいかな、僕に出来ることは。
いや、浮気されたのは本当だけど、でもそれで変にいじめとかに発展するのは絶対嫌だし。
だから千尋が昔僕にしてくれたように、僕も千尋を出来るだけ守るってのが正解なんだと思う……浮気されたのは本当だけど、でも無理にそう言う話で追い込む必要もないと思うんだ。
「おー、この期に及んであの女の事を守るとは……高梨は大した愛をお持ちですなぁ!」
「ふふっ、そうかもね。取りあえず、僕は黙秘しますよ~」
「も~、高梨は一途だね……でも、真実を明かさなきゃいけない時は絶対来るからね! 真実にむき合って、解決するときが……だから今、ちょこっと川崎にだけ! 川崎にだけ、真実、教えてくれませんかぁ?」
「だーめ。これ以上は話しません! ほら、もう先生来たよ、川崎ちゃんも前むいて先生の話聞かなくちゃ!」
「えー、教えてくれたっていいじゃん! 高梨のケチ!」
そう言ってぺーっと舌を出す川崎ちゃんにぺっぺと手を振って、前を見るように誘導する。
千尋は僕の事嫌いみたいだけど、僕はまだ諦めはついてるとはいえ、ちょっと好きな気持ち残ってるから……だからお節介かもしれないけど、黙秘くらいは貫かせてください。
言わないことで謎が深まって余計に……という事もあるかもしれないけど、でも嘘もつけないから、これが今の正解な気がする。
☆
「……でさあ、それでね」
「うん、そうだよな……ってストップ! ぴしゃっ!」
「!? 何々!?」
次の授業が教室移動だったから良哉と話しながら歩いていると急によくわからない声とともに光が奪われる。
「何!? 何するの良哉急に、目隠しプレイは嫌だよ!? 男同士とか最悪ですよ!?」
「おい、変なこと言うな! そんなんじゃないから、ちょっと待ってろ……川崎ちゃん、もう大丈夫か?」
「……うーん、OKだよ! もう行った、もう大丈夫」
その川崎ちゃんの声とともに僕の目にもう一度光が戻る。
良かった、急にビックリしたよ……何があったんですか、本当に?
「いや、目の前にあの女が見えたから……だから、慶太に合わせちゃダメだと思って。だから目隠ししました!」
「でももう教室帰っちゃたから、安心していいよ、高梨! 早く移動教室行くよ!」
ニコニコと笑いながら、でもやっぱり僕の事を心配してくれているのが二人の顔から伝わってきて。
「もう、そんなにあんまり気にしないのに……でもありがと、良哉、川崎ちゃん」
本当に、僕は良い友達もったな、嬉しいな。
★★★
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